フェミニズムは私の「性欲」を肯定してくれた、ある漫画家の経験

フェミは「ポルノ」を憎んでいるのか?

フェミニズムに救われた——そうした経験を持つ女性は少なくないだろう。新著『ヒヤマケンタロウの妊娠 育児編』を上梓した漫画家の坂井恵理さんが自身の経験を振り返る。

初めて痴漢に遭った時のこと

中学生の頃、初めて痴漢に遭った。放課後、ひとりで犬の散歩中、車が入れない細い路地で、自転車に乗った男から追い越しざまにやられた。私はそれまで、痴漢という存在は知っていたが、おしりをちょっとなでるくらいなのだろうと思っていた。しかしそうではなかった。もっと奥の方へ手を突っ込んできたのだ。

私は瞬時に痴漢の目的を理解し、触られたことに怒り、痴漢の着ていたトレーナーを力いっぱいつかんだ。ビリっと、トレーナーが破れる音がした。痴漢は私に向かって「バーカ!」と叫んで、自転車で逃げて行った。高校生くらいの男だった。

体を触られたこと、私は悪くないのに「バカ」と言われたことがショックで悔しかった。その夜、風呂の中で一人で泣いた。

〔PHOTO〕iStock

次の日、母親に「犬の散歩に行きたくない」と申し出た。母は散歩を代わってくれたが、後日、親戚の前で「恵理ったら痴漢に遭うから犬の散歩に行かないなんて言うのよ」と、笑い話にした。

父親は、子どもが殺されるような事件があると「お父さんは恵理に何かあったら絶対犯人を殺す」と言うような人だった。

しかし父は別の日、自分には裁判傍聴が趣味の友人がいて、レイプ裁判が一番面白いらしい、どんな風に襲われたか詳細に語られるからなのだと、娘の私に向かって笑いながら話すのだった。父も、私が痴漢に遭ったことは母から聞いていたはずだが、犯人を探し出して殺してはくれなかった。

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中学生の私には、これらの出来事についてのモヤモヤとした感情がなんなのか、説明できる言葉がなかった。

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