2021.09.22
チーム解散、倒産寸前、山梨移住を経て。23歳起業家が挑む「マーケットプレイス新サービス」でのリベンジ

チーム解散、倒産寸前、山梨移住を経て。23歳起業家が挑む「マーケットプレイス新サービス」でのリベンジ

匿名チャットサービスをクローズし、新たなマーケットプレイスサービスでリベンジに挑む若月佑樹さん(23)。スマホでかんたんに自動車整備・鈑金工場が検索・予約できる『メンテモ』を2021年8月にリリースした。なぜ、自動車アフターマーケット? どこに勝機がある? 根掘り葉掘り伺いました!

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▼探せる、見つかる 愛車の主治医メンテモ

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街の⾃動⾞整備・鈑⾦⼯場をネットでかんたんに予約できるサービス。これまで自動車アフターマーケットは「買ったところ(ディーラー・中古車販売店)に持っていく」がメインであり、自動車整備工場・鈑金工場屋には⼊りにくいイメージがあった。その敷居を下げ、愛車の修理・メンテナンスに新たな選択肢を生み出す。2021年9月現在は山梨県内のみを対象にサービス展開されている。


サービス開始までの時系列サマリ|若月佑樹
・2020/02: 趣味でクルマを購入
・2020/03: 『メンテモ』原案を着想
・2020/03: 山梨 ←→ 東京を行き来し、祖父の鈑金工場、クルマを持っている同世代にインタビュー
・2020/04: みんなのマーケット、East Venturesから資金調達
・2020/05: 山梨県甲府市(若月さんの実家) に営業所開設、実質的に拠点を山梨に移す
~ 2020/09: 『メンテモ』初期バージョンを開発
・2020/09: 山梨の事業者さんにFacebook経由でインタビューを依頼
~ 2021/01: メンテモのバージョン2を開発・初期登録事業者さんを募集
・2021/03: サービス公開、ジェネシア・ベンチャーズ、みんなのマーケットから資金調達

※画像は全てメンテモ社より提供

「自動車修理」に見つけた課題|2020年2月~

もともとは『NYAGO』などtoCサービスをつくっていた若月さんだが、なぜ「自動車アフターマーケット」という市場で勝負しようと考えたのか。その着想から伺った。

地元が山梨なのですが、もともと祖父の家がクルマの鈑金屋さんで。近くで見てきて、自動車修理やメンテナンスは既存チャネルに不満があれば、スイッチする可能性がある領域だと思っていたんです。

クルマのキズやへこみを直すのですが、よく私や家族宛てに地元の知り合いから「ディーラーからxx円で直すって言われたんだけど、おじいさんのところだと、いくらくらいで直せる?」と質問をもらっていました。

自分でも2020年2月にクルマを買って、友だちに「クルマの修理ってどこに頼んでる?なんでそこにした?」とカジュアルに質問したら、ほとんどの人がディーラーなど買った場所、もしくは何となく付き合いのある工場に依頼していた。じつは「そこに頼むハッキリした理由」は無いことがわかりました。

なぜ、街の自動車整備工場、鈑金屋さんにお願いしないかといえば、一見さんお断りの入りづらい雰囲気があると。ここには課題がありそうだと考えました。

修理やメンテナンスはどこにお願いしても同じではないか?という疑問もある。そこは大きな誤解があると若月さんは言う。

エンジニアにしても、書ける言語や能力ってそれぞれですよね。できること、できないことがある。そのイメージに近い。全国には9万件以上も整備工場、鈑金工場さんがあり、個性もさまざまです。当然、技術の差もあります。

たとえば、僕は新型のクルマと、古いクルマ、2台持ってるのですが、古いほうをお願いしている工場は片道1時間くらいかかるところにあります。社長さんがすごい技術を持っているのでそれでも見てもらいたい。自身「ハコスカ」と呼ばれる古いスカイラインに乗っていたりもするエンスーで。人によって考え方は違うと思いますが、やはり頼むべきところに頼めたほうがいい。

