NASAのアポロ計画で行われた「月面の小さな重力でも人は歩けるか」というシミュレーション映像
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月の表面の重力は地球の約6分の1しかないため、人が地球上と同じように歩くことは困難です。人類を月へ送り込むことを目指していた1960年代のNASAでは、実際に人が月についてしまう前に月と同じ重力環境を再現すべく、床を80度傾けることで重力の影響を6分の1にするというシミュレーション実験を行っており、その当時の様子を記録した映像がYouTubeで公開されています。
Lunar Gravity Simulation Techniques 1963 NASA Langley Research Center; Project Apollo - YouTube
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このフィルムは、「月面環境における人の自力運動に関する研究のための重力シミュレーション技術の評価」という内容。2名の研究員、ドナルド・ヒュースさんとエイモス・A・スパディ・ジュニアさんの2人によって行われた実験の様子が収められています。
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実験施設には床面を80度の角度に起こした板と、天井からつり下げられたワイヤーなどが用意されています。
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まずは上半身に装具を装着し……
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クルッと体を横向けにします。ワイヤーの先には乗馬用の「鞍(くら)」のような装具が2つ取り付けられ、上半身を2カ所で保持。その他にも、両ひざと両足の靴の部分、両手、そして頭部のヘルメットにワイヤーがつながれ、人の体は80度傾けられた状態でぶら下げられています。
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準備が整い、ゆっくりと歩き出す研究員。画面では横向きになっていますが、ふわりと上下に揺られながら歩く様子や、そのゆっくりとした動きは、アポロの宇宙飛行士が月面歩行を行った時の様子と酷似しています。
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ムービーでは、通常の地球の環境下と月面シミュレーション環境下でさまざまな動作をやってみるとどうなるのか、実際に比較した様子が収められています。
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まずはゆっくりと歩く様子を前から収めたアングル。
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画面は2分割されており、向かって左が地球環境下、右が月面シミュレーション環境下の様子で、月面の画面は80度起こして直立に近い状態にされています。左側の人が「普通に」スタスタと歩くのに対し、右側の人はやけにのっそりとした動きになっています。
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後ろ向きに後退する時も、月面シミュレーション環境の人は動きが遅くなっています。
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同じ様子を今度は横から見てみると……
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左の人はごく普通に歩いているだけなのに対し、右の人は強い風にでも向かって歩いているように、体を前傾させていることがわかります。
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後ろ向きに歩く時にも同様で、月面シミュレーション環境下の人は、綱引きでもしているように体全体を後掲させて後ろ向きに進んでいます。この角度は、地球上で再現すると間違いなくぶっ倒れてしまうレベル。
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この違いには、「重力」、つまり体の下向きにかかる力の強さが大きく関わっています。私たちが普段歩く時は何も考えなくても体が勝手に前に進み始めますが、実はこの時、人間は無意識に体をほんの少し前に傾けています。そうすることで体には前に倒れようとする力が生まれるのですが、これまた無意識に片方の足を出すことで、体を支えると同時に体を前に動かします。この動作を連続的に行うことで、人間は前へと推進する力を生みだし、二本脚で前に歩くことができます。
しかし重力の弱い月面では、体を少し前に傾けたぐらいでは前向きの力は生まれません。そのため、月面で歩くためには地球の時よりも体を大きく傾けることで、十分な前向きの力を作り出す必要があるというわけです。
普通のスピードで歩いた時は……
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やはり右の人の体は大きく前へと傾いています。
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さらに、速いペースで歩くためにはこのぐらい体を前に倒す必要あり。しかし実際には、歩く速度はごくゆっくりとしたものとなっています。
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次は、全力でジャンプしてみた様子。
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両者ともにしゃがみ込んで力をため……
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大きくジャンプ。地球の重力環境では30cm程度の高さにまでしか達していませんが、右の月面シミュレーション環境下の人はものすごい高さまで飛び上がってしまいました。
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そして着地の時もフワリと舞い降りて、足で衝撃を吸収して着地。
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横から見ると、月面環境の人は自分の身長を軽く超える高さにまで到達。その様子は超人か、はたまたスーパーマリオかといったところ。
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ハシゴを普通の速さで上ってみると……
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これはあまり違いなし。
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次に速いペースで上がってみると……
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明らかに右側の人が楽にハシゴを駆け上がっています。その様子は「上る」というより、「飛びつく」というぐらいの感覚になっていることが見てとれます。
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垂直に立てられたポールをよじ登ってみると、左の人は両手と両足で体を支えながら上っているのに対し、右の人はなんと両手だけでスイスイと体を持ち上げています。
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次は地球ではあり得ない「片手でポールを上る」という実験。地球の環境下ではとても無理な試みなので、画面は最初からブラックアウト。
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しかし月面の重力環境では、実に事もなげにスルスルとポールを上ってしまいました。
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ジャンプしてポールにしがみつく実験では、いとも簡単にポールのてっぺんまで到達するという超人っぷりを披露しています。
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この他にも「階段を上る実験」や「ジャンプして段を上る」などの実験が行われているのですが、見どころは最後に登場するアクロバティックな動きをやってみた様子。重力の影響をほぼ受けなくなったことで、地球ではあり得ない動きを繰り広げています。
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一番最後に「バック宙」からクルリと回転して立ち上がる様子は必見。これぞ「月面宙返り」あるいは「ムーンサルト」というアクロバティックな動きが地球上で再現されています。
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このムービーを公開しているYouTubeチャンネルでは、歩く実験以外にも「月面着陸船が着地するシミュレーション」や「ロケットエンジンの燃焼実験エンジン」など、アポロ計画に関する数々の実験映像が公開されています。
Apollo Spacecraft & Lunar Exploration Testing NASA - YouTube - YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PL7DDA54A0628C6392
興味深いのは1961年に撮影されたこの映像。宇宙飛行士が地球に帰還するための方法をいくつかテストしているのですが、アポロ計画の頃に使われていた円すい形のカプセルのほかに、飛行機型の「スペースシャトル」のような機体が既に考案されてテストまで行われていたことがわかります。
Spacecraft Landings: "Landing of Manned Reentry Vehicles" 1961 NASA Langley Research Center - YouTube
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