個人Vtuberによるグッズ制作失敗録

個人Vtuberがグッズを作る時、企画と経理と制作進行とディレクターを全部一人でやらなければならない
Vtuber活動5年の中での失敗とそこから得られた知見を少しお話しよう


ごきげんよう、吸血鬼と人間のハイブリッドレディ 九条林檎だ
今は個人でVtuberやっているんだが、個人だと何が大変って本業である自己プロデュースと企画と演者以外の経理、制作進行、ディレクター、広報、渉外(営業)なんかも自分でやらねばならないのだよな

いわば一人会社である
ファンのみながいなかったらば心折れているに違いないと何度思ったことか
その中で学んでブラッシュアップさせていくことももちろんある

第一次個人勢時代

特に活動のお金管理について最初の頃は甘いものだった
我は喋るのは得意だが計算は不得手だ、数式というものを書いていて4個目の数字辺りで1個目の数字が何を指すものだったかを忘れる
(故に確定申告周りは税理士の方に毎年お願いをしているぞ)

活動に関してもほかの多くの個人勢と同じように利益ではなく理想先行で動いているので、最初の頃はMVやmixなどの発注をする時は予算らしい予算も組まず、見積もりを出してもらったらば銀行口座とにらめっこして市場価格も汲み、主観的に許容範囲だと判断したら発注する
その後のいわゆる回収については全く考えないという実にフィーリングフルな流れだった

今もMVやmix、配信画面デザインなどについてはあまり回収は考えていないここら辺は数字に出てこない効果も大きいのでむりやり定量的目標などを設定すると本質を見失って不幸になるからな、ははは

話を戻して、そういう流れで活動していたものだから自分で作るグッズについてもほぼ計算らしい計算をしていなかったんだ

記念日に向け、作りたいグッズを考える→市場価格を汲んだ主観的な予算にてデザイナーさんに発注する→pixivFACTORYで発注→そのままBOOTHで販売

とまあこういう流れになる
pixiv様様だ、pixivFACTORYで発注してそのままBOOTHで販売すると価格も向こうが決めてくれてこちらは一個当たりの利益を上乗せする設定さえすれば良いのだ
(一応言っておくが仕様上0に設定することはできなかった、最低値というものがあるんだ)

何も考えなくて良いという点ではこれ以上に手間も時間も認知リソースもかからない方法はない
初心者には実におすすめの方法だ

だがしかし、これはこれでデメリットも大きい
基本資本社会ではこのように丸投げをすると手間賃というのが高くつく
かつ我がやっていたのは発注数などもこちらでは全く考えない受注生産方式
特にpixivFACTORYの受注生産はごく簡単なんだが、一個注文が入ったら一個作るというような感じなので無駄が多く、より高い経費に手間賃がかかる
結果利益を最低値にしても高めの販売価格になってしまうんだ

これではファンらには負担になってしまうし、利益もあまり出ないから次のグッズやMV等の制作費に充てることも難しい
しかしその頃は知見もなく、解決のための策も立てられなかったのだった

第二次個人勢時代 -第一弾グッズ-

我はとんでもないパワーアップを果たした
第一次個人勢時代の終焉とともにSonyMusicという大企業のVtuberプロジェクトに所属し、VRミュージカル制作という大プロジェクトの主宰、プロデューサーもして、所属期間中に諸事情あってずっとやってきた副業の方でもフルタイムで働くことになり……と知見量としては修行のような日々を送っていたのだ

つらいこともあるがもう以前の我ではない
いうならばバキバキの人間界社会人

なんやかんやあって事務所より独立した我は、早速独立記念グッズの制作に取り掛かった
もちろんファンらにメモリアルなグッズを持ちてこの時を楽しんでほしいというのが一番大きな目的だ
しかし以前の我だったらこの目的のみで終わり、長期的にファンらを楽しませるための計画に組み込むまで頭が回らなかったところを、
今回はきちっと自分で印刷所を決め、梱包もする想定で、予想原価からファンらにとっても可能な限り高くない範囲で販売価格を設定し、かつ赤字にはならないよう調整することで次回のグッズ代など自己投資にも充てて行けるよう計画を組んだ