じつはディーラー側はお客さんから修理を依頼されると、作業によっては、分散して街の整備工場や鈑金工場に流している下請け構造があります。工場側もディーラーから仕事が流れてこなくなると経営がピンチになってしまうので、上手く付き合わないといけない。じつは直接お客さんとつながりたいといった表面化しづらい本音はあるのではないかと思っていました。

+++若月さんの愛車「トヨタ 86」と「トヨタ スプリンタートレノ AE86」

『みんなのマーケット』浜野勇介さんへの相談&資金調達|2020年3月~

その後、若月さんは『メンテモ』原案についてアドバイスをもらい、投資をお願いすべく『みんなのマーケット』を運営する浜野勇介さんのもとを訪ねた。じつはそれまで直接の面識があったわけではなかったというが、なぜ、浜野さんに相談したのか。

いわゆる2-sideのマーケットプレイス、サービスECとしてトップのサービスが『みんなのマーケット』だと思っていて。なので、ぜひお話したいと会わせていただきました。ビジネスモデル的にも近いのかなと。

具体的には、どのような質問をしたのか、詳細についても伺えた。

覚えている限りですが、


・『みんなのマーケット』が初期の獲得戦略として主要都市にエリアを絞り込んだ意図とは?その長所、短所は何か?
・店舗群は基本的にインターネットに情報が無い事業主が多そうなイメージですが、どのようにクローリングしたか?
・初期の営業におけるチャネルは何で、最も効果の高かったものは何か?
・営業における店舗に感じてもらえる説得力は何だったか?


みたいなことを聞いたかと思います。

その他にも、手数料の設定や考え方、SEO、事業者さんお客さんが直接やりとりしてしまう「中抜き」についてなど、確か目黒のカレー屋さんでもいろいろアドバイスがいただけました。

勉強になったのが、自動車アフターマーケットとサービスECは似てるようでけっこう違う、ということ。たとえば、クルマの修理だと「部品代で7割」みたいなケースもあるので、手数料の考え方は変えないといけないなと。

そこから「がんばって」と出資いただけることになって。その資金調達が2020年4月だったのですが、そこで投資がいただけなければ、キャッシュが底をつきそうになっていたので、じつは倒産寸前でしたね。

▼浜野さんと会う前に送った若月さんの自己紹介文

+++ 「どこに引っかかってもらえるかわからなかったので、たくさん書いたのかも。とにかく出資してもらえなかったらほぼ倒産が確実だったので必死でした」と若月さん。※「Ceremony」は旧社名

▼リリース時(2021年8月)に寄せられた浜野さんからのコメント

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東京から山梨へ|2020年5月~

1度目の資金調達が決まった2020年4月。それまで東京に構えていたオフィスを引き払い、山梨に拠点を移す。その理由とは。

お金を節約できるところはしようと。オフィスを新たに借りるお金ももったいないので、いったん実家を営業所として登録して、5月には拠点を山梨に移しました。

もうひとつ、山梨に移った理由として、山梨は日本屈指のクルマ社会だったことも大きいという。

若い人でも一人一台はクルマを持つことが当たり前。その感覚を肌で感じられる。リサーチもいろいろしやすいと思いました。そこから初期Verのプロダクトの開発と、事業者さんへのヒアリングを並行していきました。

効率は全然よくなかったですが、Facebookのメッセンジャーで鈑金工場の社長さんにインタビューを依頼したりして。唯一返信をくれた方から、数珠つなぎで紹介いただき、いろいろな事業者さんの声を拾っていきました。

+++実際に送ったインタビューの依頼文。ほとんどが返信をもらえなかったと振り返る。「返信をくれた鈑金工場の代表からも、いきなり怪しいメッセージが来て返すか迷った、と言われました」と若月さん。

具体的に事業者さんにインタビューしたのは、


・どんなことに困ってるか?
・『メンテモ』原案をどう思うか?
・先行している類似サービスになぜ入ったか?入らなかったか?


