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米CNETの6階建てのビルの屋上で、「iPhone 16e」(599ドル、日本では9万9800円)を高々と空に掲げる。自由の女神のまねごとをしているわけではない。iPhone 16eの「衛星経由の緊急SOS」機能をテストしているのだ。サンフランシスコのダウンタウンのど真ん中にもかかわらず、iPhone 16eはものの数秒で衛星電波をつかんだ。600ドル程度のスマートフォンで、こんな芸当ができる端末は他に思いつかない。
人々がスマートフォンに求める機能の上位に衛星通信が入ることはまれだ。たいていの人は、バッテリーの持ち(iPhone 16eは合格)、高性能なカメラ(こちらもクリア)、そして妥当な価格(この点はあと一歩)を求める。
iPhone 16eに対するAppleのアプローチは「タコベル」式だ。つまり、過去のiPhoneのパーツや機能を組み合わせて「新しい」iPhoneを作り出す。デザインとディスプレイは「iPhone 14」を思わせるが、プロセッサーはiPhone 16と同じ「A18」だ。そして、これがiPhone 16eのセールスポイントをあいまいなものにしている。新しいのに、古い。手の届く価格だが、安くはない。
iPhone16eを6日間にわたってテストしてきて、一番驚かされたのは、あまりにも「問題がない」ことだ。「iMessage」や「FaceTime」といったiOS 18の標準機能は当然使えるとして、他にも「Apple Intelligence」を使い、5Gで電話をかけ、共有したくなる写真や動画をたくさん撮影できた。「バイオハザード4」のようなゲームも遊べた。
いったい、これ以上の何を望むのか?
もちろん、こういったことはすべて「iPhone 16」や「iPhone 16 Pro」でもできるが、iPhone 16eなら、ずっと安く済む。確かにGoogleの「Pixel 8a」のような500ドル台(約7万円台)の端末と比べれば値頃感は劣るし、「格安スマホ」「廉価版」と呼べるほど安くはないが、600ドルの価値は十分に得られる。
キャンペーンやキャリア割引をうまく使えば、お値打ち感をさらに高められるだろう。
現在、「iPhone SE」や「iPhone 11」、またはそれ以前のiPhoneを使っているなら、iPhone 16eはカメラ性能やバッテリー駆動時間など、あらゆる面で進化を実感できるはずだ。AndroidスマートフォンのユーザーがiPhoneを試してみたいと思った時の最初に1台にもふさわしい。
iPhone16eは10代の若者や、最先端のテクノロジーにこだわりがない大人にも適している。今使っているiPhoneが4、5年前のものなら、なおさらだ。
iPhone 15とiPhone 16eの二択なら、個人的にはiPhone 16eを選ぶ。iPhone 16eには確かに「Dynamic Island」や超広角カメラ、MagSafeはないが、プロセッサーはA18だ。それに対して、iPhone 15が搭載している「A16 Bionic」は、2022年発売のiPhone 14 Proでデビューした、いわばおさがりのチップだ。そう考えると、A18の方が長くサポートされることは間違いない。
iPhone16とiPhone 16eのどちらかを選ぶとなると、少し判断に迷う。予算があれば、筆者なら標準モデルのiPhone 16を選ぶ。iPhone 16の方がディスプレイは明るく、MagSafeにも対応し、マクロレンズにもなる超広角カメラを搭載している。このカメラは料理などのクローズアップに最適だ。カメラが被写体に近づくと、自動的に超広角モードのクロップに切り替わる。
iPhone16eのフラットな側面は、iPhone12以降に発売されたすべてのiPhone(iPhone SEを除く)に共通するデザインだ。ガラスの背面は洗練されたマットな質感を持ち、落ち着いて高級感さえ感じさせる。背面にはカメラバンプがなく、レンズが1つあるだけだ。筆者が使っている端末はブラックなので、まるで「2001年宇宙の旅」に登場するモノリスのような、ミニマルな雰囲気をたたえている。
