極めて希少なキツネが1世紀ぶりに撮影される

米国ヨセミテ国立公園にシエラネバダレッドフォックスが現れた

2015.02.10
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米国ヨセミテ国立公園内の雪原を小走りで行く希少なシエラネバダレッドフォックス。(Photograph by NPS)

 北米で最も希少な動物の1種であるシエラネバダレッドフォックス(学名:Vulpes vulpes necator)の姿が、米国カリフォルニア州ヨセミテ国立公園内でほぼ1世紀ぶりに確認された。

 2014年12月と2015年1月、公園北部に設置されたカメラトラップが同じ個体のものと思われる2つの画像を捉えた。

 この神出鬼没なキツネは2010年に公園の境界より北側で目撃されているが、1916年以降公園内では確認されていない。このニュースを受けた研究者らの反応は興奮を通り越しているようだ。

「公園内にいるというのは、われわれにとって大きなことです」と、公園の野生生物学者サラ・ストックは言う。「これまでずっと観察を続けてきましたが、実証されていませんでした」

何が問題なのか

 非常に希少なシエラネバダレッドフォックスは、北米でわずか50匹が生存するのみと推定される。鮮やかな毛皮が珍重され、19世紀から20世紀にかけて狩猟やわなによる乱獲で個体数が激減した。

 かつてはシエラネバダ山脈一帯に広く生息していたが、現在ではそれぞれカリフォルニア州のラッセン火山国立公園とソノラ・パスに縄張りを持つ2つの小さな個体群に限られている。

「今回、ヨセミテ北部まで個体群が南下していることがわかりました」とストックは述べた。

 さらに、家畜の放牧やスノーモービル、木の伐採といった人間による脅威もキツネの生存に影響を及ぼしている恐れがあると付け加えた。

「わなは1974年に禁止されました。実際のところ、長い間この動物に私たちは強い影響を及ぼし続けているのです」

全体像

 この報告をもってシエラネバダレッドフォックスの個体数が回復していたり、あるいは、生息域が広がっていたりするなどと断言するのはまだ早い。研究者たちは捉えどころのない彼らについてようやく知り始めたばかりだ。

「現時点では、まだ最も基本的な情報を集めて土台を築いているところです」とストックは説明する。

 とはいえ、動物にとって有害な伐採や放牧などの活動が禁止されているヨセミテ国立公園内に個体群がいるとすれば特別な保護を受けることになり、今回の生息確認は非常に意味深いものとなる。

 シエラネバダレッドフォックスはカリフォルニア州によって保護され、「米国の種の保存法(ESA)」の絶滅危惧種に指定されている。

次の一手は

 次のステップとしては、引き続きカメラトラップを活用しつつ、「毛のわな」と呼ばれる剛毛のブラシを配置して、通りかかったキツネの毛を採集する予定だとストックは述べる。

 採集されたサンプルのDNAを解析すれば、キツネとその起源についてより多くの知識を得られるだけでなく、個体数回復に向けた対策を講じることができるだろう。

「多くの情報があれば、より深く学ぶことができ、さらなる保護へと繋がるでしょう」

文=Stefan Sirucek/訳=益永依子

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