米国の原発がまた閉鎖、過去2年で4カ所

原子力政策の課題が改めて浮き彫りに

2015.01.08
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米国バーモント・ヤンキー原子力発電所。天然ガスとの価格競争の末に閉鎖した。(PHOTOGRAPH BY TOBY TALBOT, AP)

 米国の原子力発電所が、また一つ閉鎖した。

 閉鎖したのは、バーモント州にあるバーモント・ヤンキー原子力発電所。42年間に及ぶ稼働を経て2014年末に運転を停止した。「計画していた施設改善のコストをエネルギーのコストとして考えると、閉鎖するのが妥当との結論に至りました」と、同発電所を運営するエンタジー社の担当者は説明する。ヤンキー原発はバーモント州で使用される電力の70%を発電していたが、今後は他の電源でまかなわれる。

 過去2年間に閉鎖された米国の原子力施設は、今回で4カ所を数える。残された原子炉は約100基あるが、2050年にはそのほぼすべてが稼働から60年を超えることになる。安価な天然ガスが米国のエネルギー経済を一変させた今、原発の稼働を継続するだけの投資価値があるかどうか、各運営会社は見極めを迫られている。

過剰なガス依存?

 米国ニューイングランド地方の送電網業者ISOニューイングランド社が最近行った調査によると、天然ガス火力発電所からの電力が全体に占める割合は、2000年の15%から2013年の46%へと大きく飛躍している。「ガス以外の発電所が多く閉鎖されていることは気がかりです。天然ガス火力発電所への依存度が増すことを意味しますから」と同社の担当者は、天然ガスを輸送するパイプライン容量が需要拡大に追いついていないと指摘する。

 「原発の老朽化メカニズムは、どれも対処可能なものばかりです」と、電力研究所の原子力部門責任者ニール・ウィルムシャーストは語る。メンテナンスを適切に行えば古い原発でも稼働を続けられるというのだ。しかし、問題はコスト。「重要なのは80年間にわたって安全を確保できるかどうか。本当に見極めなければいけないのは、発電所を80年間稼働させる場合の財政的側面なのです」

カリフォルニア州のサン・オノフレ原子力発電所では原子炉2基が2013年に廃炉となった。(PHOTOGRAPH BY DAVID BRO, CORBIS)

廃炉プロセス、廃棄物処理にも課題

 問題はほかにもある。技術的に見た場合、数十年を要する原子力発電所の廃炉プロセスは長らくほとんど変わっていない。原子炉を停止させ、放射性燃料を貯蔵容器に移し、最終的には発電所自体を解体するという流れだ。バーモント・ヤンキー原発の幹部らは、このプロセスに関する規則に変更が加えられないことも問題だと話す。

 また、米国には国が管理する放射性廃棄物処分場が存在しないことも問題だ。ネバダ州ユッカ山の地下を候補地とする建設計画をめぐる論争は、1980年代から延々と続けられているまま。そのため放射性廃棄物は発電所で貯蔵され、安全確保の責任は運営会社が負っている。

 米原子力規制委員会は昨年8月、原子力施設において使用済み燃料の安全貯蔵が60年以上にわたって可能であったと発表した。処分場の建設を主張する超党派政策センターの相談役ティモシー・フレーザーは、この判断について、放射性廃棄物に関する長期的な問題解決を後延ばしにするものだと指摘する。「60年でも100年でも置いておくことはできます。でもそれで終わりではありません」。人間や環境にとって脅威となり得る使用済み燃料は何十万年も隔離する必要があると強調した。

文=Christina Nunez/訳=桜木晴子

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