理系なおねえさんはアリですか?―内田麻理香が聞いた理系な女性の理系な人生―

第1回じめまして、理系なおねえさんです。

はじめまして、理系なおねえさんです。

はじめまして。内田麻理香と申します。東京大学の工学部の広報担当の研究員であり、サイエンスコミュニケーターなる仕事をし、そして東京大学大学院の博士課程の学生です。……なーんて、これを読んで「こいつはいったい何をしているのだ?」意味不明になっている方もいるかもしれません。実際、私も混乱した慌ただしい毎日を送っています。

この節操のない活動ですが、自分の中では一応筋が通っているつもり、です。

まず、大学工学部の広報担当としては「世の中の人には見えにくい」工学部の研究内容を、なるべくわかりやすい形で伝えることを目標にしています。そして、聞き慣れない「サイエンスコミュニケーター」という役割では「科学や技術」「社会」の架け橋になりたいと思い、活動しています。活字での仕事を中心とし、他には講演やTVを通して科学技術のことをお伝えしています。

私の人生を狂わせたガンダム

もともと、私は科学技術の大ファンで、小さい頃は図鑑を熟読しながら自己流の科学実験をしたり(ときには、ケガをしたり、火事未遂になったことも⁠⁠、SFのテレビ番組やアニメに夢中になる、というような小学生でした。そして、中学生の頃「機動戦士ガンダム」を見て「私は将来、スペースコロニーを作る人になる」と決心したのです。ああ、私の人生を狂わせたガンダム……。

物心ついた頃には既にサイエンスに興味津々だったとはいえ、本当は理系科目が得意ではありませんでした。単に「理系学部に進学したら、スペースコロニーを作る夢が叶うかも」という呆れるほど単純な理由で、東京大学理科一類に入学。そしてなぜ東大か? というわけですが「あんな大きなものを作るには、国の機関に入らないとダメよね。そして、国の機関に入るんだったら、東大がいいよね」と考えたからです。これまた呆れるほど短絡的な思考です。

計画通りにいかない人生、気付いたら…

でも、人生は計画通りにはいきません。東京大学工学部に入ったあと、修士課程・博士課程と進みました。博士課程に入った直後に結婚したのですが、遠距離・別居婚という状況の中、自分は研究者に向いているのだろうか? と悩むようになり、結局大学院を中退しました。

理系は好きだけど、向いていないことに気がついた私は「文系と理系の中間」に立てるような仕事を探しました。一時期は、弁理士になろうとも思ったのですが、こちらも出産の関係で断念。いや本当に、人生は計画通りにはいきません。

その後、エネルギーを持てあまして、子どもの写真を掲載した身内向けのWebサイトを作ったのですが、意外なまでにそれが面白くなりました。そこで、苦手な家事と好きな科学を組み合わせて何かできないか? と考え「カソウケン(家庭科学総合研究所⁠⁠」というWebサイトを立ち上げました。主婦生活の中で「科学は身近なところに転がっている」ということに気がついたので、それがテーマ。家庭生活の「なぜ?」を科学と結びつけたことを書いたものを、掲載しました。

このWebサイトがきっかけで、書籍を出版。サイエンスコミュニケーターとして活動を始めました。そして、2007年からは母校に戻って広報担当として勤務するようになりました。さらに2009年からは「今の自分の活動―社会と科学の関わり―について、もっと知りたい、研究してみたい」と思うようになり、大学院の博士課程に入学し、社会人学生になったわけです。

「理系なおねえさん」のイメージ、変えます

くどくどとした自己紹介が長くなりました。私は、一応は理系出身ですが、紆余曲折を経て、結局は「理系と文系」の間の仕事で食べています。途中では「本当に、理系に進学して良かったのだろうか?」という迷いもありました。でも、今では「理系で良かった」と確信しています。

さて、この企画のタイトルにもある「理系なおねえさん⁠⁠。皆さま、理系女子というとどのようなイメージを思い浮かべますか? 化粧っ気がない? クール? 理屈っぽい? どんな言葉にも、特定のステレオタイプがついて回るとは思うのですが、どうやら理系女子も特定のイメージが付着しているのではないでしょうか。

そして個人的に「寂しい」と思うのは「科学や理科が好きなんだけど、進学は文系に」と考えてしまう女子が少なくない、ということ。理系を選ぶと、将来の選択肢が狭まって見えてしまうようです。さらに「理系に行くと、娘の将来にとってよろしくないから、文系進学を勧める、という親御さんも多いとのこと。

ステレオタイプになった理系女子でネタにして遊ぶのは、それほど悪くないかもしれません。ただ、その「就職先がない」⁠研究者や技術者に以外に道がない」⁠恋愛・結婚しにくい」というステレオタイプ(あるんです、本当に!)によって、本来「理科や科学が好き」という人の進路に影響を与えてしまうのは、非常にもったいないと思うのです。

理系女子のダイバーシティ(多様性)を伝える

そこで、私は理系女子のダイバーシティ(多様性)をお伝えしたい、と考えました。本企画でご紹介する理系女子の皆さんは、それぞれ、枠にはまった生き方をしていません。⁠こんな生き方もアリなのか」と驚くことかと思います。そんな一筋縄ではいかない「理系なおねえさん」をご紹介していきます。

この「理系なおねえさん」カタログを見ているうちに、あなたの中の理系女子のイメージが変わるはず、です。若い人は憧れのおねえさんが見つかる……かも?

この企画を、

  • 「理系女子」候補の皆さま
  • 「理系女子」候補の親御さん
  • 既に「理系女子」の皆さま
  • 「理系女子」萌えの皆さま
  • 「理系女子」がいまいち苦手で、遠巻きに見ている皆さま

に楽しんでいただけたらな、と願っています。

では、次回からスタートです!

(イラスト 高世えり子)

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