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セブン-イレブン「バカが考えた?」弁当が優秀な理由…商品戦略に揺り戻し

文=Business Journal編集部、協力=渡辺広明/消費経済アナリスト
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セブン-イレブン「背脂にんにくマヨ 唐揚げ&ペペロンチーノ」

 大手コンビニエンスストアチェーンのセブン-イレブンが今月18日に発売した「背脂にんにくマヨ 唐揚げ&ペペロンチーノ」(税込753.84円)。にんにく醤油を和えて背脂にんにくマヨネーズをかけた「ご飯」、ペペロンチーノ、大ぶりの唐揚げ2個のみというシンプルな構成である一方、熱量は1298kcalというかなり大容量の弁当だが、SNS上では「バカが考えたとしか思えない弁当」「こういうのでいいんだよ」「満腹」と話題を呼んでいる。セブンに限らず、コンビニ各社は最近、こうした特定の消費者層をターゲットに据えて“全振り”した商品を投入しているが、背景には何かあるのか。専門家は「近年コンビニは女性受けを狙った商品や健康志向の商品に注力してきたが、『とにかくお腹をいっぱいに満たしたい』というニーズが意外に大きいことに気がつき始めた」と指摘する。

 価格が割高で量が少ないというイメージが広がっていたセブン-イレブンの食品類だが、昨年頃からボリューム感のある商品が増えつつある。10月には従来4個入りだった「つぶあんパン」を5個に増量して値下げした「セブンプレミアム つぶあんパン 5個入」(170円)、通常の「おむすび」より重量が約2倍、ご飯量が約1.5倍の「どーんとおむすび」シリーズ、熱量が1000kcal超となる1116kcalの「ぎっしりおかずの和風弁当」(626.40円)を相次いで発売。さらに価格面でお手頃感のある商品群の拡充にも注力しており、昨年9月から「うれしい値!」商品を積極的に展開している。

 背景には客数と業績の低迷がある。2024年6~8月の既存店客数は3カ月連続で前年同月比減、既存店売上は6~9月の4カ月連続で同減になるなど変調が見え始めており、親会社セブン&アイ・ホールディングス(HD)の24年3~11月期連結決算は純利益が前年同期比65%減の636億円となり、主力の国内コンビニ事業の早急なテコ入れの必要に迫られている。

 昨年5月まで実質賃金が過去最長の26カ月連続マイナスとなり消費者は価格に敏感になるなか、競合するファミリーマートとローソンは数年前から価格据え置きのまま容量を増量するキャンペーンを展開。ファミマは「たぶん40%増量作戦」、ローソンは「盛りすぎチャレンジ」を毎年、期間限定で実施。2社に遅れてセブンもようやく昨年5月に「お値段そのまま増量フェア」を実施したが、客数は低迷している。

 元ローソン・バイヤーで消費経済アナリストの渡辺広明氏はいう。

「『うれしい値!』シリーズの商品を大幅に拡充しました。ですが、あまりその戦略がうまくいっていないように思えます。たとえばセブンは7月に『手巻おにぎり ツナマヨネーズ』を151.20円(税込、以下同)から138.24円に値下げしましたが、セブンのツナマヨが138円に変わったという情報を認識している人は少ないでしょうし、『ツナマヨが13円値下がりしたのでセブンに行こう』となる人は少ないでしょうから、客数増の面で目立った効果は出にくいです。また、『うれしい値!』商品の拡充によって来店の動機をつくり、“ついで買い”で高価格の商品を買ってもらえば客単価も上がりますが、目立った伸びは見られないので、そのようなついで買いを誘発するような魅力的な高付加価値商品を販売できていない可能性も考えられます」(1月14日付当サイト記事より)

 セブン-イレブン自身が『うれしい値!』戦略をどう評価しているのかはわからないが、1月下旬には『うれしい値!』の対象商品も含めて計37品を平均で約10%値上げしており、継続して最適解を模索している様子がうかがえる。

「値上げは仕方ないよね」という認識が世間的に共有

 そうしたなかでセブンが今回のような「とにかくボリューム重視」の商品を投入した狙いはどこにあるのか。前出・渡辺氏はいう。

「数年前から物価がどんどん上昇してラーメンは1000円超えが普通になってしまった今、もはや消費者もこのセブンの新商品を見て『高い』とは感じないでしょう。パスタも飲食店で食べると結構な値段がしますし、米も値上がりしているなか、『700円台でパスタもご飯も唐揚げも入っていて、お腹いっぱいになれるんだから、いいんじゃない?』と感じる消費者は多いと思います。

