第6回:マーケティングCMSの3つのフェーズとCMO

田中猪夫(FatWire)2009年07月17日 10時00分

 ケースAからケースCまでの実証実験を行い、残るはケースD(※)のみとなったが、世界中のウェブサイトに精通したある欧米人によると、検索キーワードが多言語なグローバル・ペルソナドアページ(ランディングページ)という発想は世界的に見てあまり例がないようである。つまり、ケースDは連載の『第2回:マーケティングの「目的・手段」と「ペルソナ」』の「少数モデル法」でも解説した新商品・新サービスというわけだ。

※ケースDとは、ケースCのペルソナドアページを多言語化したグローバル・ペルソナドアページのこと。

 まだ実証実験を行っていないケースDを含めて、連載の『第3回:「5つのペルソナ+1」を選択』で解説したペルソナ1〜5までを図1にまとめた。

図1:マーケティングCMSの3つのフェーズと破壊的イノベーション
※クリックすると拡大画像が見られます

 縦軸は「インフラ・プロジェクトの複雑性」、横軸は「IT投資額」とすると、縦軸の複雑性の大きさによりフェーズを3つ(広報CMSはフェーズ0)に分けた。マーケティングCMSはインフラ・プロジェクトの複雑性やプロジェクトリスクが広報CMSよりも高い。広報CMSの構築可能な会社でもマーケッティングCMSは技術的にも構築できない、ということもあり得る。各フェーズでの注意点は、以下のとおりだ。

  • フェーズ1の注意点:商品のコンテンツをマルチリンガル(多言語)で格納する基盤がない場合は「商品×言語数×ページ数×キーワード数」と複雑なサイトとなり管理コストがアップする。マルチリンガルな商品情報データベースが発展性、マーケティングへの活用度合いの核となる。
  • フェーズ2の注意点:サイト訪問者のプロファイル(他システム連携)からのレコメンテーションを「Explicit(明示的な)レコメンテーション」、プロファイルがなく、サイトの訪問履歴や滞留時間などで行うレコメンテーションを「Implicit(暗示的な)レコメンテーション」という。ウェブコンサルタントはプロファイルが格納されているシステムとの連携技術を理解し、ニーズに合わせてこれらを混同することなく、あるときは区別し、あるときは組み合わせてユーザーを導く能力が必要だ。
  • フェーズ3の注意点:CMSをSOAのひとつのサービスとして考え、SSO(シングルサインオン)から必要な情報をレガシーシステムやオープンシステムにアクセスし、フロントはCMSでコンテンツを管理し、閲覧者にコンテンツから基幹などの必要な情報のすべてをパーソナライズして配信する。インフラ・プロジェクトの複雑性は高く、プロジェクトマネジメント力が必要になる。

 図1に破壊的イノベーションとして「OpenID、ガジェット、UGC(※)」を挙げているが、例えば基幹連携をガジェットで行い、パーソナライズされた自分のサイトに配信されれば、基幹連携の手段がシステム的に分離でき複雑性は低くなる。このことは基幹連携のIT投資額がフェーズ3ほど高くなく実現できる可能性も秘めている。

※UGC(User-Generated Content)とは、ブログ、SNS、Wikiなどに書き込まれたユーザー作成のコンテンツ(画像、動画、音声など)のこと。

「OpenID、ガジェット、UGC」はマーケティングCMSとして必須の機能で、FatWireは2009年5月にロードマップで対応を示した。

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