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義務教育学校

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

義務教育学校(ぎむきょういくがっこう)とは、初等教育小学校などにおける教育)と前期中等教育中学校などにおける教育)までの義務教育一貫して行う日本の学校である。前期課程(小学校に相当)と後期課程(中学校に相当)からなる小中一貫校

学校教育法の改正により2016年に新設された学校教育制度(第5章の2)。

概要

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義務教育学校は、「学校教育制度の多様化及び弾力化を推進するため、現行の小・中学校に加え、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う」[1]学校であり、初等教育と、中等教育の一部の合計9年間の課程を一体化させた学校である。

設置は、国公私立いずれも設置が可能となっている。なお市区町村は、学校教育法に基づく公立小学校・公立中学校の設置義務があるが(第38条[注 1]。第49条で中学校に準用)、義務教育学校を設置することでも設置義務の履行となる(第38条ただし書き)。

現行の小学校、中学校との違い

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教育課程や学校運営については設置者によって柔軟に運用することができるため一概には記述できないものの、先行の小中一貫校の主な実施例を挙げると次の通りである。

  • 早期カリキュラムの導入
  • 小学校段階からの教科担任制
  • 小学校段階からの定期考査(中間試験、期末試験。ここでは中学校と同様な定期的なテストを指す)
  • 授業時間の小中統一(20分休みや業間休みなし)
  • 児童会生徒会の一体化
  • 学校行事の小中一体化(小学生と中学生が一緒に運動会を行うなど)
  • 小学生と中学生の校則の統一化(小学生段階からランドセル登校が禁止の小中一貫校もある)
  • 小中一貫の部活動

など、学習カリキュラムのみならず、従来であれば中学校段階の教育の特徴とされてきた慣習的制度(定期考査、部活動、校則等)が小学校段階に早期化されている場合もある。

施設の形態

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小学生が学ぶ前期課程と中学生が学ぶ後期課程を同じ校舎にした「施設一体型」で小中一貫校化した場合、学校の統廃合が伴うため、現行の小中学校の小中一貫校化については、「学校統廃合及びそれに伴う教育予算の削減」ではないか、との指摘もある[2]

学年の区切り

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学年の区切りをいかにするべきかは議論も多く、6-3-3制、6-6制が主流の現行の教育制度の中において、公立の一部の学校が異なる学年区分を適用することには異論もある[3]

入学者選抜

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公立の場合、入学者選抜は行われない。これは公立の義務教育の中において「エリート校」化することを懸念する意見があるためである[4]。しかし、入学者選抜を行わない場合、柔軟なカリキュラム編成を生かした「早期カリキュラム」のような独自の一貫教育が可能なのか、疑問も指摘されている[注 2]

公立の義務教育におけるエリート教育に関する議論や横並び意識の強い日本の教育風土においては様々な課題もある[4]

メリット、デメリット

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小中一貫校(義務教育学校)の制度に関しては、これまで、中央教育審議会国会地方議会教育学者、教育評論家等の間で様々な議論が行われている。初めての制度の導入に伴うメリット、デメリットがあり、制度そのものについて推進意見、慎重意見もある[5]

以下には、小中一貫校一般ではなく、特に義務教育学校に関するメリット、デメリットを挙げる。

メリット

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  • 施設一体型の場合、コストダウンがはかれる(ただし、文部科学大臣は教育予算削減が制度の目的であることを否定的に答弁[2])。

デメリット

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  • 中高一貫教育中等教育学校制度等)との整合性がない。一つの自治体の中に小学校、中学校、中等教育学校、義務教育学校が併存することになる[3]
  • 施設一体型では学校統廃合が伴う。前身となる小学校・中学校は廃校の上で義務教育学校へ統合される。それに伴い学区が広域化することで通学距離が長くなる場合もある。品川区では18校の小学校、中学校が統廃合されて6校の小中一貫校になった例がある(実質12校の廃校)[6]
  • 世間一般に「義務教育学校」という名称に馴染みがない。また、正式名称として「学園」のみ(「学校」という文言を含めない)の名称を用いると、一般に認識されている他の政策的施設(福祉施設児童自立支援施設等)と判別がしにくくなる。

脚注

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注釈

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  1. ^ 第140条で東京都特別区を含む。
  2. ^ 「学習を前倒しで行っている学校に転入した場合にその教科が嫌いになる可能性」が指摘されている(『立法と調査』・2015. 8・No. 367「学校教育法改正に係る国会論議 - 小中一貫教育を行う義務教育学校の創設(文教科学委員会調査室))p.7

出典

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  1. ^ 学校教育法等の一部を改正する法律案の概要(文部科学省)
  2. ^ a b 『立法と調査』・2015. 8・No. 367「学校教育法改正に係る国会論議 - 小中一貫教育を行う義務教育学校の創設(文教科学委員会調査室)p.5
  3. ^ a b 平成24年7月13日中央教育審議会初等中等教育分科会・配付資料「義務教育学校制度(仮称)創設の是非について」
  4. ^ a b 「全国学力テストや特に学校選択制と結び付いたときにエリート校化する懸念はないのか。あるいは、義務教育学校がエリート校化して、選択制になって、そこにそういう人たちが集中していく、こうなると、義務教育、小学校、中学校の段階で学校間序列が付いたり格差ができたりする」との指摘もなされた。これに対し、下村文部科学大臣からは、「市町村立の義務教育学校は、小学校、中学校と同様に就学指定の対象とすることを予定しているため、入学者選抜は行われません。(以下略)」(『立法と調査』・2015. 8・No. 367「学校教育法改正に係る国会論議 - 小中一貫教育を行う義務教育学校の創設(文教科学委員会調査室))p.6
  5. ^ 学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第16回)「小中連携、一貫教育に関するこれまでの御意見について」(文部科学省)など
  6. ^ 『立法と調査』・2015. 8・No. 367「学校教育法改正に係る国会論議 - 小中一貫教育を行う義務教育学校の創設(文教科学委員会調査室)p.6

関連項目

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