ロシアのハッカーの不正プログラムを発見=米バーモント州の電力会社
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画像提供, Getty Images
米北東部バーモント州の電力会社、バーリントン・エレクトリック・デパートメント社は12月31日、社内のラップトップ・パソコン内に、ロシアのハッカーが使っているとされる不正プログラム(マルウェア)が見つかったと発表した。
パソコンは送電網にはつながっていなかったものの、すぐにネット環境から外したという。
バーリントン・エレクトリック・デパートメント社は、「マルウェアの出どころを特定し、電力システムへの侵入がこれ以上起きないよう、連邦当局と協力している」と発表した。
同社はバーモント州当局とも連絡を取ったと表明。捜査に全面協力する方針という。
米政府は先週29日、当局者間で「グリズリー・ステップ」と呼ばれているハッキング行為への注意を呼び掛けていた。
米政府は同じ日に、大統領選に影響を及ぼそうとするサイバー攻撃を仕掛けたとして、駐米のロシア外交官35人を国外退去処分にした。
米政府は、民主党や同党の大統領選候補だったヒラリー・クリントン前国務長官陣営のメールサーバーをロシアがハッキングしたと非難しているが、ロシアは関与を否定している。
米政府の制裁措置に対して、ロシアは駐ロシアの米外交官の国外退去などの報復措置を取らなかった。これを受けて、ドナルド・トランプ次期米大統領は30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛するツイートを投稿していた。
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画像提供, AP
これに先立ち、31日付の米紙ワシントン・ポストは匿名筋の話としてこの件を伝え、米国の送電網の脆弱(ぜいじゃく)性を指摘した。
同紙によると、米当局はロシアのハッカーが送電網を標的にした理由はまだ不明だと話している。
記事は、「侵入は、電力供給を妨害するためか、送電網の一部に侵入できるか試そうとしたのかもしれない」と指摘した。
記事は当初、「ロシアのハッカーが米国の送電網に侵入した」と伝えていたが、後に「その様子はない」という当局筋の話をもとに訂正し、ハッキングされたコンピューターは送電網につながっていなかったと説明した。
「組織的で容赦なく、略奪的」
バーモント州のピーター・シュムリン知事(民主党)など同州の政治家らは、徹底した捜査を求めた。
シュムリン知事は文書で、「生活の質や経済、健康、安全を支えるわれわれの送電網を、世界有数の悪党の1人、ウラジーミル・プーチンがハッキングしようとしていたことを、バーモント州民と全ての米国民は警戒心と強い怒りを持って受け止めている」と述べた。
ピーター・ウェルチ下院議員(民主党)は、今回の事例が「いかにロシアのサイバー攻撃がはびこっているか」を示したと指摘。ロシアのサイバー攻撃は「組織的で容赦なく、略奪的」だと語った。
米当局者は、ウクライナで2015年12月に起きた大規模停電の原因となったサイバー攻撃に、ロシアが関与したとみている。当時、約22万5000人が停電の影響を受けた。
専門家らによると、ウクライナ停電はサイバー攻撃で起きた停電としては、確認できる初の事例だという。