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関東地方の電気事業を一手に担ってきた、東京電力の帝国が瓦解しつつある。
5月20日、東電は東日本大震災の被害を受け、'11年3月期連結決算で純損益が約1兆2000億円超の大幅赤字となったことを発表した。1基1000億円以上とされる福島第一原発1~4号機の廃炉コストや、事故収束へ向けた対策費用を特別損失として計上したためだ。
瀕死の東電が今最も恐れているのは、「兆単位に上ることは必至」(経済誌記者)とされる賠償金だ。第一原発の事故が一向に収束の気配を見せない中、最終的な賠償額は4兆~5兆円、場合によっては10兆円規模になると見られている。
それを受けて東電は原発被害者への賠償のため、関連会社や社員向けの保養所、保有株式の売却などで6000億円を捻出することを発表、リストラ計画を策定中だ。まずは会長、社長、副社長が100%、常務取締役が60%、執行役員が40%、管理職が25%、一般職が20%、給与を減額することを決定した。
「'11年3月期の連結決算によれば、東電の総資産は約14兆8000億円です。総資産には関連会社の株式や不動産なども含まれますが、固定資産の中で大きいのは送電設備(2兆923億円)、変電設備(8288億円)、配電設備(2兆1540億円)で、合計約5兆円になります。まだ確定的な賠償額は計算できませんが、これらの資産を売り払っても東電単独で賠償額を賄うのは不可能でしょう」(帝国データバンク情報部情報取材課課長・仲野実氏)
それでも電気事業に君臨してきた〝東電帝国〟は、169社の子会社と89社の関連会社を抱え、約14兆8000億円の総資産を持つ。「何があっても潰れない超優良企業」という強みを活かし、本業とは関係のない業種に業務を拡大し、それにまつわる箱物を多数建設してきたのだから、6000億円の資産売却では生ぬるいことは言を俟たない。血税投入というツケを国民に回させないために、改めて東電帝国の資産を詳らかにしよう。