タイムシフト系サービスが認められる?
── フェアユースが導入されると、具体的に何が変わりますか?
津田:どのような形の条文に決まるかによっても変わってくるでしょうが、ユーザーが自分のために著作物を使っているのに訴えられたというようなケースの裁判に影響を及ぼすのではないでしょうか。
例えば、先日も取り上げた「ロクラク」の裁判や、自分の音楽CDをサーバーにアップロードして携帯電話で聴ける「MYUTA」(マイウタ)など、この種のタイムシフト/プレイスシフト系のサービスはレコード会社やテレビ局に著作権侵害で訴えられてサービスをつぶされてきました(関連記事)。そうしたサービスの一部は認められる余地が出てくるんじゃないでしょうか。
また、改正著作権法では、検索エンジンがキャッシュのために、他人が作ったウェブページを自分のサーバーにコピーすることが法的にOKになりました(関連記事)。しかし純粋な検索エンジンとは言えない、サーバー利用型のRSSリーダーでも、同じように著作物を無断で複製しているという現状があります。そのあたりのグレーなサービスが、フェアユースの範囲内として合法と認められるかもしれません。
5月12日に開かれた、法制小委の第1回を傍聴したんですたが、出されている資料や論点は非常に面白かったです。全体的にも軽い論戦はありましたが、概ねポジティブなムードで話し合いが進んでいるように見えました(関連リンク)。今年は法制小委が著作権制度の大きな変更を扱う重要な審議会になるので、フェアユースに興味のある人はこの委員会の動きに注目しておくのがいいと思います。
筆者紹介──津田大介
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するメディアジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。
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