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引退まで「1250本のラケットを一本も折らなかった」ラファエル・ナダル38歳の四大大会22勝より大切なこととは…「小さな村の良き人間として」

posted2024/11/28 11:03

 
引退まで「1250本のラケットを一本も折らなかった」ラファエル・ナダル38歳の四大大会22勝より大切なこととは…「小さな村の良き人間として」<Number Web> photograph by Getty Images

デビスカップ、スペイン対オランダ戦で最後の雄姿を見せたナダル。引退の舞台に団体戦を選んだのには彼らしい理由があった

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山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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 僕がテニスに疲れたわけじゃない。でも、体はもうテニスをしたくないと言っている——。

 11月19日、そんな言葉を残して、ラファエル・ナダルは母国スペインのマラガで現役生活の幕を下ろした。一打一打に全身全霊を注ぎ込むようなパワフルなテニスは数多の怪我を招き、そのたびに克服しては栄光を重ねる不屈の精神に肉体は懸命に従ってきたが、とうとう追いつけなくなってしまった。

麻酔を打ちながら全仏に優勝

 心と乖離した体の叫びは、もう随分前から聞こえていたに違いない。それをほのめかしたのは、一昨年の全仏オープンで前人未到のV14を成し遂げたあと、痛めていた左足に麻酔を打ちながら戦っていたことを打ち明けたときだった。

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「テニスは僕の人生の大部分だけど、幸せを犠牲にしてまで続けるものじゃないと思っている。自分らしく、ありのままで、幸せにテニスができるならまだ続けたい。でも、それができないならもう潮時だと思う」

 翌2023年初めの全豪オープンで今度は左股関節を痛めて戦列を離れ、全仏オープンは19歳での初優勝以来初めての欠場を決断。マヨルカにある自身のアカデミーで会見を行い、「2024年が最後の年になると思う」と伝えた。引退を翌シーズンまで引き延ばしたのは、テニスを楽しめる状態でせめてもう一度コートに立ち、自分らしいプレーでキャリアの幕を引くという理想のためだったのではないだろうか。

チーム戦が好きだった

<史上最強の赤土の王者>が最後の舞台に選んだのは、全仏オープンではなく、会場が同じロランギャロスだったパリ五輪でもなく、8カ国の代表が集うデビスカップ・ファイナルズだった。「テニスのワールドカップ」と銘打って5年前にフォーマットが一新されたが、120年以上の歴史を持つ国別対抗戦である。スペインは6度頂点に立ち、ナダルは17歳でのデ杯デビュー年をはじめ4回の優勝を経験した。あらゆる国の現役選手で最多の優勝回数だ。

 ナダルはチーム戦が好きだった。子供の頃はサッカーに夢中で、熱量は少しずつテニスに傾いていくが、13歳までサッカーを続けた理由も、チームスピリットというものに惹かれていたからだという。

【次ページ】 デ杯は特別なもの

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