元麻布春男の週刊PCホットライン

新たな旅のお供にミニ無線ルーター「WL-330gE」




 8月のIDF取材から、持って行くアイテムを1つ変更した。主にホテルの客室内で複数のクライアント間でインターネット接続を共有する目的で、旅行用の小型無線LANアクセスポイント兼ルーターを持参するのだが、それをNETGEARのトラベルルーター「WGR101」から、ASUSTeKの「WL-330gE」に変更したのだ。

 筆者の場合、出張時はホテルの部屋で原稿を書くPC(最近はMacBookが多い)、イベント会場等で持ち歩くPC、iPAQやiPod touchのようなPDAの、計3デバイスを持ち込む。これら3つのデバイスでインターネット接続を共有するために、無線LANアクセスポイント機能を備えたルーターがあると便利だ。

 米国のホテル、特に都市部のホテルは、たいてい定額でのインターネット接続サービスを提供している。新しいホテル、大手チェーンのホテルであれば、インターネット接続はケーブルであることが多いが、古いホテル、小規模なホテルだと、簡単な工事で済むせいか、インターネット接続が無線LANのみになることも少なくない。

ASUSTeKの「WL-330gE」 WL-330gEのパッケージ。Hotspot Sharingのシールが貼られている

●WGR101は小型軽量なだけではない

 これまで使っていたWGR101は、ケーブルのインターネット接続を共有する目的には十分応えてくれたが、インターネット接続が無線に限られる場合、利用できないという制限があった。WL-330gEを購入したのは、無線LANの共有も可能という、うたい文句に惹かれたのが第一だ。だが、旅行用のルーターとして、ほかにも多くのメリットがあった。

 まず始めは、WL-330gEは小型/軽量であることだ。86×62×17mm(幅×奥行き×高さ)というサイズは、タバコの箱よりさらに小さい。大きさを比較するために、iPod classic、これまで使っていたNETGEARのトラベルルーターと並べて写真を撮ってみたが、WL-330gEは明らかに小さい。

 重量は51g(筆者が購入した製品の実測値、パッケージの表記では62g)と軽い。トラベルルーターは85g(実測値)で、決して重いわけではないのだが、30g以上軽いと手にしただけで違いが分かる。実際あまりに軽くて、初めてWL-330gEを手にした時、製品ではなくてモックアップが箱に入っていたんじゃないかと思ってしまったくらいである。

 この軽さがさらに生きるのは、WL-330gEがUSBバスパワー駆動できることだ。要するにACアダプタがなくても使える。パッケージには、小型のACアダプタが添付されており、もちろんこれを使ってもいい。が、付属のUSB給電ケーブルを使って、バスパワー駆動できるから、ACアダプタを持ち歩かないで済む。

左からWL-330gE、iPod classic 160GB、WGR101 WL-330gEと付属品。ACアダプタ、ケーブル2本、そしてポーチが付属する。パッケージにはほかにマニュアルとCD-ROM(マニュアルPDFおよびユーティリティ)が含まれる

 これはPCのUSBポートに接続して使えるということであると同時に、コンビニでも売っている汎用のUSB-ACアダプタで使える、ということでもある。たとえばカフェ(米国の都市部でスターバックスは確実に無線LANが利用できるスポットの1つだ)ではPCのバスパワーで駆動し、ホテルに戻ったらUSB-ACアダプタで使う、といった使い分けもできる。

 USB-ACアダプタはiPodや携帯電話など、さまざまなデバイスの充電に使う旅行の必需品で、荷物の中に必ず入っているもの。特定機器の専用ACアダプタに比べて用途が広く、はるかに潰しが利く。万が一紛失したとしても、旅先ですぐに代わりが入手できる。

 小型軽量、USB給電に加えて3番目のメリットが、冒頭で紹介した無線LANによるインターネット接続サービスを、無線で共有できるという特徴だ。これまで使っていたトラベルルーターは、ケーブルで提供されるインターネット接続を、無線LANにより複数のクライアントで共有可能にするものだった。無線LANによる共有がないと、PDAやiPod touchをネットワークに接続することが難しい。その点では便利だったのだが、ホテルのインターネット接続がケーブルではなく無線のみだと、最悪、クライアントの数だけ料金を支払わなければならなくなった。これは現実的ではない。