 近年コンビニ各社は女性向けの商品や健康志向の商品、高付加価値の商品の拡充に力を入れて、それがトレンドになっていましたが、その一方で『質よりも量重視で、とにかくお腹を満たしたい』というニーズに沿う商品が手薄になっていました。ですが、コンビニの来店客数は年間164億人(2024年/日本フランチャイズチェーン協会の調べ)にも上り、要するに日本国民のすべての層が頻繁に来店しているので、あらゆるニーズに対応しなければならないのに、コンビニ側は『女性向け』『健康志向』に偏ってしまっていました。そのミスマッチにコンビニ各社が気がつき始めて、揺り戻しが起きているということなのかもしれません。セブンに関していえば、少し前にインスパイア系ラーメンのような商品が非常に売れていたので、『こういう商品もあったほうがいいよね』と気がついたのかもしれません。

 円安や天候要因により原材料費も人件費も物流費も全て上がっているので価格を値上げせざるを得ないわけですが、それでも飲食店で食べるよりは安いですし、女性もボリューム重視の商品を買うケースはあるので、一定の売上は見込めます。これまでコンビニ各社は『お弁当に加えて惣菜とデザートに飲料も買ってもらって客単価の上昇を狙う』という戦略を立ててきましたが、消費者の実質賃金が下がって家計が苦しくなっていることもあり、もうそれが無理になってしまった。お客側からみて“一つ買うだけで済む”商品を投入していく必要があり、また、そうした商品は選ばれやすい環境になりつつあります。

 消費者の価格に対する意識の変化というのも大きいと思います。平成デフレの時代は激しい価格競争で、企業はとにかく安く売ることを競っていたわけですが、その結果どんどん国民の実質賃金が下がって、どれだけサービス残業しても報われない人が多く生まれ、国民の生活が苦しくなっていきました。その時代と比べれば、原材料価格や人件費の値上がりという要因も重なって『値上げは仕方ないよね』という認識が世間的に共有され、適正な価格に上がっていくというのは良いことだと思います」

 前日のとおりセブン以外のコンビニでも量重視の弁当類は目立つ。ファミリーマートは大盛のご飯と唐揚げ、コロッケ、焼肉などが入った「てんこ盛弁当」(638円)などを、ローソンは炒飯、焼ラーメン炒飯、焼き豚、鶏の唐揚げが入った「炒飯&焼ラーメン」(697円)などを販売していた。

総合的に考えれば「非常に優秀」と評価

 気になるのが今回の「背脂にんにくマヨ 唐揚げ&ペペロンチーノ」のクオリティと価格を勘案した価格妥当性をどう評価できるのかという点だが、実食したコンビニチェーン関係者はいう。

「まず、見た目以上に量が多いです。ペペロンチーノだけでパスタ一人分の分量があり、これだけでお腹いっぱいになる人もいるでしょう。唐揚げもかなり大ぶりなので、ペペロンチーノで一食、にんにく醤油を和えたご飯で一食、唐揚げと別途用意したご飯で一食と、計3食分を賄えるほどです。その意味ではコスパとしては100点満点です。一方、味付け的には全てがニンニクがきいていて想像どおりの味ではあるものの“そこそこ美味しい”ので、これで十分という人も多いでしょう。個人的には、唐揚げとご飯が似たような味なので一緒に食べるとややくどく感じるため、唐揚げは取り置きしておいて、別の一食分として普通の白米と食べたほうがよいと思います。いずれにせよ、ボリュームと美味しさ、700円台という価格を総合的に考えれば『非常に優秀』と評価できます」

(文=Business Journal編集部、協力=渡辺広明/消費経済アナリスト)

渡辺広明/消費経済ジャーナリスト

コンビニの店長、バイヤーとして22年間、ポーラ・TBCのマーケッターとして7年間従事。商品開発760品の経験を活かし、現在 (株)やらまいかマーケティング代表取締役として、顧問、商品開発コンサルなどに多数参画。報道からバラエティまで幅広くメディアで活動中。フジテレビ「Live News a」レギュラーコメンテーター。 「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家。『ニッポン経済の問題点を消費者目線で考えてみた』『コンビニを見たら日本経済が分かる』等著書多数。

Twitter:@yaramaika

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