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【仕事の裏側】「殺処分される猫を1匹でも減らしたい」ミルクボランティア鯨岡久美子さん

2025.01.26

気になる”あの仕事”に就く人に、仕事の裏側について聞く連載企画。第16回は、捨てられたり、親とはぐれたりした子猫を保護・世話をする、ミルクボランティアの鯨岡久美子さん。一軒家を購入し、子猫のための保護シェルターを開設し、家族と離れ24時間体制で子猫の世話を行う。鯨岡さんがミルクボランティアという活動に心血を注ぐ理由とは?

猫の殺処分件数は、犬と比較し約3倍

環境省によると、猫の殺処分数は年間およそ13万頭(平成23年度に実施した調査)。犬の殺処分数は年間およそ4万頭と、減少傾向にあるが、猫の件数は改善傾向にないという。その理由について、猫に対する人々の飼育責任が低いこと、猫は発情の周期が頻繁で繁殖機能が高いことを挙げている。出典:環境省「猫の適正譲渡ガイドブック」

鯨岡さんが活動するのは、茨城県ひたちなか市にある一軒家の子猫用保護シェルター「保護猫ハウスNEKOGOTO(ネコゴト)」。2024年11月現在、約20匹の子猫の世話をしている。2024年5月からの3ヶ月間で、21匹の子猫を保護したという。親とはぐれた子猫もいるが、人間に捨てられた子猫も多い。鯨岡さんがミルクボランティアの活動を始めたきっかけも、捨て猫を見つけたことだった。

「5年前、近くの公園で猫がダンボールに入れられて捨てられていたのを見つけました。中には母猫と子猫2匹。親猫と一緒に子猫を捨てるのが腹立たしいし、この子たちを助けたいと思いました。」

3匹を保護し、子猫2匹は新しい飼い主のもとへ。譲渡先が見つからなかった母猫は鯨岡さんが引き取り、現在も家族の一員として一緒に暮らしている。その後、「子猫を1匹でも多く救いたい。新しい家族を見つけてあげたい。」と活動を開始。2023年には一軒家を購入し、保護シェルターを開設した。この5年間で救った子猫は200匹近いという。

3時間おきの授乳や排泄の手助けなど、子猫の命をつなぐ

24時間体制でケアが必要な猫も多く、普段は夫と二人の娘と離れ、シェルターに泊まりこんで子猫たちの世話を行う。「保護活動を始める際、夫は賛成してくれて金銭面でバックアップしてくれてました。現在はシェルターがあるので、場所や金銭面などは家庭とは切り離しています。」子どもたちも活動について理解をしてくれており、シェルターで一緒に手伝いをすることもあるそう。

鯨岡さんが保護するのは、茨城県動物指導センターで収容された子猫がほとんど。乳飲み子は育てるまでに2ヶ月かかり、すぐには譲渡できないことから、避けられる傾向にあるという。しかし、現在は鯨岡さんが運営するシェルターでは、100g以下の未熟に生まれた子を専門にしている。

「センターで亡くなるよりは家で看取ろうという気持ちで引き取っています。もちろん、生かしてみせると思って育てていますが、収容された状態が悪い場合は、必然的に家で亡くなる子も多いです。辛い瞬間も多いですが、保護された時の状態が良かった子を無事に生かすことが出来た時や、正式譲渡になった時には、喜びもやりがいを感じます」

子猫をシェルターに連れて帰ると、まず怪我や異常がないか身体をチェックする。自分で体温調節ができない乳飲み子は、体温が低下しないよう、保温を行なう。

「子猫は体温の低下が命に関わるため、カイロやペットヒーター、毛布などで身体を温めます。500g以下の乳飲み子は体温調節ができない為、真夏でも保温が必要なんです」

保護される子猫の中にはへその緒がついたままの状態のこともあるという。生まれたての子猫は、衰弱している場合、ミルクを飲めず死んでしまう場合もあるため、シリンジから少しづつミルクを与える。昼夜問わず、定期的にミルクを与える必要があるため、まとまった睡眠が取れない日も少なくはない。その他、離乳や排泄の手助けを行う。順調に成長した後も、給餌、排泄物の処理、部屋の掃除、洗い物などを毎日行わなければならない。

これはとある1日のスケジュール。猫だけではなく、自身や家族のための家事もあり、休む暇がほとんどない。それだけ、この活動に心血を注いでいることがわかる。

6:00 起床
6:30 猫のミルク・ごはん、人間のご飯作り
7:30 片付け
7:45 小学校送迎
8:30 家の掃除、洗濯
9:00 猫のトイレ掃除、フロアとケージ内掃除
10:30 猫のミルク
11:00 書類整理など事務作業
12:00 猫のごはん
12:30 片付け、洗い物、自身のお昼ごはんなど
13:30 猫のミルク
14:00 片付け後仮眠
15:30 子どものお迎えと家の買い出し
16:30 猫のミルク
17:00 猫のごはん
17:30 片付け、料理開始
18:30 猫のミルク
19:00 家族のご飯、片付け、猫のトイレ掃除
20:30 お風呂、その他家の掃除
21:30 猫のミルク
22:00 猫のごはん
22:30 片付け
0:30 猫のミルク
2:00 猫のミルク(最終)

2時間かけ、子猫にとって負担の少ない治療をしてくれる病院へ

猫の体調に異変があった際、風邪など症状が軽い場合は、近隣のかかりつけの病院に。特殊な症状の際は、車で2時間かけ、東京都内の病院で診てもらう。猫の身体の負担が少ないよう配慮をしながら治療をしてくれるからだという。

鯨岡さんは、子猫の飼い主を見つけるため、子猫たちの成長の様子をSNSでアップする他、埼玉県のホームセンターで定期的に譲渡会に参加している。SNSを見て、譲渡会に来てくれる人も多いという。鯨岡さんの活動を支えるのは、家族だけではない。

「この活動を知った方が、餌や医療費の支援をしてくれています。一人では賄うのは無理です。支援のおかげでこうして活動を続けられていますみんな同じ命だと思うので、殺処分を減らしたいという気持ちでこの活動をはじめました。いつか、保護猫がいなくなる世界になればいいなと思います」

保護猫ハウスNEKOGOTOでは、猫の餌やトイレの砂などを送る形での支援が可能。詳しくはHPにて。

※一般の方からの引き取りは行っていません。活動の妨げにならないよう、SNSやHPへの問い合わせは控えていただきますよう協力をお願いいたします。

【取材協力】
保護猫ハウスNEKOGOTO
鯨岡久美子さん
https://www.instagram.com/leonoa_kumeri/

文 / Kikka

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