アプリケーション視点でのグローバルな管理を支援
BIG-IP新バージョンは「新たな時代への第一歩」
2011/08/26
F5ネットワークスジャパンは8月25日、同社のBIG-IP製品群のシステムソフトウェアの新バージョン、「BIG-IP v11」を発表した。これはBIG-IP製品群にとって新しい時代の第1歩だという。
米F5のエリック・ギーサ氏が@ITに説明したところによると、その意味は次のとおりだ。BIG-IPは従来からのハードウェア製品「BIG-IP」、これをハードウェア的に強化した「VIPRION」、そして仮想アプライアンス形式の「BIG-IP Virtual Edition」の3つのフォームファクタで提供され、これらには共通のシステムソフトウェアが搭載されている。
そこで、アプリケーションサービスの場所や運用形態にとらわれない統一的な制御ポイント群をBIG-IP製品群で構成できるように、システムソフトウェアを進化させていく。これによって企業が例えば、社内データセンターではBIG-IPハードウェア、商用データセンターでは事業者が運用するVIPRION、クラウドサービスではVirtual Editonを用いながら、これらに同一の、一貫したアプリケーション運用ポリシーを適用できるようにしていくのがF5の方向性だ。個々のデータセンターからのアプリケーションサービスを常時モニタリングし、サーバがダウンしたりパフォーマンスが劣化したりした場合には、即座にほかのサーバやデータセンターに対してグローバル負荷分散によって切り替えることができる。このようにすれば、アプリケーションサービスの安定的で円滑な提供を確保できるという。
BIG-IP v11には3つの新たな特徴がある。アプリケーション指向の設定・レポートができる「iApps」、拡張性に関する新機能、セキュリティ機能の向上だ。
BIG-IPはiRulesというスクリプト言語で、各種プロトコルの扱いに関する設定が行える。この設定プロセスをより抽象化したのがiAppsだ。各アプリケーションについて、Webブラウザから利用ユーザー数などの稼働要件についての複数の質問に答えていくことにより、個々のプロトコルの設定にとらわれることなく、iRules記述のスキルがない人でも、アプリケーション導入の際のBIG-IP設定が迅速にできる。
BIG-IP v11ではiAppsテンプレートを約20のアプリケーションについて用意。また、iRulesで行われているように、F5のテクニカルコミュニティDevCentral上で、開発者がiAppsテンプレートを提供・共有したり、改善したりする活動を支援していくという。
iAppsでもう1つ重要なのはiAppsレポート。アプリケーション単位で統計情報を収集・表示できる。サーバ側およびクライアント側の遅延やスループット、アクセスユーザーの場所や端末の特定など、アプリケーションサービスをビジネス的および技術的に分析して改善するために必要な情報が入手できる。
iRulesやiAppsで設定したアプリケーションデリバリのポリシーは、VIPRION、BIG-IPハードウェア、BIG-IP Virtual Editionのすべてに共通に適用できること。ポリシーの同期が可能になり、記事冒頭で述べた一貫したアプリケーションサービス提供環境を実現できる。
拡張性については、まずVIPRIONで、すでに発表済みのvCMPが提供開始となる。また、VIPRION、BIG-IP、BIG-IP Virtual Editionで、複数台をクラスタ構成としすべてをアクティブ状態で運用できるようになった(1つのクラスタは同一フォームファクタの製品でのみ構成可能)。
セキュリティ機能の向上については、JSONペイロードのブロックと警告メッセージの表示、認証連携/シングルサインオンではアプリケーションおよびクライアント側でのKerberosサポートなど、対応認証プロトコルの増加、DNS機能をDNSサーバからオフロードするDNS Expressの性能向上による最大600万qpsへの対応、などがある。
F5は最近、日本市場での売上が急速に拡大している。これは最近発表したミッドレンジのVIPRION製品が、モバイル事業者に多数売れていることが大きな要因という。
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