実際利益をきちんと出すことができて、我が以前我自身の著作権を買い取った時の借財の返済と次回の印刷代に充てることができた
(借財の返済に関して言えば投げ銭たるBOOSTをしてくれた者らの力も多大にあるな、本当に有難く思う)


完璧だ……

…………その時書いたスプレッドシートが以後使いまわせないほどぐちゃぐちゃなことを除いて

やはりここまで自分で全部やるのは初めてで、販売価格の設定から一つ一つ手探りで始めただものだから
様々な価格などを記録したスプレッドシートはぐちゃぐちゃになった

実際のぐちゃぐちゃスプレッドシート(数字は全部消している)
なんだ「原価(デザ含)」と「総発注原価」って、一体何が違うんだ

都度都度、必要な数値の計算のために列を増設していったせいで、位置順番や用語、規則性、見えてはいないがセルの中の数式の形などがぐちゃぐちゃだ
確かに当時の単発のプロジェクトの中では確実な数値を出せたんだが、
さあ二回目をやろうとなるともうこのスプレッドシートは全く使えない

ほかにも失敗した部分沢山あり、しばらく活動時間を大きく取られてしまっていたのも含め、しっかり反省点となったな
幸いにも原因は全て分かっていたのであとは改善したプロジェクトを走らせるだけだ、またしても良い経験となった

【Tips】こまごま失敗事例

グッズを作る個人Vtuber皆様、あるいは同人グッズを作られる方々に向けて、当時我がやってしまった失敗をここに書き記す

①セットボックスの強度不足・梱包失敗

今回のグッズにはスペシャルセットというのをラインナップに入れていた
グッズシリーズの全ての品目がセットボックスに入って届くというその名の通りスペシャルな品だ

我は事務所所属中からずっとこういうのをやりたくてうずうずしていたので念願叶ってうきうきと準備して、いざ発送
あとはファンらのおうちに届くのみ……と思っていたらば購入者のおうちへの個別発送個別梱包を担当してくれるBOOTHの倉庫より連絡来たる

「箱の大半が破損しています」

写真見たらばもうベコベコのビリビリであった
配送中の揺れなどで破損してしまったのだろう
急ぎ全部返送してもらうと同時に箱の印刷所に連絡をして、もう一段階強度の高い紙での印刷を発注した

考えられる原因は三つだ

  1. 箱の強度不足

  2. 段ボールの選定ミス

  3. 重いグッズがあった

1.箱の強度不足
これに関しては紙、箱に関する知識がまだなく、強度不足の紙を選んでしまったことに尽きる
印刷所の方に相談してみても「ご自身で判断してください」だったのでこればかりは自分で試して知見を貯めていくほかないのだろう
(それからそもそも紙で出来た箱以外のものに入れるという選択肢もあるぞ)

2.段ボールの選定ミス
今回のセットボックスは一般的な段ボールの大きさにお行儀よくいくつか収まるように設計したんだが、選定した段ボールでは2列で縦に6個積む形だったので下の方が重さによって破損しやすかったんだ
BOOTH倉庫から返送されてきた時は平べったい段ボールに入って縦には最大3個しか積まれない形だったので「その手があったか……!」と感嘆してしまった
業界や普段から発送をなさるみなさまには常識かもしれないが、我は17の頃からずっとVtuberで副業もIT系だったので全く触れる機会がなかったんだ
故に衝撃だったな、段ボール選びは完全に盲点だったのでこれからはグッズの強度を考えて選んでいきたい

3.重いグッズがあった
今回セットの中にアクリルブロックがあって、これが重めな上、梱包順番の検討が足りず、中で動いてしまっていたんだ
一応しっかりした厚紙の箱だったので普通に全てのグッズを入れただけでは特にたわんだりもせず、強度問題ないように見えたが、配送には耐えられなかったようだ
再発送時には中のグッズの入れる順番を変えて、アクリルブロックが可能な限り動かないようにして対策をした
どうしてもPC上でラインナップを検討しているとそういう物理グッズならではの部分は抜けてしまったところもあるので、素材がどういうものかも忘れず計画したいものだな