●セキュリティと速度も十分

WL-330gEの設定画面。最上部のタブで4つの動作モードを選択する。Hotspot Modeの有効/無効で、共有するインターネット接続がケーブルか無線かを選ぶ

 WL-330gEは、Gateway、AP、Adapter、Repeaterの4つの基本動作モードを持つ。Repeaterは、無線LANの中継を行なって電波の到達距離を伸ばすリピーターとして使うもの。Adapterは、WL-330gEをケーブルと無線のメディア変換を行なうイーサネットアダプタとして使うためのモードだ。APは無線LANのアクセスポイントとなる。

 Gatewayが内蔵のルーター機能を利用するお目当ての動作モードである。さらにHotspot Modeを無効にするか(初期設定、ケーブル接続の共有時に利用する)、有効にするか(無線LANの共有を行なう)で、2つの動作モードを使い分ける。いずれのモードでも設定する必要があるのはSSIDとセキュリティレベルだ。初期設定ではSSIDがguestでセキュリティがない状態になっているので、適宜変更する。そしてHotspot Modeを有効にするか、無効にするかを決め、設定を保存するとWL-330gEが設定に基づいてリブートする。

 リブート後、Hotspot Modeを有効にした場合は、リストに表示されたネットワーク(SSID)の中から接続先を選び、必要であればWEPキー等の入力を行なう。これで無線で提供されるインターネット接続を、プライベートアドレスの無線LANで共有することが可能になる。

 これらの設定は、基本的にWL-330gEとノートPCをLANケーブルで接続して行なう。プライベートアドレス側に入ると、好きに設定を変更することができるので、上のセキュリティレベルの設定でWEP 128bit以上のセキュリティにしておくと同時に、管理者パスワードを初期値(誰にでも推測できそうなもの)から変更しておいた方が良いだろう。セキュリティに関する初期設定が最も弱いレベルになっているのは、おそらくは接続性を優先した結果であり、この種のデバイスでは珍しいことではない。なお、1度設定した情報は、次に設定画面で新しい設定情報を保存するまで不揮発メモリに保存されるので、同じ用法であれば毎回設定する必要はない。

 設定が終わった後、ケーブル接続を共有する場合は設定に使っていたEthernetポートに共有するインターネット接続のケーブルをつなぎかえ、クライアントは無線LAN経由でアクセスを行なう。無線によるインターネット接続を共有する場合は、電源以外接続する必要はないが、この場合でもLANポート経由でインターネットアクセスすることは可能だった。

 オフィスや家庭用の据え置き型と異なり、この種のデバイスで性能(データスループット)が問題になることはあまりないだろう。外出先のインターネット接続が高速なことはまずないからだ。だがこの夏、筆者が宿泊したSan Franciscoのホテルは、新しいこともあって、ピークで800KB/sec程度の下り速度が本機の無線LAN経由で得られた。全く何の不満もない数字だ。

 というわけで、使い勝手的にも特に難しいことはないし、小型・軽量で持ち運びが容易と、旅のお供には最適だ。PCに限らず複数の無線LANクライアントを旅行に持って行くというユーザーにはおすすめのデバイスではないかと思う。

【10月6日16時追記】前々回取り上げた「Pure-fi Mobile」だが、写真のキャプションに、“なぜかゴム足で立ってくれない”と書きましたがゴム足のついた金属プレートを回すことで、立派に足として機能することが分かりました。ここで訂正すると同時に、関係者にお詫びいたします。

□ASUSTeKのホームページ
http://jp.asus.com/
□WL-330gEの製品情報
http://jp.asus.com/products.aspx?l1=12&l2=41&l3=0&l4=0&model=1710&modelmenu=1
□NETGEARのホームページ
http://www.netgear.jp/

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(2008年10月6日)

[Reported by 元麻布春男]


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