仕事がうまくいかない日はどんな人にもあるものです。そして、仕事に対する失望が長く続くこともあります。仕事に対して普段から時々抱く不満と、「本当にこの仕事は自分には合わない」という判断の違いは、どうしたらわかるのでしょうか? 本当に転職するべき時をいかに見極め、いざ転職する時に跡を濁さないようにするにはどうしたらよいのでしょう。
専門家の意見
仕事を辞めることは、その人のキャリアに悪影響を与え、その人自身の人生をも揺るがしかねません。ですが、望ましくない状況に留まり続けると、事態はより悪くなっていく可能性があります。
「現状に対する不満をもちながら、麻痺したようになってしまっている人がたくさんいます」と指摘するのは、レオナード・A・シュレシンジャー(Leonard A. Schlesinger)氏。バブソン・カレッジ(Babson College)の学長で、『Just Start: Take Action, Embrace Uncertainty, Create the Future』の共著者です。
多くの場合、何も行動を起こさないほうが簡単です。「ほとんどの人は、『悪い』仕事に長く留まっています。企業の世界は、人を役割にはめこもうとするものであり、各個人にとって理想的な役割に向けようとするようなことはしないのが通例だからです」と、技術系の起業家で、『Passion & Purpose: Stories from the Best and Brightest Young Business Leaders』の共著者でもあるDaniel Gulati氏は述べています。
けれども、ただじっとしているのではいけません。本当に辞めるべきかどうかを判断し、もし本当にそうなら、どうやったら効果的に退職できるのかを、以下で紹介しましょう。
「辞めるべきかもしれない」兆候とは
最初にやるべきことは、あなたが仕事を面白くないと感じた時、「それが日々の業務について」なのか、それとも「より大きな枠組み」なのか、「今後の展望について」なのかを明らかにすることです。「私の場合、仕事はどんな感じかと聞かれると、たいていは今の仕事が大好きだと答えます。とはいえ、どんな日でも楽しいという意味ではありません」と、シュレシンジャー氏は言っています。以下に、「より大きな何か」が進行している兆候を挙げてみましょう。
上で述べたような兆候がひとつでもある人は気をつけましょう。そして、今の仕事に留まるコストは、あなたにとって妥当で受け入れられるものなのかを検討しましょう。今の仕事に留まることは、新しいチャンスを逃し、感情的にも苦しい思いをするという「コスト」を考えると、割に合わないかもしれないのです。
退職を決める前にチェックすべきこと
退職すべき時かどうかをより詳しく検証するには、いくつかの実験をして、あなたの見方が現実的かどうかを見定めましょう。「自分の中だけで悶々と考えるより、人とじかに接して集めた情報はあてになります」と、シュレシンジャー氏は指摘します。同氏は上司と率直に話し合うことを勧めています。「自分がどう考えているか」と、「現在のポジションで自分にできること」について話し合うのです。
上司がこの手の話をしたがらない人だと思われる場合は、あなたのここ2年の業績評価を見てみることを、Gulati氏は勧めます。「その評価を見て自信が持てましたか? それとも失望しましたか? ベストを尽くしているのに評価が低迷しているのであれば、自分の評判がもっと傷つく前に仕事を辞めたいと考えるのも無理はありません」
仕事が合っていないかどうかをチェックする方法はまだあります。こんど大きな仕事が来た時に、自分から手伝いを申し出るのです。もし見向きもされなかったら、上司はあなたのスキルを評価していません。転職するタイミングかもしれません。
リスクを把握しよう
最終決断をする前に、退職のマイナス面を必ず評価しましょう。たとえ今の仕事は自分に合っていないと確信していたとしても、退職にはリスクがあります。これまでに築いてきた人間関係が損なわれたり、必要な収入が得られなくなったり、履歴書に汚点を残したりする可能性があります。
Gulati氏によれば、現代の米国人は、引退するまでに仕事を辞める機会が10回はあるのが普通で、平均で4年に1度、そういう機会が訪れるそうです。そして、「もし10回以上仕事を変えるようなら、企業側はあなたを『職を転々とする人間』と見なすようになる」とのことです。こうなると、あなたのプロフェッショナルとしての信用は地に落ち、この先仕事を得る機会も損なわれてしまいます。「これは、特に深刻な問題になる可能性があります。本当にやりたい仕事を見つけたのに、履歴書が原因で門前払いになってしまう場合が出てくるかもしれません」と、同氏は指摘します。
退職する時は、必ず次を見据えてから
退職する前に次をどうするか決めておけば、リスクの一部を軽減することができます。たとえ本格的な計画とまではいかなくても、自分のやりたいことの大枠だけははっきりさせたほうがよいと、両専門家は言います。
「ネガティブな状況から逃れようとして、感情的な思いつきで退職してはいけません。自分にとって、よりためになる仕事をめざして退職すべきです。あなたが今の仕事を心の底から嫌っているとしたら退職すべきですが、その前に、将来何か確実に好きになれそうなものを見つけるべきです」と、Gulati氏はアドバイスします。
シュレシンジャー氏はさらにこう付け加えます。「私なら、何の計画もなしに退職することはしません。次に何かを成し遂げるための戦略を注意深く立てるか、あるいは次にしようと思う仕事が実際に面白いと感じられるかをなんらかの方法で試してみるかします」
もちろん、こうした計画を必ず立てられるわけではありません。「多くの人は、次の計画を決めずに退職してしまいます。特に、経済的にゆとりがあったり、誰にも邪魔されずにじっくり考える時間が欲しい人などは」とGulati氏は述べます。
立つ鳥跡を濁さず
上司に向かって、「こんな仕事は辞めてやる!」と叫んで辞職する場面を空想する人もいるかもしれません。けれどもそんなことをすれば、気持ちが良いのはほんのひと時だけで、あなたのプロフェッショナルとしての人生はメチャクチャになってしまうでしょう。「状況を悪くしてしまい、跡を濁すかたちで退職するのは最悪です。どうやって会社を去るかは、どうやって会社に入るかと同じくらい重要です」とシュレシンジャー氏は指摘します。
あなたの人生の中で重要な人、例えば配偶者、子ども、友人などと一緒に、あなたの出した結論について話し合いましょう。信頼できる先輩や、以前の上司に助言を求めましょう。
最も重要なこととして、シュレシンジャー氏は次のように勧めています。「あなたの上司の視点に立ってみましょう。そして、今の仕事を辞める件について、どうしたら礼を尽くして伝えられるかを考えるのです」。この点はGulati氏も同じ意見です。「退職する決意をし、この仕事をする最後の日を頭に思い描いたら、直属の上司にそれを知らせ、ちゃんとした退職の手続きに従いましょう」
忘れてはいけない原則
やるべきこと:- そもそも今の仕事は可能なのか、自分にはそれができるのか、その仕事を続けるコストが高すぎないかを、自分自身に問いかけること。
- 現状が本当に変えられないかどうか、ちょっとした実験で検証してみること。
- 退職する前に、自分が次にしたい仕事のイメージをもつこと。
- 自分の上司や、別の上級社員がしている仕事をしたくないなら、その会社に留まらないこと。そのまま留まったら次にどういう事態になるかを想像してみる必要があります。
- どれだけ不満があっても、後戻りできない状況にしてしまわないこと。あなた自身のプロフェッショナルとしての評判を貶めることになり得ます。
- 退職を繰り返さないこと。履歴書に汚点が残ってしまいます。
Is it Time to Quit Your Job? | Harvard Business Review
Amy Gallo(原文/訳:齋藤新、合原弘子/ガリレオ)
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