映像提供者や被写体の許諾のない映像使用を指摘されているドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」(伊藤詩織監督)で、海外で公開済みの作品に編集を加えた修正版が作られ、日本外国特派員協会(FCCJ、東京都千代田区)で20日、同作品関連の記者会見に合わせて上映される。日本版と、海外向け再編集版の2通りがあるとみられる。
◆伊藤詩織さん、20日に記者会見
作品は、伊藤さんが自身の性被害をテーマに製作。被害に遭う直前に乗車したタクシーの運転手のインタビュー映像や、被害現場とされるホテルの防犯カメラ映像を本人やホテルの許諾なしに使用したと指摘されている。また、伊藤さんをゲストに招いた女性記者らの集会の映像では、映り込んだ複数の人から「使用を許諾していない」との声が出ている。
この問題を巡り、伊藤さんを性被害に関する民事訴訟などで支えた元弁護団と伊藤さん側が20日、FCCJでそれぞれ記者会見する。その際、議論の焦点となる映像を参加者向けに上映するかどうか、両者とFCCJが調整してきた。
FCCJによると、会見場で日本版を上映し、海外向け再編集版は参加者にインターネット経由で配信する。日本版と海外向け再編集版の相違点は不明だが、タクシー運転手の顔や声などが修正対象となる。
◆匿名のタクシー運転手、女性記者らの集会
公開中の作品で、タクシー運転手は「(伊藤さんが)近くの駅で降りたい、と言っていた」などと伊藤さんを被害現場付近で降ろす前の様子などを語り、顔がほぼ正面から写るシーンもあった。ただ、弁護団によると、民事訴訟では匿名で陳述書を提出し、現在は連絡がつかないという。
このほか女性記者らの集会の場面も修正される。FCCJによれば、主催者が会の名前を述べた部分や、映像使用を許諾していなかった女性一人の発言や映像、映り込んだ複数の参加者の映像が削除されるという。公開済みの作品では、自身の性被害や、女性が声を上げにくい日本社会について意見を述べていた。自身の性被害を語った女性からは映像使用の許諾を得ていたが、他の発言者や映り込んだ人たちから「許諾していない」として削除要請が出ていた。
FCCJによると、元弁護団は、公開済みの作品を会見場で上映するよう求めていた。伊藤さん側との調整の結果、修正後の日本版と、海外向け再編集版の2通りを見られるようにしたという。
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