ついに日本語へ対応する『OneShot』。「圧倒的好評」作品のローカライズを後押ししたのは、ファンの声援

デジカは5月19日、Steamにて販売中の『OneShot』を正式に日本語に対応すると発表した。『OneShot』は昨年12月にSteamで発売した、主人公ニコとともに冒険するアドベンチャーだ。今回、京都のみやこめっせで開催されたBitSummit会場にて日本語に対応したものが出展されていた。その内容をお伝えする。

デジカは5月19日、Steamにて販売中の『OneShot』を正式に日本語に対応すると発表した。『OneShot』は昨年12月にSteamで発売した、主人公「ニコ」とともに冒険するアドベンチャーゲームだ。Steamレビューでは「圧倒的好評」の評価を得ており、こうしたプレイヤーのクチコミによって、その存在が瞬く間に広まった。しかし、これまで対応していた言語は英語のみだった。日本語でプレイできるようになったのは、ファンにとっても、気になっていた方にとっても嬉しいニュースだろう。今回デジカは5月20日・21日に開催されたA 5th of BitSummitにて日本語に対応した『OneShot』を展示していたので、一足先にプレイした。

ゲームシステムは、RPGベースのアドベンチャーゲームと表現する方が近いだろう。フィールドを移動しイベントを発生させ、謎を解くことでニコとともに先へと進む。戦闘は存在しない。序盤は、世界観や設定などは明かされず、ゲームを進行させていくことで、全容が明らかになっていく。ローカライズに関しては、自然な日本語が表現されている印象だ。原作のニコのセリフには間投詞が多く、ややクセのある話し方をする印象だが、そうした特徴も捉えられているのではないか。ちなみに、ファンにとっては気になるであろう、ニコの一人称は「ミー」であった。

また今回、BitSummit会場にいたデジカのJulian Chunovic 氏に、『OneShot』に関するお話をうかがった。

――デジカさんといえば、既存のタイトルを国内外に精力的にパブリッシングされている印象があります。『OneShot』のパブリッシングは、新たなアプローチに見えます。

Julian Chunovic(以下、Chunovic氏):
『OneShot』は我々が取り扱っている『RPGツクール』にて生まれた作品です。デジカは『RPGツクール』をパブリッシングするにあたって、クリエイターたちの作品を遊んでもらうために2年に一度「IGMC(Independent Game Making Contest)」というイベントを開いているのですが、その中であがってきたものが『Oneshot』の第一弾でした。アイディアが優れており、その存在に気付きました。そこで、デジカのプロデューサーのひとりが開発者にアプローチをして、製品化しましょうという話になりました。

開発者と一緒に制作に取り組み、その時点で存在していたアイディアの構想がすべて実現できるように、作り直しました。制作段階で、すでに面白いアイディアが丁寧に盛り込まれており、ほかのゲームにない魅力があると再認識し、最終的にパブリッシングに至りました。

――初期の段階から、デベロッパーとデジカさんは一緒に開発されていたと。

Chunovic氏:
そうです。しかしやはり、デベロッパーがメインとなって作業は進められていました。

――『OneShot』はコミュニティではすでに有名な作品だった?

Chunovic氏:
ある程度は有名でした。『RPGツクール』をベースにどういったことができるかと話す時に、ひとつの例としてあげられる作品ではありました。なので、作り直すという話もコミュニティでは知られている話でした。長くゲームと付き合っていると、ゲームのよさがわかるようになります。パブリッシングに至ったのも必然的な話ではありました。

このゲームのよさをできるだけ多くの人に知ってもらいたいんですが、一見すると、単なるセリフの多いアドベンチャーゲームに見える。でも、実際はそうじゃないですよ。なので、できるだけゲームをプレイしてもらいたいんです。そのためには、パブリッシングの支えが必要になると思っています。

――確かに、ゲームのよさをうまく知ってもらうのが難しいタイプのゲームですよね。

Chunovic氏:
日本語への対応を発表したのはつい先日なんですが、その時までは積極的に日本に売り込んではいなかったんです。しかし、まだ日本語に対応していない時から、ファンのリアクションがすごいんですよ。英語で頑張ってプレイしている日本のファンが多い。レビューの投稿もされている。言葉の壁をこえて遊びたいと願うファンの声を聞いて、パブリッシングの方向を決定させていただきました。

――日本のローカライズは初期から考えられていましたか。

Chunovic氏:
一応、視野には入れていました。私たちは最初から日本に商品を持っていきたいと考えていて、そういった契約をかわす時もありますが、拍車をかけたのはファンの声です。

――今後は『OneShot』のように、海外の特定のコミュニティで人気になっている作品を、国内向けに販売されることはありますか。

Chunovic氏:
作品にはよりますが、そうしていきたいという心がけはありますね。

――『OneShot』は発売直後から非常に評価がよかったですよね。そうした部分は売上にも反映されましたか。

Chunovic氏:
あくまで『OneShot』はインディー作品で、大手の会社が出している作品ではないんですが、ヒットしていますね。長く売れています。YouTuberの方に紹介されることで、人気がさらに高まるという現象は初期から見られました。

――作品の完成度が高ければ、ファンは増えていくんですね。

Chunovic氏:
そう思いますね。今のゲーム業界ではとても重要なことだと思います。広告費用が高いからといって必ずしもヒットするとは限りません。両方が必要だと思います。

――ヒットさせるには、広告とクチコミ、どちらも欠けてはいけないと。

Chunovic氏:
そうです。バランスよくどちらもできるように心がけています。

――ありがとうございました。日本語の対応が楽しみです。

Chunovic氏が述べるように、『OneShot』は魅力を伝えるのに苦労するゲームであることは確かだ。画面やデザインには派手さはなく、シナリオや演出などが重要であるタイトルなだけに、ネタバレにも配慮しなければいけない。しかし、一度プレイを始めれば、刺激や驚きがプレイヤーを待ち受ける。『OneShot』をプレイする際、冒頭に「プレイヤーの選択が、ニコに影響を及ぼす」と告げられるように、プレイヤーの行動には意味をもたらされており、行動に対して『OneShot』はさまざまな形で結果を提供する。こうした手法が国内外での評価につながっているのだろう。あらためて日本語に対応する日が楽しみだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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