みたいなこと。

正直、事業者さんに聞けば聞くほど否定的で(笑)鈑金屋の祖父も「インターネットを見てくるお客さんは怖いから絶対やりたくない」でした。

なぜ、否定的だったのか。そこには「自分たちの良さをアピールできない」「安いほうにお客さんを取られてしまう」といった不安が垣間見えたという。

どうしてもネットだと事業者同士を横並びになってしまう、そこがイヤだという反応が多かったんですよね。

たとえば、『食べログ』であれば客単価3万円の老舗寿司屋さんと、回転寿司チェーンのお店が掲載されたとして、そもそもの利用する層、ニーズも異なるので一緒くたにはされません。

ただ、クルマの修理やメンテナンスだとその違いが伝わらないんじゃないか?というのが事業者さんの声でした。「安くて雑なところと同列に並べられ、自分たちの良さが全くアピールできず、お客さんはどんどん安いほうを選び、価格競争になってしまうのではないか」と。あとは「クルマに全く興味がない営業担当者がやってきて、とにかく入れと言うのは、腹が立つ」というリアルな声もありました。

そういった言った否定的な意見も多いなか、なぜ『メンテモ』を作ろうと思ったのか。

「否定的」は「参入障壁が高い」ということでもあります。10年後のことを考えてみると、少なくとも「電話でしかクルマの修理・整備が予約できない」といった未来は来ないはず。なので、まずは主観でサービスを作りきろうと思いました。

事業者さんとしても、ディーラーとの関係は大切にしつつ、下請けに依存せず、お客さんとつながれればメリットも大きい。技術も安売りしない。その思いが叶えられれば一緒にやっていける。『メンテモ』が大切にしたい部分と重なると思いました。

+++「営業活動に行く時や、ふらっと事業者さんのところに立ち寄らせていただく際に、工場の隅から隅まで、職人さんの動き、PC作業の様子、スマホを触る頻度など、細かく観察していきました。デスクワーカーではないので、一般的なSaaSや業務ソフトウェアの作りだと使ってもらえない。そこの溝を埋めるために観察し続けました」(若月さん:画像右)

事業者にも愛されるサービスを|2020年9月~

そして決めた指針は「お客さんにも、事業者さんにもニュートラルなマーケットプレイスを創る」だったという。

いわゆる2-sideのマーケットプレイスにおいて、ユーザーサイドの満足度をあげていく、というのが一般的なアプローチだと思います。ただ、どちらか1-sideに寄ると長期的な満足度は下がる、という仮説ははじめから持っていて。お客さんにも、事業者さんにもニュートラルなマーケットプレイスを創る。ここはかなり初期から決めていたし、ずっと社内で伝えてきました。

そもそも一台一台のクルマを長く大切に乗っていってもらいたい。修理•メンテナンスにしても「雑だが安い」という作業は掲載をしないほうがいい。

それこそ、「安くて早い」は、先行する大きい会社がやっていて。予算を使ったキャンペーン、ローラー営業なども大手はできるので、同じ土俵で勝負するのは厳しい。そこで勝負をしてしまうと、手数料が1%低いサービスが出てきた瞬間、事業者さんが乗り換えてしまう可能性もあって。仮に他よりも手数料が多少高かったとしても、それだけの価値を感じてもらえるようにしないと負けるんですよね。

当然、掲載件数が少なくていいわけではありません。量は追うのですが、サービスの生存戦略としても、まずはちゃんとこだわっているところにまずは絞る。そのためにも自分たちで厳しめの審査基準を設けて載せていくことにしました。当然、始めて2ヶ月くらいなので、まだ成功してるわけではなく、この戦い方でいけるのか、試行錯誤しているところ。

ただ、僕らの会社としての「クルマの未来をみんなで創る」ミッションはブレないですし、そのためには修理できる人が絶対に必要で。『メンテモ』は事業者さんにとっても大切なプラットフォームになっていくはず。当然、まだまだ小さな規模なので、事業者さんには「集客できます」みたいなことは言わないです。ただひたすら正直に「現時点ではまだまだ集客力は少ないけど、アクセスは増えてきています。クルマの領域に絞ってやると決めていて、その覚悟もちゃんとあるので、載せさせてください」と伝えていくと共感いただけて、掲載いただけるケースも増やせています。

+++2021年7月のオフィスの様子。「部署としても、お客さんの方だけを向く部署と、事業者さんだけの方を向く部署を作り、責務を分けました。人数・フェーズとしては分けるほどではありませんでしたが、ニュートラルである重要性を強く感じていたので、早めに分けることにしました」と若月さん。

