コラム

Googleと中国政府との検索結果検閲問題、一体何がどうなって香港へ移動することになったのかまとめ


Googleが中国での検閲を回避するために香港へ移動、Google.cnはGoogle.com.hkにリダイレクトされることになりました。検索結果は無検閲となり、中国政府に都合の悪い情報もバシバシ検索結果に表示されるという状態です。日本のGoogleからもお知らせが出ています。

これはGoogleと中国政府との交渉が決裂した結果であり、Googleは自社のサービスのどれに現在中国からアクセス可能であるかを示すページを作成して公開し始め、あからさまに中国政府へのけん制を強めています。

というわけで、一体どういう経緯でこのようなことになったのかというのを順にまとめてみました。2010年1月12日に行われた中国政府からGoogleへの「Aurora」攻撃が発端となっています。詳細は以下から。
■Google、中国政府から攻撃を受ける


Googleは2010年1月12日に自身のブログで、Googleを含め20以上の米国企業が中国からのサイバー攻撃を受け、Googleからの逆探知によって証拠が示唆されたところによると、それらの攻撃は多数の人権活動家のアカウントを乗っ取ろうとするもので、Gmailのアカウントも攻撃を受けたことを暴露しました。

攻撃を受けた企業の中にはPhotoshopやFlashで有名なAdobe、ノートンアンチウイルスなどで有名なシマンテックなどが含まれており、iDefenseによると「Adobe Reader」「Acrobat」の未知の脆弱性を利用したマルウェアを各企業に送りつけ、各社のソースコードを吸い上げて盗んだとのこと。また、アンチウイルスソフトで有名なマカフィー社によると、この一連の攻撃は「Aurora」として知られている攻撃コードで、IEの未知の脆弱性も利用されたとのこと。また、インテルも同じようにして攻撃された可能性があります。

マルウェアを送りつける手口としては、「彼らはソーシャル・ネットワークを利用して、標的企業の特定の社員について調査したうえで、彼らのフレンドとしてメールやチャット・メッセージを送るという手口を使っている」とされており、非常に長い時間をかけて個別のターゲットごとに攻撃手段が変えてあるそうです。


さらに、SSLサーバ証明書などで有名なVeriSignが明らかにしたところによると、この攻撃は中国政府によって行われたものであり、「攻撃に使用されたソース IP アドレスとドロップ サーバーはどちらも、中国政府の工作員、またはその代理人で構成される外国の組織のものと一致している」とのこと。これは上海交通大と山東省にある職業訓練学校のことで、人民解放軍の支援を得て設立され、軍にコンピューター技術者を輩出しているとのことで、中国人民解放軍と関係が深いとされています。当然、中国政府はこのことを否定、「1月12日のGoogleの声明は事実無根であり、断固として否定する」と主張しました。

■Google、中国政府に反撃を開始


これにより、これまで中国政府による検閲を受け入れ、中国政府に都合の悪い検索結果を表示しないようにしていたGoogleが反旗を翻し、検閲をやめてありのままの検索結果を表示し始めました。もちろん中国政府は即座に中国国内からのGoogleへのアクセスを遮断、Googleと中国政府は水面下での交渉に入り、Googleはアメリカ政府にも協力を求め、ヒラリー・クリントン米国務長官が中国政府に説明を求め、さらに世界貿易機関(WTO)に提訴する動きも見せるなど、次第に問題は複雑化していました。

3月2日にはアメリカ上院司法委員会の小委員会が開いた公聴会にてGoolge副社長で法務担当のニコル・ウォン氏が「中国で検索結果に対する検閲をしないという決断は確固としたものだ」と述べ、

さらに日本時間の3月13日、Googleは中国から99.9%の確率で撤退する可能性が高いと報じられ、Yahoo!もGoogleを支持、翌日の3月14日に中国の温家宝首相が全国人民代表大会(全人代、要するに国会)閉幕後の記者会見にて「中国は外国企業に門戸を開いており、政府は国内の企業に対するのと同じ対応をしている」と述べました。また、これに追随するように、Googleの広告パートナー企業ら27社はGoogleが撤退する場合に補償を求める書簡を送付したそうですが、これはニセモノだそうです。加えて、3月16日には中国商務省の姚堅報道官が「中国進出に当たって順守すると同意した中国の法律を引き続き守るべきだと強調」しています。

■Google、ついに中国を見放す


そして本日、香港のサーバにて運営が開始されたわけですが、Googleの関係者によると、「現地社員が中国当局からの報復を受けないよう、時間をかけて段階的に撤退を進める見込み」とのことなので、これは事実上の撤退と見なして良さそうです。また、Googleが持っている中国のネットサービス提供業者向け免許は2010年3月中にも期限が切れると見られています。

そのため、既に中国の広告主らは百度(バイドゥ)などライバル企業に契約を移すよう助言を受けているそうです。

この香港へのサーバ移転と検閲中止を受けて中国国営新華社通信によると「グーグルが「約束を破って」おり、検索を停止するのは完全に間違っている」と主張しており、さらに一悶着起きそうです。

なお、今回のGoogleの行動は検閲だけが問題ではなく、どちらかというと「中国で商売しても政府が邪魔するので儲からない」と判断した結果だと考えた方がわかりやすく、下記ページでは以下のように指摘されています。

中国のおぞましい真相を明らかにする Google - japan.internet.com Webビジネス

もし中国が外国企業に対して自国民の人権侵害への協力を強制しているだけならば話は大きく違っていただろう。これらの企業は株主にとっての価値を最大限に高めるために存在しているのであって、独裁主義から世界を救うために存在しているのではない。しかし、中国政府は抑圧に加え、その権力を悪用して中国企業に利益をもたらし、外国企業を不利な立場に置いている。

つまり、諸外国は自国の倫理を売り渡して中国でビジネスを展開しているのに、中国共産党は同時に彼らが中国で成功を収めることを阻止しているのだ。欧州連合商業会議所の中国事務局は先ごろ、政府が保護貿易主義政策と、外国企業を犠牲にして中国企業を優位に立たせる法体制と知的財産権の選択的保護を採用していることから中国でのビジネス展開が徐々に難しくなりつつある、とする方針説明書を出した。

つまり、Googleにとって今後のことを考えると、中国は確かに巨大で魅力的な市場だが、だからと言って中国に軸足を置いているよりは、そのリソースを別のことに振り分けた方が得策だと判断したようです。また、中国という物理的な場所からは撤退しても、中国向けのサービスを完全停止するとは考えにくく、何らかの形で中国の外から中国向けのサービスを継続的に提供できる技術や体制が確立したのかもしれません。

いずれにせよ、今後のGoogleと中国の行方はGoogle自身の行き先を予想する上でも要注目です。

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