コラム:自動車業界、グーグルに席巻される運命か

Liam Proud
[ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日仏大手自動車連合が、アルファベット傘下の巨大IT企業であるグーグルと手を組む。これはドライバーをより幸せにしてくれるはずだ。しかしグーグルが自動車向けソフトウエアに進出する姿は、同社がスマートフォン市場で大成功を収めた構図と気味が悪いほど似通っている。
ルノーと日産自動車<7201.T>、三菱自動車<8058.T>の連合は18日、車両搭載用基本ソフト(OS)としてグーグルのスマホ向けOS「アンドロイド」を2021年から採用すると発表した。各社は現在、オープンソース方式の「Linux」のソフトウエアを含めて寄せ集め的な技術を使っている。この提携に関する金銭的な条件は明らかになっていない。ただグーグルが、ソフトウエアを提供する代わりに、ユーザーのデータ獲得と各種アプリを予めインストールすることを要求するというスマホの世界で駆使したやり方を踏襲する事態が想定される。
グーグルとの提携は、ドライバーにとっては色々と楽ができるようになる。今の車は、ダッシュボードの下のスクリーンには「インフォテインメント(情報と娯楽の融合)」システムが搭載され、ナビゲーション支援や音楽再生などの機能を果たすが、そうしたソフトウエアは、消費者がハンドセットに基づいて対面するインターフェースに比べて不格好になりやすい。
重要なのは、自動車メーカーのシステムは「グーグルプレイ」のようなアプリストアを持たないことが多い点だ。アンドロイドの採用によって、自動車はアプリ開発者にとって新製品を生み出す意欲が高まる分野となる。例えば駐車スペースを探したり、チケット料金を支払うアプリが登場するかもしれない。ライバルのプジョーやトヨタ自動車<7203.T>も追随する以外選択肢がなくなるのではないか。
短期的に見れば、自動車メーカーが失うものは乏しい。グーグルは主に広告事業を展開しているので、ユーザーの位置などに基づいた製品販売をできるようにするデータに一番関心を寄せるはずだ。メーカー側は、新たなサービスをドライバーに提供するための自動車の走行に関する情報は引き続き管理できるだろう。
それでもドライバーが車内でグーグルのアプリを利用するのに慣れてくるとともに、メーカーはどの方面にも事業を展開するのが難しくなる。この状況はまさに今、スマホメーカーが陥っている苦境だ。スタティスタのデータによると、アンドロイドは実にスマホの88%にインストールされている。グーグルはいずれ、自動車メーカーが大事にしまっているデータの提供を求め、傘下の自動運転部門ウェイモに役立てるとみられる。
9月18日、日仏大手自動車連合が、アルファベット傘下の巨大IT企業であるグーグルと手を組む。北京で2018年8月撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)
もっともグーグルの影響力がそこまで広がれば、独占禁止当局の注目を集めるだろう。親会社のアルファベットは最近、スマホ市場で優越的な地位を乱用したとされ、欧州連合(EU)欧州委員会から43億ユーロの支払いを命じられている。
自動車メーカーは今後、グーグルが市場でより影響力を強めることを警戒するとしても、連携する以外に選べる道は乏しいだろう。
●背景となるニュース
*日産、ルノー、三菱自動車の連合は18日、車両搭載OSとして2021年からグーグルの「アンドロイド」を採用すると発表した。
*各社の車は、地図アプリ「グーグルマップ」やAI(人工知能)を用いて会話形式で検索などができる「グーグルアシスタント」が予めインストールされる。
*この提携の金銭的な条件は明らかにされていない。最初に報じた米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルはアプリによって生み出されたデータを利用するという。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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