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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・平沢勝栄議員に聞く!現場が必要とする交通政策とは

自由民主党・平沢勝栄議員に聞く!現場が必要とする交通政策とは

投稿日2024.8.19
最終更新日2024.08.20

2023年の全国の交通事故死者数は2678人で、8年ぶりに前年を上回りました(警察庁2024年1月公表)。2024年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針)」には安全・安心な国民生活の実現が掲げられ、近年増加する高齢運転などの事故防止や被害者の支援に取り組むことなど、時代に合わせた交通政策の議論が続いています。

今回のインタビューでは、自由民主党・平沢勝栄議員に現在検討が進む交通事故防止政策の政策や問題意識についてお伺いしました。

(取材日:2024年7月18日)
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 井出光)

平沢勝栄議員インタビュー

平沢勝栄(ひらさわ かつえい)議員
1945年生まれ。警察庁を経て、
1996年衆議院選挙で東京17区(葛飾区)から初当選(9期)。
復興大臣や自民党広報本部長、衆議院 拉致問題特別委員長などを歴任。
座右の銘は「一日生涯」。

(1)警察から政治家への転身は茨の道

ー平沢議員が警察庁から政治家を志したきっかけは何だったのでしょうか。

まさか政治家になるとは想像もしていませんでした。政治家になれば、四六時中週刊誌の記者に追いかけられるだろうし、なってもろくなことはないなと思っていましたからね(笑)。

大きな転機は、秘書官として仕えた後藤田正晴元官房長官からの推薦でした。1995年に「自分は国会議員をやめるから、代わりに出てみないか」とお声かけいただいたのです。

出馬を決めた時、周りの反応は冷ややかでした。当時務めていた警察庁の同僚たちは「勝てっこないのに馬鹿な奴だな」と。警察庁出身だと現職の職員に違反などで迷惑をかけてはいけないという意識がどうしても働き、選挙活動も自由にできるわけではありませんでした。その意味でも警察庁出身者が国会議員を目指すことはなかなか厳しい。現在も衆議院・参議院で合わせて葉梨康弘議員と私の2人しかいませんから。ほかの省庁に比べ圧倒的な少なさです。

妻からも「自分は政治家の妻になるつもりで結婚したんじゃない」と大反対されましてね。何度も話し合って、ようやく当時都内で唯一空いていた東京17区(葛飾区)からの出馬が決まりました。

平沢勝栄議員インタビュー

ー何が平沢議員を政界へ突き動かしたのでしょうか。

一つは警察出身の政治家がもっといてもいいだろうと思ったからです。秘書として仕えていた後藤田先生も警察庁出身でしたが、警察の声や視点をより政治に届けることは必要なことだと考えていたのです。

もう一つは、多くの方から「政治の世界で活躍してくれ」と応援をいただいたことです。これまで初当選以来、28年間、1回も落選することなく9回の当選を果たすことができました。地元の方には感謝しかありません。

ちなみに国会議員は在職25年を過ぎると国会に自分の肖像画を飾ることができます。勿論、権利が与えられるだけで肖像画は自分で用意します。国会の委員会室には私の肖像画が飾ってあるのでぜひ見てみてください。写真かと思うぐらい実物とそっくりですよ。

平沢勝栄議員インタビュー
平沢議員の肖像画(事務所提供)

(2)現場が必要とする交通政策とは

ー平沢議員は警察庁出身ということもあり、これまで交通政策に尽力されていらっしゃいます。今はどんな政策に注力しているのでしょうか。

さまざまなテーマに取り組んでいますが、今は特に危険運転致死傷罪の改正に取り組んでいます。この罪は平成13年(2001年)の刑法改正により新設された規定です。飲酒運転やスピード違反などの極めて危険で無謀な運転で生命が失われた場合の罪を想定していて、それまで最高7年だった懲役が15年に、さらに2016年には20年に重罰化されたものです。

この法律自体は安心・安全な交通を実現する上での前進だったと思いますが、現場でなかなか法の適用がされないという問題がずっとありました。危険な運転をした人を法にはあっても実際には検挙できないという状況が続いていたのです。

ーなぜ現場でなかなか使えない法律になってしまっていたのでしょうか。

罪を適用する上での要件(構成要件)が極めて曖昧に書いてあるからです。

次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
(平成二十五年法律第八十六号 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律より)

条文の中には「その進行を制御することが困難な高速度」と書いてありますが、これが具体的にどのような状態を指すのか判断が難しいものですから、警察や検察、裁判所までもが適用をためらってしまっているんです。

ー今はどのような状況なのでしょうか。

この法律の改正に向けて準備を慎重に進めています。私が座長を務めた自民党「自民党危険運転致死傷のあり方検討プロジェクトチーム」での議論を経て、今は法務省で検討会議が開かれているところです。今後は法改正を行う際には必ず諮問する必要がある法務省・法制審議会を経て、自民党の部会での議論や各党説明を経ます。その後は国会に上げて改正する流れになります。2025年の通常国会には提出できるスケジュールです。