新しく発注した箱を組み立て返送されてきた中身を全て入れ、この三点気を付けながら梱包し発送したらば、みなさまのおうちに無事届いた
やはり配送中のグッズの状態に気を配りながら強度考えて発注、梱包するというのは大事なことなんだな
だし我が知る機会のなかっただけでおそらく基本なのだとも思うのでこうして共有できることを嬉しく思う次第だ

②梱包リソース不足

今回品目数が多いのもあって梱包が本当に大変だった
一人では不可能な規模だったので友人の魔王トゥルシーというVtuberを呼んで丸一日手伝ってもらったぐらいだ
それでも大きく時間は取られたし、包装も含めると数日かかっている
一人でやっていたらと思うと恐ろしい心地だ
今回に関してはグッズの内容もまたリソースの要るものだったな、箱があるので箱の組み立てが要る、品目数が多いのでその分手間もかかる
OPP袋に入っていないものは個別に入れていく手間もある
昨今は印刷所の方で個別包装してくれるところもあるのでオプションになるとしてもつけることを我はおすすめしよう、はっはっは

③印刷所からグッズが来るタイミングがバラバラ

当たり前だがグッズはその種類や数によって印刷にかかる日数が変わる
受注生産の注文受付期間が終わって発注数が確定したからといってすぐに発注すると本当にバラバラにグッズが届く
これの何が良くないというと、最終的にいくつかをセットボックスに入れ直さなければいけない関係上、最初に届いたグッズの段ボールは最後まで屋敷のスペースを取る、単純に長期間邪魔になってしまうのだ
発注は梱包日を逆算してしよう
しかしこれもまた落とし穴なんだが、今回の制作の中で一部のグッズが印刷所のトラブルにより納品日がすごく後ろ倒しになったことがあったんだ
完璧に計算できてもトラブるときはトラブる
ははは、頭の片隅に置いておいてくれ

④エラー品を想定出来ていなかった

印刷には正しく印刷できなかったり、汚れがついてしまったりというエラーがつきものだ
大抵の印刷所では少し多めに刷ったものを予備として同梱してくれたり、あちらの方でエラー品を弾いたりしてくれるのだが、対応していない印刷所やグッズもある
我は予備を含め発注したものの、一部思ったよりもエラー品が多くて予備含めて本当にぴったりぎりぎりの数になった品目があった
予備を気持ち多めにしたり、印刷所がエラー品に対してどう対処されている所なのかを調べたりするのは大事だと学んだ

第二次個人勢時代 -現在そして未来-

我は独立記念グッズから得られた数多の知見を活かして次のグッズを計画している
とはいえ、ここ数カ月目の回るような忙しさだったのでしばらく独立記念グッズぐらいの規模のものはできないだろう
今回は小規模に"第二弾"をやって、また知見を貯め、より良いグッズをよりスムーズにファンらに届けられるよう邁進していきたい

この記事では最後にその改善の様を少し見せておしまいにしよう

まず何より用語を多少整理した上でぐちゃぐちゃスプレッドシートから必要な計算式を改めてサルベージし、メモした
(ここら辺簿記を勉強すると全部解決するのだろうな、いつか学ぶ時間を作りたいものだ)

メモした計算式の一部
何か間違っていても指摘しないでくれ、自分で失敗しないと身につかんからな ははは

そしてこのメモを元に新たにスプレッドシートを作った
白い所が自分で入力するところでグレーアウトしているのが計算式が入っていて自動で計算してくれるところだ

簿記だとここら辺どうなるんだろうな、歴史のある分きっと効率的なのだろうな
少し興味が出てきている

位置や用語などは我の知見の得られた範囲で効率的な形にしている
もちろんまだ二回目なので足りないところもあるだろうし、これからまだまだブラッシュアップしていく心積もりだし、フローの改善もどんどんとやっていきたい所存だ
今からこれを使ってプロジェクトを回すのが楽しみでわくわくしてしまうな、はっはっは

ずいぶん長々書いてしまったな、お付き合い頂いたこと礼を言おう
やったことのない分野は未知の落とし穴でいっぱいだ、業界で常識になってしまっているものに至っては調べようがなかったりもするので
活動者皆々様におかれましては、これら失敗に倒れたわが過去の屍を踏み越えて、より良い活動の日々を送ってほしく思う
それでは皆々様ごきげんよう、良い一日を

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