さらなる資金調達、そしてリリースへ|2021年1月~

そして2020年末から2021年にかけ、リリースに向けての動きが加速していく。

2020年末くらいからはとくにプロダクトの開発に専念し、2021年1月にはVer.2をつくりました。2020年の9月くらいに初期verは作っていたんですけど、ちゃんと形がないと想像がつかないかなと思ったのもあって。それをもとに事業者さんの募集、開拓を進めつつ、資金調達のために動いていきました。

2020年4月の『くらしのマーケット』に加え、2021年3月に『ジェネシア・ベンチャーズ』他、複数の投資家から調達し、リリースへ。

正直、その時、キャッシュもギリギリで、deck を作る工数が無く、かなりシビアな状況でした。そこでNotionページを作り込み、投資家の方には、それをシェアし、オンラインで注意すべき点、今後の展開についてディスカッションをさせていただきました。

▼プロダクトのデモやマネタイズなど詳細をNotionページにまとめたという。

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その時、投資家とはどのような議論をしたのだろう。

まずクルマを所有している方だとペインが共有できたので、そもそも産業構造がなぜこうなったのか、『メンテモ』はどこの部分を変えるのか、そういったところ中心にお話ししました。

あとは別の方ですが、2-sideマーケットプレイスの事例、地域を絞って再現性を作るための具体的なHowや、USのスタートアップの事例など説明いただき、「自分たちならどうするか」と考える宿題などをもらいました。

あらためて地域を絞って2-sideの再現性を作る、その部分に重点を置く意思が強くなったと思います。

もうひとつ気になるのが、市場規模や動向について。若月さんはどのような見立てで勝負をしていくことを決めたのか。

まず自動車アフターマーケットのGMV(流通総額)で言えば、年間5.6兆円が動いていて、どのくらいの事業者さんから、どのくらいの手数料がもらえれば…と、簡単な式で売上は算出できましたし、かなり大きいマーケットがあると思っていました。

動向ですが、クルマの進化の方向性は「乗客の安全性」と「環境への配慮」の2軸があります。で、この2つは世界の自動車メーカー、関係者は全員が意識をしないといけないし、法律も厳しくなっていくところ。「乗客の安全性」でいえば自動運転だったり、前のクルマに勝手についていったり、危険を察知して止まったり、どんどん進化しています。じつはこれらの調節はかなりシビア。クルマのセンサーが1mmズレただけでも作動のタイミングがおかしくなります。

こういったハイテクなクルマがどんどん増えると、誰が修理・メンテナンスするのか?という問題も必ず出てくる。ここは『メンテモ』が早めにやろうと動き出したところです。「探せる、見つかる、愛車の主治医」を掲げているので、古いクルマだけをカバーするものではありません。当然、ハイテクな新型車の主治医が見つかるようにしたいですし、そこを売りにしていく。そのためにも審査基準も厳しめにしています。

当然、昔ながらの事業者さんは、そのハイテクなところの修理を諦めているケースもあります。逆に、いち早くハイテクなクルマの修理・メンテナンスに対応すれば仕事がもらえると注力している事業者さんもいて、ここは二極化しているところかもしれません。

学生向けのアプローチで大ゴケ|2021年8月~

2-sideのプラットフォームとして、リリース後の“ユーザーサイド”の獲得も重要だ。そこに対して、どうような施策を打っているのだろうか。

まず大失敗したのが、学生たちがいそうなエリアへのポスティングですね。全くの無風でした。「知縁・血縁がない県外から来たクルマを持つ学生」に使ってもらえるのでは?と目論見でスタートしたのですが、そもそも県外から山梨に来た学生のクルマ所有率がかなり低いとわかって。学生に対する自分のユーザー感覚が乖離していました。

その一方で着実に伸びたのがSEOでした。流入してるキーワードを見ておもしろかったのが、「アメ車のレストア」「ATF 交換」など、かなりニッチな内容もあったりして。クルマ好きな人たちに見てもらえそうだとサービス設計もチューニングしていきました。やはりSEO流入が主軸になるビジネスだと思っていたので、そこに積極的に投資しています。

