ウクライナ当局者、アメリカとの鉱物取引合意を認める

ウクライナ中部の採鉱場(資料写真)

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画像説明, ウクライナ中部の採鉱場(資料写真)

アブドゥジャリル・アブドゥラスロフ(キーウ)、ジャスラフ・ルキフ(ロンドン)、アンソニー・ザーカー北米担当編集委員(ワシントン)

ウクライナがアメリカとの主要な鉱物取引の条件に合意したと、ウクライナ政府の高官が25日、BBCに語った。

「いくつかの良い修正を加えた上で合意に至り、これを前向きな結果と見なしている」と高官は述べたが、詳細は明らかにしなかった。

報道によると、アメリカは当初要求していた、天然資源の利用から得られるとされる5000億ドル(約74兆6600億円)の収益に対する権利を撤回したが、戦争で荒廃したウクライナに対する確固たる安全保障の保証は与えていないという。安全の保証は、ウクライナ側の重要な要求だった。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は今週、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がワシントンでこの取引に署名することを期待していると述べていた。両首脳はこの問題について、互いに強い言葉を交わしていた。

トランプ大統領は24日、合意に達したことを認めないまま、「この取引の見返りとして、ウクライナは『戦い続ける権利』を得るだろう」と述べた。

トランプ氏は「彼らは非常に勇敢だ」と記者団に語ったが、「アメリカとその資金、軍事装備がなければ、この戦争は非常に短期間で終わっていただろう」とも述べた。

アメリカは装備や弾薬をウクライナに供給し続けるのかという質問には、「ロシアとの合意が成立するまでかもしれない。(中略)合意が必要だ。でなければ、この状況は続くだろう」と答えた。

また、いかなる和平合意の後でもウクライナには「何らかの形の平和維持活動」が必要だと述べたが、それは「全員に受け入れられるものでなければならない」と付け加えた。

ゼレンスキー大統領は先週、鉱物資源に関するアメリカの最初の要求を拒否し、トランプ氏はロシアによって作られた「偽情報空間」に住んでいると発言した。これを受けてトランプ氏は、ゼレンスキー氏を「独裁者」と呼び、戦争を始めたのはロシアではなくウクライナだと非難するような発言をした。

トランプ氏は、ロシアが3年前にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、アメリカが提供してきた軍事援助やその他の支援の見返りとして、ウクライナの鉱物資源へのアクセスを求めてきた。

ゼレンスキー大統領は、アメリカからの援助は5000億ドルもないと主張し、「我々の国家を売ることはできない」と述べていた。

外交政策の大きな転換

トランプ氏は24日、アメリカがウクライナに対して3000億~3500億ドルを提供したと発言。「そのお金を取り戻したい」と述べ、「我々は非常に大きな問題を抱える国を支援しているが、アメリカの納税者は今、そのお金を取り戻し、さらに利益を得ることになる」と語った。

ウクライナのオルハ・ステファニシナ副首相は、鉱物取引を最初に報じた英経済紙フィナンシャル・タイムズに対し、この取引は「全体の一部に過ぎない」と述べた。

交渉を主導してきたステファニシナ副首相は、「アメリカ政府から何度も聞いているのは、これはより大きな枠組みの一部だということだ」と述べた。

ウクライナの情報筋によると、アメリカはウクライナに対するいくつかの厳しい要求を撤回せざるを得なかった。また、合意内容の多くの詳細は、さらなる交渉が必要だという。

しかしこれで、トランプ政権によるアメリカの援助には条件が付くという前例ができた。人道的または戦略的理由で提供される援助は過去のものとなった。

これは、マーシャルプランの時代から冷戦後の理想主義、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の「フリーダム・アジェンダ」に至るまで、75年以上にわたるアメリカ外交政策の、根本的な再編成を意味する。

ウクライナはその始まりに過ぎない。トランプ大統領とその外交チームは今後4年間、「アメリカ第一主義」の原則を世界中に適用することが予想される。

動画説明, 【解説】 ウクライナの重要な鉱物資源をめぐる争い、トランプ氏はなぜ手に入れようとするのか

ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」によると、鉱物取引はウクライナのアンドリー・シビハ外相とアメリカのマルコ・ルビオ国務長官によって署名される予定だという。

同ニュースサイトの経済部門「EP」によれば、両国は再建投資基金の設立にも合意したという。

ウクライナにはリチウムやチタンを含む重要な元素や鉱物の豊富な埋蔵がある。また、かなりの量の石炭、ガス、石油、ウランもある。これらの資源には数十億ドルの価値がある。

ゼレンスキー大統領は昨年、ウクライナとその西側パートナーに「勝利計画」を提示した際、戦争終結後に外国企業がウクライナの鉱物資源の一部にアクセスできるようにすると提案していた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は24日、アメリカに対して、ロシアが占領しているウクライナの地域にあるものを含め、希少鉱物へのアクセスを提供する用意があると述べた

ウクライナと、同盟関係にあるヨーロッパの国々は、先週サウジアラビアで行われた米ロ間の二国間会談を含む、最近の米ロ関係の改善に対してますます警戒を強めている。

また、戦争終結を目指すいかなる交渉からも排除される可能性があり、大陸全体の将来の安全保障が、自分たちの背後で決定されるかもしれないという懸念が広がっている。