【パリ=三井美奈】ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ米大統領の会談が決裂したのを受け、欧州では2月28日、ウクライナを擁護し、名指しを避けながら米国への不満を示す声が相次いだ。だが、一方的に停戦合意を進めようとする米国に対抗策がないのが現状だ。
フランスのマクロン大統領は2月28日、訪問先のポルトガルで記者団に「侵略者はロシアだ」と述べ、ゼレンスキー氏への支持を鮮明にした。「ウクライナを支援し、ロシアを制裁するのは当然だ。3年前から行っており、これからも続けるべきだ」と主張した。仏メディアによると、マクロン氏はゼレンスキー氏と電話で会談した。
ドイツで23日の総選挙で勝利し、次期首相候補となった保守系野党、キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は「この悲惨な戦争で、侵略者と被害者を混同してはいけない」と交流サイト(SNS)で発信。欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表は「自由世界に新たな指導者が必要だということが明らかになった」と書き込み、米国への失望感をあらわにした。
欧州からは2月末、マクロン氏、スターマー英首相が相次いで訪米し、ウクライナへの平和維持部隊構想で米国の支援を取り付けようとして不発に終わったばかり。構想は欧州主体の部隊を編成し、米欧連携で停戦を進めようとする狙いがあったが、ゼレンスキー氏とトランプ氏の会談が決裂したことで実現の道はさらに険しくなった。
EUや欧州首脳は3月2日、ロンドンでウクライナ情勢をめぐって会合を開く予定。イタリアのメローニ首相は2月28日に声明を出し、「西側の分裂は、全員の弱体化につながる」として米国と欧州による首脳会合の開催を提案した。
一方、ハンガリーのオルバン首相は「トランプ氏は平和のために果敢に立ち上がった」とSNSに投稿し、米国への支持を表明した。