ミレニアル世代(1981~2000年頃に生まれた世代)に対する共通の認識は、自己中心的で浅はかといったものです。私にはどうしても理解できません。彼らが育ったのは、「地球にやさしく」とか、「社会正義」が合言葉となった世の中なのです。

景気が悪い昨今でも、多くの人は収入を得るだけの仕事では満足しません。世界に良い影響を与える仕事をしたいと望んでいます。ミレニアル世代にとっては、非営利セクターこそがこのふたつの要件を満たす職場なのです。もちろんそれは立派な志です。しかし、本当に非営利団体で働くつもりなら、知っておくべきことがいくつかあります。

心が優しい人向けの仕事ではない

あまりに多くの人が「人を助けたい」という理由で、非営利の仕事に就こうとします。私の意見では、非営利の仕事に就く理由として、それはふさわしくありません。あなたの動機が感情的なものなら、すぐに惨めな気持ちを味わい、燃え尽きてしまうでしょう。悪くすれば、皮肉屋になったり、冷めた人間になるかもしれません。

あなたは、限りなく助かる見込みのない人々に対して、自分の時間や労力、専門知識を注ぎ込むことになります。その結果、あなたは失望するでしょう。そう、何度も何度も...。あなたの行く手には何重もの障害が横たわっています。すぐ元に戻ってしまう中毒患者、再犯を繰り返す重犯罪者、支援者もおらず今月の家賃も払えない家族...。感情を殺せとは言いませんが、かなりタフな心が必要です。

そしてすぐに、「助けを望まない人は助けられない」という事実に気づくはず。あなたの動機が間違ったところから来ていれば、変わることを望んでいない人の人生を変えようとしたり、あなたと同じだけの努力ができない人を助けようとして、消耗するでしょう。また、あなたが「NO」と言えない人なら、制度を悪用する人や(どこにでもいます)、弱者の足を引っ張る人に利用されてしまいます。あなたが、「誰かに必要とされることが生き甲斐になる人」なら、カスタマーサービスの仕事をオススメします。

大量のペーパーワーク

せっかく寄付したお金を正当な権利のない「誰か」の手に渡っているのではないかという無意味な恐れのせいで、非営利の世界では大量のペーパーワークが課されています。クライアントとのどんな会話もサマリーを作る必要があり、どんなリソースも5人の承認を受けなければ獲得できず、使用後にさらに10人のサインが要求されます。

例えば、貧しい家族に配るための、家具や生活用品などの寄付品を保管する倉庫で働くとします。あなたはまず、すべての寄付品を自分用のファイルに記録せねばなりません。そして、団体用のファイル、自治体用のファイル、政府用のファイルにも記録することになります。寄付品を配達するときには、持っていく物品、走行距離、所要時間を記録せねばなりません。これで終わりではありません。フォークリフトを運転する人の資格の確認や、すべての作業が労働安全衛生法に違反していないかを確認するのもあなたの仕事です。つまり、退屈な事務処理が延々と続くことになります。手続きや書類が苦手な人にとっては、まさに悪夢のような職場です。

あなたの職務記述書はひと月に4回変わります

非営利の世界は常に人員不足かつ資金不足です。足りないところはあなたが埋めることになります。私はかつて、元受刑者を対象とした福祉相談員の仕事をしていました。その仕事のほかに、受付窓口、データ入力、資金集めパーティーの給仕係までが私の仕事でした。非営利の世界では、どんな職種に就くのであれ、求人広告に書いてあった仕事内容は、あなたが実際にやることになる仕事のごく一部なのです。持てる能力をフル活用することが求められます。できないことでも、すぐに覚えて、こなさねばなりません。

また、非営利の仕事は、規則通りに動かねばならない一方で、カオスな状況の中で「なんとかする」ことも要求されます。きっとあなたが今までしてきた仕事とはそこが異なります。少なくとも、労働時間は9時から5時の規定時間には収まりません。地域の説明会、メディア取材のためのコーディネートなど、月に何度もオフィス外の仕事に駆り出されます。とにかく、専門外の仕事をいくつもこなすことが期待されるのです。

安定した職ではない

非営利団体はたいてい、寄付か政府の助成金で運営されています。非営利の世界には「業務計画対象年度(program year)」と呼ばれるものがあります。これは、今期の目標を達成した後、次のラウンドも資金を獲得して業務を続けられるかが決まる年度です。非営利団体には、関係各者や資金を提供してくれた人たちへの説明責任があるのです。また、この年度が巡ってきたということは、翌年のあなたの仕事は保証されていないことを意味します。

なんとかなると思うかもしれませんが、万が一の場合に備え、次善策を検討しておくべきです。とくに学生ローンなど大きな負債を抱えているなら、職を失ったときの影響は深刻です。

もっとも、安定した職に就いているパートナーがいたり、すばらしいサポートネットワークがあるなら問題はないかもしれません。もしそうでないなら、いざという時のための蓄えが必要でしょう。団体が資金を獲得できなかったときに、自分の生活を支える手段を考えておく必要があります。

とはいえ、非営利団体で働くことは大きなチャンスでもあります

非営利団体の仕事を非難しているように聞こえるかもしれませんが、私の意見は変わりません。そんなにひどいかって? まったくその通り...。あらゆる非営利セクターは、最も困難でストレスフルな仕事で成り立っています。とはいえそれは、大きなチャンスでもあります。

同時に4つの職種をこなすのは、一般企業に就職した友人たちに比べて、4倍の経験が積めることを意味します。ミレニアル世代が就職市場で直面する最大の問題は「経験不足」ですが、あなたはほかの仕事に就いた同世代の仲間よりも、経験という面では抜きん出るはずです。履歴書に書くことがなくてさみしい、なんてことは絶対ありません。

恒常的な人員不足に加え、非営利の仕事はめまぐるしく変化します。つまり、新しいことを学ぶチャンスに恵まれ続けるということです。助成金の申請、教育活動、データ入力、カスタマーサービス、プレゼンテーション、地域奉仕活動、イベントプランニング、広報活動、統計処理、どんなスキルを磨きたいのであれ、ただ、それを学びたいと申し出るだけでいいのです。同僚たちは喜んで仕事を回してくれるでしょう。

また、非営利の仕事は人脈づくりの大きなチャンスを与えてくれます。

非営利セクターで働いていると、5000人の群衆に5つのパンと2匹の魚を与えても、付け焼き刃にすぎないことがわかるでしょう。その結果、非営利団体同士はコミュニケーションを取り合い、それぞれのサービスを組み合わせ、クライアントのためのベストなネットワークを構築しようとします。就職支援を行っている組織は、住宅支援の団体にクライアントを紹介するでしょう。そして、さらに食糧バンクを紹介するかもしれません。

同時に、地域住民や公務員たちとも積極的に関わることになります。地元のビジネスマンや政治家、ジャーナリスト、地域のキーマンなどとも知り合いになるでしょう。もちろん、どんな仕事でも人脈づくりは可能です。しかし、非営利団体ほどさまざまなキーマンたちと繋がれる仕事があるでしょうか?

簡単な仕事か? NO。

収入は多いか? NO。

しかし、あなたが非営利の世界でがんばり抜き、飛んでくる変化球を学びに変えることができれば、この世界であなたができない仕事などなくなるでしょう。

What You Need to Know About Working for a Non-Profit | Primer

Gordon Brown(原文/訳:伊藤貴之)

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