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中谷潤人27歳“美しく無慈悲なKO”の全貌「自信満々だった挑戦者が…」無敗クエジャルが味わった“残酷な現実”「完敗という悪夢に呆然としていた」
posted2025/02/25 18:10
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無敗の挑戦者クエジャルを粉砕した中谷潤人。3ラウンドのKOシーンでは圧巻のコンビネーションを見せた
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBCバンタム級チャンピオンの中谷潤人(M.T)が2月24日、東京・有明アリーナで開催された「Prime Video Boxing 11」で同級6位の挑戦者ダビド・クエジャル(メキシコ)に3回3分4秒KO勝ちを収め、3度目の防衛に成功した。27歳の王者が見せた「圧巻」のパフォーマンスを振り返る。
試合前は“自信満々”だった23歳クエジャルだが…
「役者が違う」という言葉がピタリとはまった。那須川天心(帝拳)、堤聖也(角海老宝石)、比嘉大吾(志成)と豪華メンバーが並んだ「Prime Video Boxing」で、中谷がメインイベンターとして堂々の活躍を披露した。
挑戦者のクエジャルは28戦全勝(18KO)の戦績を誇るメキシコの23歳。映像ではそれほどスピードを感じさせないものの、身長が中谷の173cmをわずかに上回る174cmと高く、チャンピオンがこれを「不安要素」と表現したのは、今思えば自分を戒める狙いだったのだろうか。
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それでも中谷有利が当然視される中、来日したクエジャルの自信に満ちた立ち居振る舞いは「頼もしい挑戦者」という印象を我々に与えた。「私はいつも通りKOを狙っていく。メキシコに必ずベルトを持ち帰る」。精悍な表情とハキハキとした語り口、そして引き締まった肉体からは、少なくとも中谷を恐れているようには感じられなかった。
しかし、期待に胸を膨らませるメキシカンに待っていたのはあまりに厳しい現実だった。安定王者の自信と力量はホープの夢を残酷なまでに打ち砕いたのである。
ゴングと同時にプレスをかけたのはクエジャルだ。距離を詰めて強打を打ち込もうという意欲にあふれていた。サウスポーの中谷はいつも通りスタンスを広く取り、低く構えて距離をキープしながら立ち上がる。赤コーナーは試合前、クエジャルを「上体が立っている。動いたとしても中心が動かない」と分析していた。その上で、ルディ・エルナンデス・トレーナーからの指示は「最初から左ストレートを強く打て」。中谷は初回から左ストレートをインサイドから打ち込み、早くもクエジャルの顔面をとらえてみせた。