ニッチだけど大切なクルマの情報は、意外とオフラインにしかない。それらをネットで提供できれば、勝算もあるはずで。ずっとSEO畑でやってきた友だちにコンサルしてもらい、社内のグロースと呼んでいるチームとインターン生たちで記事制作などをまわしてもらっています。

オフィスの窓に「インターン募集中です」の張り紙|2021年8月~

クルマの修理・メンテナンスに役立つ記事制作にしてもリソースは必要に。そこは学生インターンに協力を得ている。その募集方法もユニークだ。

山梨のオフィスは、あえて大学のすごく近くに借りました。インターン生の採用に有利かなと。オフィスに面した通りを学生たちがよく通るのですが、そこの窓に「インターン募集中です」みたいな張り紙を出して、実際に3人くらい採用できたんですよね。ちょうど飲食店のバイト募集が少ないですし、けっこういい働き先になっているのかもしれません。

東京のときもインターン生が来てくれたことはあったのですが、山梨だとちょっと違ったタイプの人が多い気もします。東京のときは起業したい、ベンチャーで働きたい、インターネットが好き、という人が多くて。でも、山梨だと「家が近いから来ました」とか「もう就職が決まっててITの勉強したくて来ました」とか。すごい責任感を持ってストイックに仕事をしてくれてますし、雰囲気はすごくいいと思います。

+++実際にメンテモ社の窓に貼られている「インターン募集」の張り紙。これがきかっけでインターンの採用につながっている。


採用・チーム構成について(2021年9月時点)
- 事業開発(事業者さんへの営業):3名
- グロース(ユーザー獲得):2名
- プロダクト開発:3名 (若月さん + 業務委託のエンジニア + 技術顧問の田籠さん)
- インターン生:3名

「採用していったポジションの順番としては、まずは事業者さんに掲載してもらわないと始まらないので事業開発から採用していきました。そこは普通に求人サイト経由で、とくに経験豊富な営業の方が来てくれた。そこから事業者さんを開拓してくれたのも大きかったと思います。プロダクトは私がメインで開発していて、都内のエンジニアの方に副業、フルリモートで協力してもらっています」

アジリティを高めていくために|2021年9月~

最後に、サービス立ち上げを振り返り、とくに「プロダクトにおいて反省点も多かった」と若月さんは語ってくれた。

振り返ってみると、プロダクトの開発は、もっとしっかり考えてやったほうがよかったなと思っています。具体的には、要件定義というか、仕様を作るときに雑でもドキュメントとして残しておけば良かったと思っています。

自分一人で作ったので、いきなりデザインを引いて開発して…という進め方をしたんですよね。「そんなに書かなくていいや」と。今になって「あれ、何のためにこう作ったんだっけ」「なんでこの構成にしたんだっけ」とかなり忘れている。組織として作っていく、という視点が足りなかったと思っています。

ドキュメントがあれば、これからプロジェクトにデザイナー、エンジニアが加わった時も意図が伝えやすくなりますし、組織のスケーラビリティが上がり、開発のアジリティも上がるなと。とくにSEOに注力していくなか、来訪してくれたお客さんが離脱しているポイントが分かれば、すぐにプロダクト側も手を打ちたい。なのでアジリティがすごく重要なテーマになっていますし、デプロイの回数を増やす、リリース頻度をプロダクトチームのKPIにしています。

今、それぞれの部署からプロダクト改善のバックログが積まれていくのですが、そこは個人的にすごく気に入っています。お客さん、事業者さん、それぞれの方向を向く部署を分けていて、どんどん毛色の違う要望があがってくる。将来的には、それをPO/PdMが取捨選択しながら進めていけるようにできればと思います。

これまで「プロダクト ≒ クリエイティブのアウトプット」という考え方だったところが、今は「プロダクト≒事業の車輪」だと強く認識するようになって。プロダクトへのこだわりは変わらず強いですし、頭抜けて良いプロダクトにしていく。ここが他に負けない強みになっていくはずなので、ごりごりやっていければと思います。


取材 / 文 = 白石勝也


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