メモ

パナソニックが開発する高精度なグローバル気象予測プラットフォーム「Panasonic Global 4D Weather」とは?


寒波・熱波の到来や干ばつ・豪雨の発生、そして台風の襲撃など、人々や環境に大きな影響を与える気象イベントの予測には古くからさまざまな研究資源が投じられてきました。地球規模の天候の変化を予測する「グローバル(全球)天候予測」の技術はこれまでアメリカとヨーロッパの予測システムによってリードされてきたのですが、それらを上回る予測性能を持つとも言われているPanasonicによる予測プラットフォーム「Panasonic Global 4D Weather」が実用の段階に入っています。

Fine-tuning weather forecasts: Panasonic shows off new technology - News - NorthJersey.com
http://www.northjersey.com/news/fine-tuning-weather-forecasts-panasonic-shows-off-new-technology-1.1535111

TV maker Panasonic says it has developed the world’s best weather model | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/04/tv-maker-panasonic-says-it-has-developed-the-worlds-best-weather-model/

地球規模での天候の変化を予測するためには非常に高性能なスーパーコンピューターが必要になることもあり、実際の予測はアメリカで開発されたGFS (Global Forecast System)と、ヨーロッパのECMWF (European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ヨーロッパ中期予報センター)の2つの勢力に支配される状態が長く続いています。

GFSとECMWFは予測の精度で比較されることも多く、一般的にECMWFのほうがGFSよりも精度は高いとされています。また、これら2つの国家レベルの予測プラットフォーム以外にも、民間の気象予報会社などが独自の予測を行うこともありますが、参照する気象データなどは基本的に上記の2つの機関によってもたらされたものであり、その実はデータの見直しと言っても過言ではないという状況であるとのこと。


そのような状況に登場し、徐々に存在感を強めているのが、Panasonicのアメリカ法人であるPanasonic Weather Solutions (PWS)が研究開発を進めている新プラットフォーム「Panasonic Global 4D Weather」です。PWSは2016年3月末に、同社のプラットフォームの詳細を発表する記者会見を開催し、同システムの優位性を公表しました。

Panasonic Weather Solutions Introduces Panasonic Global 4D Weather –The World’s Most Advanced Global Weather Forecasting Platform
http://www.panasonic.aero/News/Articles/PanasonicWeatherSolutionsIntroducesPanasonicG.aspx

PWSによると、同社の予測システムは既存の2つのプラットフォームを上回る予測性能を備えているとのこと。気象の予測精度はいくつかの測定方法によって測ることが可能ですが、その一つに「偏差相関 (anomaly correlation)」の値を比較するというものがあります。これは、予測された気象と実際の気象との相関を示す数値なのですが、数値が大きいほど正確であることが示されます。この数値で見ると、GFSが0.908、ECMWFが0.923となっているところ、PWSの4D Weatherは0.926と、ECMWFを上回るトップの精度を実現していることが明らかにされています。

◆独自の観測態勢
全球規模の気象モデリングでは、スーパーコンピューターを使って膨大な量の計算処理を行うことが必要になりますが、そのためには実際の現場で測定された気象観測データが欠かせません。データの測定には各地の気象台などのデータを始め、ラジオゾンデを使った高層気象観測などが行われており、GFSやECMFSはもちろんこれらのデータを用いているわけですが、Panasonic Global 4D Weatherではこれらの情報に加え、独自に取得したデータを用いることで精度の高い予測を可能にしたと言います。

それを可能にするのが、航空機に搭載された「TAMDARセンサー」です。このセンサーは飛行機の機体側面に取り付けられたセンサーで気流や気温、湿度、気圧などを飛行中に測定して保存しておき、着陸後にデータを回収することでほぼリアルタイムの情報を手に入れることを可能にします。これは、従来のラジオゾンデが1日2回の観測にとどまっていたことを考えると非常に大きなアドバンテージと言うことができます。


このTAMDARは1990年代にアメリカ政府主導のもとで飛行機に搭載されるようになったシステムで、当初は機体への氷の付着を防止するためのシステムだったとのこと。TAMDARセンサーはAirDat社によって主に国内線の機体に取り付けられて運用が行われてきたのですが、Panasonicの子会社である「Panasonic Avionics」が2013年にAirDatを買収したことから、気象予測に用いられるようになってきたとのこと。

TAMDARセンサーの大きさはこのぐらい。主に、国内線で用いられる小型機に装着されて気象データを取得しているとのこと。


旅客機のほか、UAV(無人飛行機:ドローン)に搭載されることもある様子。


その精度の高さが如実に表れたのが、2015年に大西洋で発生したハリケーン「ホアキン」の進路予想だったとのこと。アメリカ本土への上陸も予測されたホアキンでしたが、実際には以下の黒線が示すように、カリブ諸島をかすめたまま上陸しませんでした。これに対し、アメリカのGFSは本土上陸を予測していたのに対し、ECMWFとPWSの4D Weatherは上陸しないという予測を立てていたとのこと。


現在のところ、PWSでは企業などに向けて気象データの提供を行っており、具体的な企業名は公表できないとしています。提供先には天候の影響を大きく受ける先物関連企業などが含まれているようですが、一般向け気象予報にはまだ活用されていないとのことです。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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