言葉と相性がいい「逆張り」、SNSで乱発される理由 飯間浩明さん
良識をあざ笑うような意見や、常識的にはありえない主張、がネットではにぎわっています。いわゆる「逆張り」です。SNSが産み落とした負の現象にも思えますが、国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明さんは、そもそも言葉というものは「逆張り」的文脈で使うときに威力を発揮する、というのです。
いいま・ひろあき
1967年生まれ。日本語や辞書に関する著書多数。本紙「be」で「街のB級言葉図鑑」を連載中。
「逆張り」は元来、株の売買の際に使う証券業界の用語でした。値の下がった株を今が好機とばかり、あえて買うといったことを指します。
経営の分野でも使われます。「不景気だからこそ積極的に事業を展開する『逆張り』の経営」のように、世間の常識や主流と反対の策をとることです。
さらに一般にも広まりました。私が携わる「三省堂国語辞典」は、2014年の第7版から「逆張り」を載せ、2番目の意味に一般的な用法を記しました。「だれも価値をみとめないことを、〔いい機会だと思って〕あえてすること」。もっと簡単に「他の人々と逆のことをあえてすること」と言ってしまってもいいかもしれません。
「逆張り」は言葉と相性がいい――。飯間さんは言葉本来の特質から、そう説明します。では常識的な言葉は逆張りにかなわないのでしょうか?
現在、ネット空間では逆張り…