平沢勝栄議員インタビュー

2020年3月に、悲惨な事故が私の地元・葛飾区で発生しました。信号無視の車が猛スピードで交差点に突っ込み、青信号の横断歩道を渡っていた11歳の女の子が亡くなったのです。

大事な大事な家族をこうした事件で失った方からすると、犯人は許せない。でもそれは今ある法律の範囲の中でしか裁くことができないのです。

この法改正が持つもう一つの大きな意味は、「危険な運転をしたら最高20年の懲役で厳しく罰せられることになる」というメッセージを広く打ち出したことです。悲惨な交通事故をなくさなければならないという強い思いで進めています。

ー交通事故の防止のための政策も、時代に合わせて変えていく必要があると感じます。

交通政策が時代とともに変わるというのは、その通りです。社会変革が進むにつれて必要な交通政策も変化していくのは当然のことです。

たとえば、最近では電動キックボードに乗る人をまちで見かけることが多くなりましたが、これに対応して安全な交通を実現するために、2023年7月に道路交通法が改正されました。

この次は「空飛ぶクルマ」が登場するとの予想もあります。新しい技術がどんどん生まれ、社会は変わっていきます。そうした社会変革を、ただ危ないから、という理由だけで止めることは絶対に避けなければなりません。交通事故をゼロにしようと思えば、それは簡単で、人間が乗る乗り物を全て禁止して人力車の時代に戻せばいいのです。でも、そうしてしまえば社会は大きく後退します。

社会を発展させつつ、どう事故を防ぐか。そのための情報を整理し、議論を重ね、新しいルールを定める。時代を前に進める新しいアイデアを押さえ込むのではなく、積極的に応援し、そのための環境を作ることが政治の務めです。

(3)政治に声を届けて

ー平沢議員が政治家として成し遂げたいことは何でしょうか。

政治家になって28年間、長年取り組んでいても解決できていない問題がいくつかあります。

一つは拉致問題です。被害者家族の方々に残された時間には限りがあります。もちろんすべての被害者の方が同時に帰ってくることが理想ではありますが、まずは1人でも2人でも帰国できるように尽力していくことが大切だと思います。

拉致問題は人質事件の側面があります。これまで日本は北朝鮮に対して、犯人を怒鳴りつける対応をしてきました。しかし、人質事件の犯行現場での交渉と同じで、できるだけ犯人との交渉をしなければ解決に向けて歩み出すことはできません。言っていることは正しくとも事態が動かなければダメです。いつまで今のような状況を続けるのかと現状に強い憤りを持っています。

平沢勝栄議員インタビュー4

もう一つは、第二次世界大戦での空襲で被害を受けた方の救済法の制定です。

日本には先の大戦で行われた空襲被害の後遺症に苦しんでいる方がまだ多くいらっしゃいます。ドイツなどでは空襲被害者の補償をきちんと行なっていますが、日本では未だ実現していません。

これまで超党派の「空襲議連」で議論を進め、被害を受けた方への一時金50万円や被害調査から成る法案をまとめましたが、まだ自民党内に反対意見があることから国会に提出できていません。2025年には戦後80年という大きな節目を迎えることもあり全力で取り組みたいと考えています。

私は今78歳ですけれども、永田町には私のような熟年もいれば、若い政治家もどんどん育っています。ただ年齢だけで差別することは間違いだと思います。私もまだまだ頑張っていく決意です。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

平沢勝栄議員インタビュー5

「政治は遠い」と感じる人が多いかもしれません。でも日常生活の中で食べたり遊んだり好きな歌を歌ったり、実はそのすべてに政治が絡んでいます。

ですから、毎日の生活の中で不便に思ったり問題だと感じたりすることがあれば、ぜひその声を届けてください。私宛の手紙や問い合わせのメールでもいいのです。2023年にはより気軽にコミュニケーションをとるために、公式ホームページ内で「ご質問BOX」を設け、X(旧Twitter)などのSNSを通じて回答させていただいています。

「ご質問BOX」:https://yya0123gg.wixsite.com/hirasawa-questionbox

国民の安全・安心そして豊かな生活を守っていくのは政治の最も重要な仕事です。国民の誰もが、楽しく充実した毎日を送ることができるよう、政治家として最大限の努力をしていきたいと思っています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
株式会社PoliPoliが運営する「政治をもっと身近に。」を理念とするWebメディアです。 社内編集チーム・ライター、外部のプロの編集者による豊富な知見や取材に基づき、生活に関わる政策テーマ、政治家や企業の独自インタビューを発信しています。
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