
街の灯りから離れた郊外の夜空を見上げると、帯のように光り輝く天の川を目にすることができます。天の川の正体は、約1000億〜4000億個の星々から成る「天の川銀河」を、私たちが内側から見た姿です。
「銀河(Galaxy)」とは、数億〜数兆個の星々と星間ガスが集まって形成される天体のことを指します。天の川銀河の周囲には、大マゼラン雲や小マゼラン雲といった小規模な伴銀河が存在します。また、天の川銀河の近くにある大きな銀河としては、アンドロメダ銀河(M31)がよく知られています。
このような「銀河」について、あらためて学んでいきましょう。そもそも「銀河」とは何なのでしょうか。宇宙に広がる無数の銀河の種類や構造、そしてその進化について、わかりやすく解説していきます。

目次
銀河の分類:エドウィン・ハッブルが提唱したハッブル分類

銀河はその形状に基づいて、「楕円銀河」「渦巻銀河」「棒渦巻銀河」「不規則銀河」の4つに分類されます。この分類は、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが提唱したもので、「ハッブル分類」と呼ばれています。
渦巻銀河(Spiral Galaxy)棒渦巻銀河(Barred Spiral Galaxy)

「渦巻銀河」と「棒渦巻銀河」は、円盤状の銀河であり、星間ガスを多く含んでいます。銀河の中心にある膨らんだ部分は「バルジ」と呼ばれ、その周囲に広がる「円盤」から、渦巻状の構造である「渦巻腕」が伸びています。渦巻腕には、明るく青く輝く若い星や、電離したガス雲が含まれています。
渦巻銀河と棒渦巻銀河の違いは、バルジの形状が球状か棒状かによって決まります。渦巻銀河は、バルジが大きい順に「Sa」「Sb」「Sc」「Sd」「Sm」の型に分類され、同様に棒渦巻銀河も「SBa」「SBb」「SBc」「SBd」「SBm」に分類されます。
分類の添え字(小文字の部分)は、当初「a」から「c」までが割り当てられていましたが、その後の研究で「d」や「m」(不規則な形状)も使用されるようになりました。なお、渦巻銀河の分類を「SAa」「SAb」「SAc」…と表記する場合もあります。
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楕円銀河(Elliptical Galaxy)

「楕円銀河」は、渦巻銀河や棒渦巻銀河と比べて、恒星の分布に大きな濃淡がなく、形状の特徴も乏しい銀河です。楕円銀河には、比較的年老いた恒星が多く含まれており、これらの恒星は表面温度が低いため、楕円銀河全体が赤色や黄色に見えます。また、星の材料となる星間ガスが少ないことも、楕円銀河に年老いた恒星が多い理由の一つと考えられます。
楕円銀河は、見かけの形の潰れ具合(長径と短径の比)によって細分化されており、球形に近い「E0」から、最も細長く潰れた「E7」までの型に分類されます。
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不規則銀河(Irregular Galaxy)

「不規則銀河」は、楕円銀河・渦巻銀河・棒渦巻銀河のいずれにも分類されない銀河の総称であり、バルジを取り巻く円盤や渦巻腕といった特徴は見られません。不規則銀河には、大きく分けて規模が小さいために元々不規則な形をしているものと、銀河同士の接近や衝突などの相互作用によって形が変形したものの2種類があります。
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銀河群(Galaxy Group)と銀河団(Galaxy Cluster)

銀河は、宇宙に均一に分布しているわけではなく、「銀河群」や「銀河団」と呼ばれる集団を形成しています。さらに、より広い範囲で宇宙を観測すると、銀河団が網の目状に分布していることが明らかになっています。
銀河群と銀河団
数個から数十個の銀河が集まった構造を「銀河群」、100個以上の銀河が集まった構造を「銀河団」といいます。
私たちが属する天の川銀河は、「局部銀河群」と呼ばれる銀河群の一員です。局部銀河群には、天の川銀河のほかに「アンドロメダ銀河(M31)」や「さんかく座銀河(M33)」を含む50個以上の銀河が存在しています。
地球に最も近い銀河団は、約6000万光年離れた「おとめ座銀河団」です。この銀河団には、超大質量ブラックホールの撮影に成功した楕円銀河「M87」をはじめ、大小合わせて約3000個の銀河が含まれています。その他の代表的な銀河団としては、「かみのけ座銀河団」や「ヘルクレス座銀河団」などが知られています。
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宇宙の大規模構造
銀河団よりもさらに大規模な構造として、複数の銀河団が網の目のように分布する構造があります。このような銀河群や銀河団が形成するネットワークは、「宇宙の大規模構造」と呼ばれます。コンピュータシミュレーションによって、宇宙の大規模構造は初期宇宙の密度の揺らぎから形成されうることが再現されています。
活動銀河(Active Galaxy)

銀河の中には、中心部の非常に狭い領域から強い電磁波を放射するものがあります。このような銀河を「活動銀河」といい、その中心領域は「活動銀河核」または「活動銀河中心核」(AGN: Active Galactic Nucleus)と呼ばれます。
活動銀河核の中でも最も強い電磁波を放射するものは、「クエーサー」(準恒星状天体: quasar)と呼ばれます。クエーサーは遠方宇宙に多く存在し、銀河形成の初期に発生したと考えられています。クエーサーほど強力ではないものの、近傍宇宙にも活動銀河核を持つ「セイファート銀河」や「電波銀河」といった活動銀河が見られます。
こうした活動銀河の中心には、**太陽の数百万~数億倍の質量を持つ「超大質量ブラックホール」**が存在すると考えられています。その周囲には、**ガスや塵がブラックホールへと落下する過程で形成される「降着円盤」**があり、高速で回転しています。この降着円盤の超高温の物質によって、電波からX線、さらにはガンマ線に至るまでの多様な波長の電磁波が強く放射されているとみられています。超大質量ブラックホールの形成過程や活動銀河核のメカニズムの解明は、現代天文学における重要な課題となっています。
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編集/sorae編集部