元経済ヤクザだからわかる、北朝鮮「過剰な挑発」の真意

アメリカが沈黙するのが怖いから

猫組長

2017年9月3日、北朝鮮が6回目の核実験を実施した。北朝鮮側は原爆より強力な「水爆実験の成功」を発表しているが、通常の核爆発より威力が強力だったことは観測されている通りである。

さて、今回は「元ヤクザの眼からみた北朝鮮問題」を論じてみたい。北朝鮮はいわば国際社会のアウトローだ。彼らの行動は、一般社会の眼でみれば非合理的だが、同じアウトローの眼からみると、その目的や狙いが良く見えてくるのだ。

石油取引で知ったアメリカの本当の怖さ

現在、アメリカによる空爆のXデーは2説ある。一つは、『週刊現代』8月19・26日号で、ドナルド・トランプ米大統領(71)が安倍晋三総理(62)に伝えた話として報じた「9月9日」説。もう一つが9月20日の新月に前後した説である。

9月9日は北朝鮮の建国記念日。昨年核実験を実施した前科があり、この日は金正恩党委員長を始めとする北朝鮮のトップが集うのだから、空爆を実施するとすればターゲットは「人」だろう。また、20日の新月を前後するのであれば、ターゲットは「軍事施設」と予想される。

米朝の緊張は高まる一方なのだが、超大国と小国がぶつかり合う背景と結末をヤクザのロジックで解き明かしてみたい。

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私は常々アメリカを「巨大暴力団」だと考えている。根拠は強烈な自己体験があるからだ。

それは石油をめぐる取引に関連したものだった。03年ごろ、中国が石油の備蓄量を大量に増やしていくのに合わせて、04年ごろから日本の経済ヤクザが石油を求めてドバイに集まっていた。しかしその多くは中国への買い手側だったため、私は売り手側に立つことにした。

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売っている油を買う仲介業より、安い石油を仕入れて高く売る方が儲かるに決まっているということで、私は紛争地からオイルを買うことを選び、成功したのだった。

この時にわかったことは、石油がほぼ「ドル」でしか決算できないということだった。どれほど中東が英米を憎んでも、契約書は英米法に基づいて作成され英語で書かれている。ドルが国債基軸通貨となったのは、1944年のブレトンウッズ協議以来で、当時アメリカに世界の金地金の3分の2が集まっていたことがその理由だ。

しかし、72年のニクソン・ショック後もなおドルが基軸通貨であり続ける理由は、武力によるところが大きい。いつ潰れるかわからない国の通貨より、絶対に潰れない通貨の方が安全であることは自明の理だろう。不沈国家を担保しているのは米軍という世界最強の暴力である。

単身石油ビジネスに参入した私の元にはやがて、「取引先を紹介して欲しい」「そちらの口座にお金を入れるので石油を分配して欲しい」などの人的繋がりができるようになっていった。

そのうち私の口座があるイギリスの銀行から「当行では個人口座の規模を超えている」という連絡が入るほどの成功だった。そこで私は知人の紹介で、オフショアであるバハマのバンク・アルタクア銀行に口座を移すことにした。

知らずに触った石油取引が莫大な利益を生み、250億円ほどに膨らんでしまった。ところが、だ。突如バンク・アルタクアはアメリカによって制裁対象にされ、銀行ごと没収されたのである。

当時私は現役の暴力団員だったが、石油のビジネスはすべて合法だった。後でわかったのだが、私を経由した資金の一部がアルカイーダの関係者のもので、バンク・アルタクアには多額のテロ資金が流れていたとのことだった。

私が貯めこんだ金もすべてもっていかれてしまった。黙って監視をして、ある程度膨らんだら根こそぎ収奪する――アメリカは暴力団そのものであると実感したのはその時だった。

この一件以来、私に対する監視が強まり、イギリスではパレルモ条約で拘束されることにまでなったのである。

石油はドルが支配する戦略物資で、個人が触れるべからざるものであることを痛感し、二度と石油に関わらないようにしたのだった。もし石油を触りたいのであれば、アメリカの勢力圏に事務所を構え、アメリカにきちんと税金を支払うべきなのだ……。

さて、ではなぜ北朝鮮はアメリカを挑発するかのようにミサイル発射実験を行うのか。アメリカが「巨大暴力団」であるという前提に立ち、これを解説しよう。

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