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「既成政党の錆びついた鉄板に、大きな亀裂を入れることができた。結果は負けですが、良い戦いができた。明日につながる足場ができたと思っています」
こう語るのは、山口県知事選で善戦した飯田哲也氏(53)だ。7月29日に投開票が行われた同知事選は当初、民主党が候補を立てられず、前知事の後継として立候補した自民、公明推薦の元国土交通審議官・山本繁太郎氏(63)の楽勝と見られていた。そこに、橋下徹大阪市長のブレーンでNPO法人「環境エネルギー政策研究所」所長の飯田氏が、大阪府市エネルギー戦略会議を辞任して出馬。告示のわずか20日前の表明だったが、脱原発を掲げて猛追。一時は逆転の予想も出るほどだった。結果は山本氏の勝利に終わったが、保守王国山口で18万5000票あまり(山本氏に約7万票差)を獲得。既成政党の心胆を寒からしめたのである。
山口県では、中国電力が瀬戸内海国立公園内の田ノ浦に上関原発(上関町)を建設中で、県民の反対運動が起こっている。米軍岩国基地へのオスプレイ一時駐機問題もある。原発計画の白紙撤回を前面に打ち出して戦った飯田氏は、自身の得票についてこう分析する。
「善戦できた要因は3つあると思います。まず、脱原発のウイングが広がったこと。自民党支持の方で、明確に私の支持に回った方がたくさんいました。2つ目は既存の自公民に対する批判票。そして3つ目が、特に女性票、弱者の方々の支持です。地域をしっかり豊かにしていく。女性が生きやすい社会、人に優しい社会にしていくという訴えに対する、女性たちからの反応をリアルに感じ取ることができた。単純に脱原発だけではないと思います。保守王国の中で、何をやってもしょうがないと諦めていた人たちが、夢と希望を持って支援してくれたのです」