新しい資格、新しいスキル、新しいキャリア。 株式会社 オデッセイコミュニケーションズ

新しい資格、新しいスキル、新しいキャリア。 株式会社 オデッセイコミュニケーションズ

Topics 寄稿

2025.01.08

現場研修を通して見えてきた「より効果の高い人材育成」

江角尚子さんは島根県出雲市でITリテラシーの研修事業や人材育成の事業の会社を経営されています。一昨年、同社オフィスに全国各地からPCインストラクターが集まる会合があり、私も参加させていただきました。人材育成に関して、日頃お感じになられていることをシェアいただきました。

オデッセイコミュニケーションズ代表取締役社長
出張 勝也

寄稿者
株式会社島根人材育成 
代表取締役 江角尚子

島根県立出雲商業高等学校卒業後、学校法人にて珠算塾講師、紡績会社の品質管理、中小企業での事務職などに従事する傍ら子育てボランティア活動として企画運営を実施。IT景気を機に県内のIT講師などを行い、2011年に株式会社島根人材育成へ創業とともに入社。研修講師として勤務し、創業者永眠のため2017年代表取締役に就任。県内企業や学校へ、人材育成に関わる研修を年間200回以上行っている。

メンターでもある創業者が他界。会社を継ぐことに

私、江角尚子は「株式会社島根人材育成」という会社を経営しています。主な事業は職業訓練の委託事業、中小企業向けに社員の仕事力を上げ、チームとしての力を高める研修事業です。社員5名の小さな会社ですが当社でも人材定着が難しい時期があり、「1対多数」で行う研修の成果には限界があり、もっと個々に関わっていく人材育成の必要性を感じています。

ここから、少し当社と私の話になります。島根人材育成の創業者は私の10歳年上の女性でした。創業者は新卒から17年間紡績会社の品質管理業務に携わりましたが、古い体質だったこともあり女性が活躍できる場が少なく、当時のITバブルを機に退職。MOS資格を取得し、IT講師やWebプランナーを経て、自分の可能性を広げ、もっと自分らしく働ける人を増やしたいという想いから研修業を起業しました。

創業者との出会いは、私が2度目の転職をした19歳のとき。当時の私は前職で厳しい指導を受けたことで完全に自信を失い、もともと内向的な性格の私が人生最大に落ちている絶不調タイミングでした。彼女はそんな私をいつも笑顔で迎え、どんな話でも聞いてくれ、いいところを見つけては認めてくれた人でした。また、人との関わり方や仕事の意義をおもしろおかしく教えてくれた人でもあります。仕事が楽しいと感じられ、何事にも意欲的になれる自分に変えてくれた、私にとってメンター的存在でした。

それから十数年後、起業する際に声をかけてもらい、創業とともに2人で手探りながら事業をスタート。しかし、事業が少しずつ軌道に乗り始めたときに癌が発覚し、手術をするも再発。7年前に他界してしまいました。整理するように言われましたが、私を別人に変えた大切な人がつくってくれた会社を残したい一心で、今は2代目として引き継いでいます。

距離が縮まる「1on1」

このような経験を活かし、長年従業員だったからこそわかること、経営者だからこその視点などを交え、社員のやる気を上げる研修を行っています。ありがたいことに、お仕事のほとんどは口コミ経由で依頼いただいています。ただ、研修という単発の関わり方では一時的にモチベーションを上げられるものの継続しなかったり、新たな課題が出たとき応用できなかったりと、「効果がわかりづらいのでは?」と感じていました。研修するにも時間を調整し、まとまった時間をつくり出す必要があります。研修を何度も行うことに負担を感じている中小企業は少なくないと感じています。

そうこう思っているうちに、研修後10名程度の受講者と「1対1」で面談できる機会をいただきました。話すなかで、大半の受講者から「内容は理解できたが、今の自分の仕事に応用するのは難しかった」といった感想をもらったのです。「わかりやすくてよかった」と、受講後にフィードバックをもらっていたのでとても意外でしたが、やはり直接話すことで本音が聞けるのだとも理解しました。

「研修で聞く事例やたとえ話を自分ごとに変換しづらい」「意義や意味を自らで見出せない」と言う方もいます。研修という「1対多数」の場合、そこまで深くフォローするのは正直難しく、限界があります。1対1の面談をすることで受講者との溝を埋めることができ、研修の効果をより高められると実感しました。

その後、研修後1on1面談をする機会を増やし、継続して面談させていただく企業があります。面談で課題を見出し、実践を続けてモチベーションを維持している社員もいます。研修内容の浸透だけでなく、会社の理念や方針の理解は社員と経営者の溝を埋める役割としても高い効果を感じています。

外部の視点で説けば、すんなり受け入れられることも

例えば、資格取得を推奨している企業は増えていますが、社員側にはそのメリットに気づかず、やらされている感を強く抱く社員は少なくありません。上司から説明を受けるものの、社内の人間から伝えられる限り「会社のため」という印象が拭えないのかもしれません。加えて、資格取得のために勉強時間を捻出する方法を見いだせない社員が多いのです。「こんなに忙しいのに勉強なんて無理!」と頭ごなしに決めつけ、合格を早々に諦めてしまう人にも出会います。

しかし、面談で外部視点を持って客観的に「あなたのためになる」と伝えると、すんなり受け入れる人が多いのです。私はよく人生をゲームにたとえて伝えます。「資格取得がこの会社でレベルを上げるためのルールであって、攻略方法がこんなにわかりやすく提示されているんだからクリアしないと損だよね?」なんて、若手社員に伝えると割とあっさり理解してくれます、次に「では、どうやって勉強時間をつくるのか?」という話題で盛り上がることも多くあります。

人材育成に「外の目」の活用を

面談では仕事以外の話を聞くことが多くあり、一見仕事とは関係がないことのように感じますが、そこはライフワークバランス。仕事もプライベートも、すべてはつながっているのです。プライベートがうまくいっていないと仕事への集中力が低下するため、大切なこととして話を聞いています。

私自身、人生のドン底で職場に自分を受け入れてくれる存在があったからこそ、やる気も出てきました。しかし、職場内に余裕を持って耳を傾けられる人は少ないのかもしれず、社外の人間だからこそ冷静に話せたり、聞けたりすることはあるでしょう。研修は1回のコストで済みますが、1on1となると時間やコストが継続的にかかります。

人材は常に変化があり、育成は継続性が求められます。しかし、それらを惜しむからこそ、人材定着につながらないのではないでしょうか? 信頼できるキャリアコンサルタントを外部の人事部、スタッフとして活用することは有効だと感じています。

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