【書評】400ページ以上に渡り解説される、Azure RAGの構成サービスに関する知識理解を確かめられる資格対策本のご紹介(AI-102本)
はじめに
著者であるMicrosoftでData&AI領域のSpecialist佐野寛さんよりご恵贈いただきました。感謝の気持ちを込めて推しポイントをご紹介させていただきます。
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結論、RAG構築の際にAzureのAIサービスを既に利用されている方、ご検討されている方は開発の手元に置くバイブルとしておすすめです!💡
👇他にもこんな方にも・・・
- AzureでRAGを構築していて、より機能レベルで使いこなしたい実装者の方
- ハイブリッドクラウドの構成(例えばデータベース/リトリーバル環境として細かくチューニング/カスタマイズ可能なOracle Autonomous DB、データの抽出やLLM APIの提供環境としてAzure製品)を使いたい方(検索精度向上のためのアプローチ)
- 上記のPoT/PoC段階での検証、及び技術選定の判断材料のための学習教材として使いたい方
- AI-102の資格の勉強をされたい方
この本の存在のありがたさ
まずazureの資格対策本は数少ないです。2025.02.24時点でAzureに関する日本語で書かれた資格対策本は本書籍の資格を除いて、AZ-900, AZ-104、AZ-305, SC-900のみで総計10冊ありますが、AIに関するAzureの書籍はまだ存在しませんでした。
本書の特長と概要
何の開発に役立つ?
こちらの書籍の範囲はAzure AIの中でも実装済みのML/LLMモデルをAPI呼び出しで扱う製品をターゲットとしています(Azure MLは除く)。
その領域はAzureでRAG/Agentシステムを構築する上でとても重要な要素を担うサービス群です。AzureでRAGを構築したことがある方は主にデータの抽出や加工に関する前処理にAzure Document Intelligenceを、リトリーバル環境としてマネージドな検索サービスであるAzure AI Searchを、LLMをマネージドな環境で提供するAzure OpenAI Serviceを利用したことがある人も多いのではないかと思います。Azure Content Safetyを用いた入出力のフィルタリングの話やハイブリッドサーチ、その他にもRAG関係ないシンプルな検索システムの構築や紙媒体をディジタル化する方法の理解としても有効的です。
試験範囲は?
AI-102はAzure AI製品を用いたAIソリューション開発の以下のフェーズに関する知識理解を確かめる資格です。
- 要件の定義と設計
- 開発
- 展開
- 統合
- メンテナンス
- パフォーマンスのチューニング
- 監視
具体的な試験内容の範囲と単元ごとの出題の割合は定期的に更新されますが、以下のサイトを確認することで最新の情報が入手可能です。
※毎年5月末にMicrosoft Build、11月にMicrosoft Igniteという技術アップデートイベントがあるため、大きくサービス内容がアップデートされます。大体1年後には大きく資格内容に変更が入る可能性があるため要注意です。
他の資格対策本と違うところや推しポイントはどこ?
- 製品の細かい機能まで記載されており、資格勉強以外の用途、例えば実装中も手元にバイブル本としてもおいて扱いたくなるくらいの情報量です。分厚く、ページ数で430ページにわたる大作です。紙媒体でパラパラ見返したい方はこの情報量はとても嬉しいポイントかと。
- Checkという括りで、類似製品との使い分けやリブランディングされる前の製品名、勘違いしやすいポイントなど読者の理解を助けるためのコメントが差し込まれており、長時間製品に向き合っている中の人だからこそお伝えできる内容が書かれているという印象を持ちました。例えば、「Document Intelligenceは、従来は、Form Recognizerと呼ばれていましたが2023年に名称変更となっています。」のような記載があり、改名前の名称で現在も利用可能な機能がある場合、技術ブログが改名後に更新されず、旧名称のまま残っているケースが多いと思います。このような場合、改名前の名称を知ることで、過去にその技術を扱っていた際に情報を探す際の助けとなり、非常に有効的だと感じました。
- MSLearnからソースコードを抜粋し、コードレベルで理解を助けてくれる点が魅力です。多くの用語を覚えなければならず、覚えたとしても実務で使えない可能性を考えると知識をインプットするのは大変ですが、こちらの書籍はコードレベルに落とし込んで知識を身に着けられるため、とても嬉しく感じます。
- 価格レベルの違いや細かい関数レベルのオプションまでとにかく詳細にまとまっていて、紙でパラパラ詳細を探せます。公式ドキュメントのような詳細に加えて、章ごとにビジネスユースケース例もあり、製品機能レベルで補足説明が分かりやすく付けられ、練習問題を通して知識理解も確認できる拡充された一冊です。おそらく、その製品知っているよ、使ったことがあるよという方もそんな機能あったんだ!という気づきを得られるのではないかと感じています。
- 読者特典で模擬問題をPDF形式でダウンロード可能。てっきり、模擬問題と解説が充実していてこの分厚さかと思ったらそんなことなく模擬問題は紙での記述ではなく、ダウンロードでの入手でした。実際の試験環境であるPC画面で確認できる点は受験者にとって嬉しい点かと思います。こちら込みで定価3960円は破格だと感じさせられました。
最後に
AI分野のシステムに共通することは、開発、分析したものの精度がでないケースが多いです。原因としてデータが整っていないケースもあれば、道具を使い倒せていないケースもあれば、使う道具がケースに対して合っていないケースもあったり様々かと思います。道具の使い方や基本的な知識を確かめるための手段の内の一つとして、資格試験に挑戦することは有効的かと思います。また、クラウド上のサービスは他のクラウドと比較した際に大きな括りだと同様のことができるケースが多いです。ただ詳細を言及した時に道具の自由度やリーチ可能な処理やユースケース、パフォーマンス、金銭的費用対効果が異なります。アーキテクチャ設計や技術選定をする上で道具の限界点と得意なユースケースを理解した上で賢く、応用的に使う術を身につけるファーストステップとして、本記事でご紹介させていただきます資格対策本は、対象の範囲を細かく学習して課題に向き合うのにちょうど良い本かと思います。
最後に、ご恵贈くださりました著者である佐野様、誠にこのような機会をいただきまして、とても感謝しております。引き続きよろしくお願いいたします。
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