大手コンビニエンスストアの一部で3月から雑誌の販売が終了する。インターネットの普及による紙媒体離れに加え、トラック運転手の残業規制を強化する2024年問題や燃料高騰などの影響で、コンビニ向け配送事業の赤字が慢性化。ファミリーマートとローソンの計約1万店で雑誌配送を終了する方針が示されていた。今後は配送コストが高い地方ほどコンビニで雑誌を購入できなくなる可能性は高く、書店のない地域では〝雑誌難民〟が生まれる懸念も強まる。
赤字続くコンビニ向け配送
出版取次大手トーハンは、日本出版販売が慢性的な赤字からコンビニ向けの雑誌配送を取り止めるのを受け、3月に日本出版販売からファミマ約1万6000店、ローソン約1万4000店の計約3万店への雑誌配送を引き継ぐことになっていた。だが、保管や輸送の採算性などを考えると配送可能店舗は2万店が限界で、残り約1万店への配送の終了を決めた。
この方針に伴い、ローソンは3月以降、国内全店舗の約2割に当たる約3000店で店頭での雑誌販売の終了を決定。ファミリーマートも具体的な数字は示さないが、同様に3月以降、数千店舗で雑誌の販売を終える予定だ。
一方、国内で約2万1000店を展開するセブン―イレブンは「出版物を買える場が年々減少している今、コンビニ店舗で出版物を取り扱う意義は大きいと考えている」(広報)といい、雑誌販売は続ける。トーハンもセブンへの配送は継続する。
出版社に大打撃「死活問題」
一部コンビニの雑誌販売からの撤退は、雑誌を制作、販売する出版社にも大きな打撃を与えそうだ。
「圧倒的にコンビニでの販売数量が多い週刊誌や情報誌もあり、雑誌離れが著しい昨今、コンビニの雑誌販売の終了は出版社にとっては死活問題だ」。東京都内のある出版社の営業担当者は頭を抱える。
電子書籍やネット通販の普及で書店数は激減している。出版文化産業振興財団の調査では、全国1741市区町村のうち、書店が1店舗もない自治体は昨年3月時点で482に上り、全体の約28%を占めた。
前出の営業担当者は、「書店のない地域ではコンビニが唯一、雑誌の購入場所となっている住民は多い」と強調する。「雑誌販売をやめるコンビニが増えれば、雑誌を購入できない〝雑誌難民〟が発生する懸念もあり、雑誌文化のさらなる衰退に直結しかねない」と危機感を募らせる。
書籍接点広げる取り組みも
雑誌は「同一地区同時発売」が定められ、その発売日のうちに商品を小売店に届けなければならない。また、食料品などと一緒のコンテナで配送できない決まりなどもあり、点在する店舗に時間通りに配送しなければならないコンビニ向けの規制は特に厳しい。「コンビニへの雑誌流通を維持するには、こうした規制の緩和を訴えていく必要がある」(同)という。
一方で、書籍との接点を広げる取り組みも進められている。ローソンは店内の専用端末「Loppi」を使って書籍を取り寄せるサービスを案内したり、書店のない地域に書店併設型店舗の設置を増やしている。また、一部の自治体では出版取次大手などと協力し、25年度から図書館で本を販売する実証実験を開始する予定だ。(西村利也)