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生成AI時代、デザイナーは何者になれるのか?個人開発に挑んだ話

生成AIを活用して、デザイナーはどこまで個人開発できるのか。
2024年に半年かけて開発した結果を振り返りつつ、2025年の生成AI環境で個人開発することについて考えていく。



2024年、生成AIで個人開発に挑んだ話

なぜ作ったのか?

開発したのは AI子育て相談サービス「このて」
👉 https://www.co-note.com/
※MVPですのでデータ消えてもご了承を。


きっかけは、自分自身が一児の親になって子育てに悩んだこと。

子育ての悩みは人それぞれに深刻であり、背景が違えば友人に相談しても共感を得づらい。親族の価値観が同じとは限らない。SNSは炎上リスクがあり、専門家相談は敷居が高い。それに既存のママ向けサービスにパパは入りづらかった。

そこで、生成AIを活用して手軽な子育て相談の場を作ることに。

増加する共働き世帯、見直されるウェルビーイング、子供と過ごす時間はさらに貴重。親の「敏感期」として子供の変化に気づく力、自分の悩みに気づく力が重要だと考えた。AIなら気軽に相談でき、モンテッソーリのアドバイスもできる。対話を通して学びを得られる。


簡易的なデスクトップリサーチやコンセプトを策定したり
ロゴやカラーの展開を作って、完全に楽しんでいる


どう開発したのか?

2024年2月から8月までの半年間、個人開発を行った。当時の技術構成は次の通り。

  • AIツール:ChatGPT、Cursor ※Copilot使ってたが辞めた

  • API:OpenAI gpt-3.5-turbo ※開発後にGPT-4oが登場して仰天する

  • バックエンド:Supabase、Prisma ORM

  • フロントエンド:Next.js、Shadcn/ui、TypeScript

  • ホスティング:Vercel

  • その他:Basedash(DB管理)、Typeform(アンケート)

ちなみに実費は2,000円程度。ドメインとOpenAIのAPIコストで半々。


どこで苦戦したのか?

  • プロンプトの壁

    • 開発観点では、当時は初手で適切なプロンプトを渡さないとAIの出力をコントロールするのが難しかった。メモリが貧弱で、コードを全部出力させるのが非現実的だったため、コードを理解して部分的にAIを利用した。

    • 提供価値の観点では、gpt-3.5-turboで生成されたもののクオリティが低く、AIに期待していたカスタマイズ性も弱かった。プロンプトをラッパーするサービスなのに、ユーザー投稿の文字数が少ないと価値を感じられないという制約が強い。開発したMVPでは最小文字数を設定するだけに留まっており、リソース集中させて体験を磨くべきだった。

  • 自分の知能の壁

    • 自分が"理解できるレベル"の技術を使うべき。後に変更したが最初はSupabaseではなくFirebaseを採用していた。NoSQLの概念を掴みきれなかったり、ベストプラクティスが世の中に流通していないように見えたり、当時のAIモデルの学習しているソースが古くて、たびたび混乱させられたためFirebaseは辞めた。

  • 事業開発の壁

    • AIモデルの進化でPSFが崩れる。自分のためにサービスを開発した直後、GPT-4oが登場して状況が一変。当時より高性能かつ低価格モデル、そしてマルチモーダル。前提条件が変わってしまった。自分にとって開発したサービスよりもGPTsの方が使いやすくなったため、PSF(Problem Solution Fit)が崩れ、自分のためではなく初心者向けというCPF(Customer Problem Fit)に変化。自身をターゲットにした個人開発の危うさ、AIモデルの進化による影響範囲に注意したい。

    • 自分自身のプロジェクトマネジメントが難しい。開発すればするほど、リソースとサービス理想像とのギャップの解像度が高まる。やることが明確になり嬉しい反面、反響を得られない状況下で続けるのは苦しさがあった。


なにが良かったか?

  • ググらずGPる(ジピる)ことで、自分の能力にレバレッジが効く感覚。

    • フロントエンドを触ったことある程度でも、AIと対話していくことでバックエンドまで実装できたこと。ただし、バックエンドの難易度が低いプロダクトに限るかもしれない。

    • AIに聞いてもデバッグしきれない問題もたくさんあったが、自分のレベルまで噛み砕いて何度でも説明してもらえるのが助かった。

    • 手でコードを書くよりも、誤字脱字が無くてコードも綺麗で、初心者には勉強になる。コードを理解できなければ質問すれば済む。

  • 手を動かす楽しさ、学びの多さ。

    • シンプルに、作るって楽しい。
      はじまりは妄想で、設計して、形を作って動かして、価値実現できることの喜び。今までは突破できなかった壁があってもAIがパートナーになってくれるから、作りたいものを作って楽しめる時代になっているし、妄想を実現して社会に影響を与えられる。

    • デザイナー兼PdMと名乗っておきながら、できてない事の多さに、自分の未熟さを知れた。できない事に向き合い挑戦し続けることで、自然に楽しみながら、驕らず謙虚で居られる自分にも嬉しく感じる。もっと挑戦し変化する30代でありたい。



2025年、デザイナーにとっての個人開発の可能性とは?

まず、2024年と比較して2025年はどう変わるのか?

  • 素人でもデザイン&開発できるようになる環境が、さらに整備される

    • Replit Agent、Bolt、Devin、Dify、Onlookなど、生成AIを活用した開発者向けツールがたくさん登場している。2024年に半年かかった開発が、2025年は1ヶ月で完了するかもしれない。

    • 例えば、BoltやReplit、Loveable、v0など、画面上でプロンプトを実行してそのままサービス公開できるサービスが既にある。OnlookであればFigmaとIDEが統合された新たな概念とも言えるので、Figma以上の変化がある。

  • 生成AIが普及するティッピング・ポイントを迎えるかも

    • ChatGPT、GeminiやCopilotが普及する年になると思っている。チャットベースで利用するのが当たり前になるとしたら、チャットベースのラッパーサービスは価値発揮しづらいかもしれない。

    • AIモデルによる性能格差によって、無料で使う人がほとんどだと思うから、「AIなんてこんなもんか」というガッカリ体験や認知が蔓延しそう。「AIだからスゴイ」みたいな差別化は難しくなり、AIが当たり前に使われる。そして使い方が上手か下手かで大きな差が生まれる。

デザイナーが個人開発するには、どんなスキルが求められるか?

  • 作りたいものを解像度高く定義して、その実現のためにコミットするだけ。デザイナーという肩書を捨てることを厭わないことが大切。デザインする物の解像度を高め続けること、コミットするルーチンを構築すること。ただそれだけ。自ずと設計力、実装力、事業構想力など繋がっていく。

  • 変化の激しい生成AIプロダクトにおけるコアバリューを見通す力があれば最強だが、多分それはできないし、誰か詳しい人に任せてキャッチアップするのが良いハズ。



まとめ

今回の個人開発を通じて、デザイナーがただ「設計する人」ではなく、「プロダクトを生み出せるクリエイター」になれることを実感した。

もちろん、AIがすべてを自動化してくれるわけではない。しかし、設計から実装までの流れを圧倒的に短縮し、プロダクト開発のハードルを大きく下げたことは間違いない。

デザイナーがアイデアを考え、そのままプロダクトを作れる時代。 2025年、生成AIを活用した開発環境がどこまで進化するのか、これからも挑戦し続けたい。


最後に

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