6.1インチのディスプレイはiPhone14をほうふつとさせる。上部には昔ながらのノッチ(切り欠き)があり、フロントカメラとFaceID用のセンサーが格納されている。使っている時はノッチの存在は気にならなかったが、Dynamic Islandがないことについては、料理中にバックグラウンドで実行されているタイマーのカウントダウンが見れないといった不便さは感じた。iPhone 16eが標的としているのは、Dynamic Island未対応の古いiPhoneを使っているユーザーなのかもしれない。この層であれば、そもそもDynamic Islandを知らないため、なくても気にならないだろう。
日常生活で使う分には、たとえ屋外でもディスプレイは見やすい。ただ、リフレッシュレートの高い「ProMotion」ディスプレイであればなおよかった(この点はiPhone 16も同様だ)。Androidなら、この価格帯の端末、場合によってはさらに下の価格帯の端末でも高リフレッシュレートのディスプレイがほぼ標準装備だ。Appleとしては、リフレッシュレートが高い高性能なディスプレイがほしいなら「iPhone 16 Pro」を買ってほしいということなのだろう。iPhone 16eのディスプレイは、iPhone SEの4.7インチのディスプレイより劣化しにくいと思うが、3年、4年と使い続けた場合にどうなるかは分からない。
iPhone 16eは、背面に内蔵された磁石を使って充電器やアクセサリーと接続できるMagSafe機能をサポートしていないが、これは致命的な問題ではない。MagSafe対応のiPhoneを使ったことがなければ、この機能がないこと自体に気づかないだろう。Dynamic Islandと同じ話だ。ただ、他の家族がMagSafe対応のiPhoneや充電スタンドを持っている場合、若干気分が悪いかもしれないが、おそらくサードパーティからiPhone 16eでもマグネットスタンドやアクセサリー類を使うための磁石内蔵ケースが登場するだろう。
先ほども述べたように、iPhone16eの背面カメラは1つしかない。しかし、一部の格安スマホのように平凡なカメラを2つも3つも搭載するくらいなら、たった1つでも質の良いカメラが搭載されている方がいい。iPhone 16eのメインカメラは、夜景モードでも美しい写真を撮影できる。4800万画素のセンサーは2倍のクロップズームも可能だ。しかも仕上がりは悪くない。画像はシャープで、ダイナミックレンジも広く、朝日や夕日といったコントラストの強い場面も問題なく撮影できる。色合いも落ち着いていて魅力的だ。
もちろん、標準モデルのiPhone 16は背面にもう1つ超広角レンズがついているので撮影の幅が広がるし、iPhone 16 Proの方が当然、写真の質は上がる。iPhone16eのカメラは、目の前の場面をさっと記録して友人や家族に送ったり、気負わずに撮った自撮り写真をInstagramに投稿したり、TikTokにちょっとした動画を投稿したいと考えている人に適している。
筆者はiPhone 16eを6日間使用してきたが、その間、充電したのは3回だけだった。30Wの充電器を壁のコンセントに差して使ったところ、30分で空の状態から59%まで充電できた。テスト期間は、カメラ機能からApple Intelligenceの各種ツール、グラフィックを多用したゲームまで、かなりハードに使った。
iPhone16eは1回の充電で1日は問題なく使える。使い方にもよるが、充電が必要になるまで1日半は持つ可能性が高い。
バッテリーを100%まで充電した状態で米CNETの動画ストリーミングのバッテリーテストを実施したところ、iPhone 16eは1時間が経過しても1%も減らなかった。参考までに、iPhone16とiPhone15は同じテストでバッテリー残量が97%まで低下した。バッテリーテストは今後も続けるが、これまでのところ、iPhone 16eのバッテリーの持ちは優秀だ。
iPhone16eには、iPhone16や「iPhone16 Plus」と同じ、Apple製A18チップが搭載されている。ただし、iPhone 16eに搭載されているA18チップはGPUコアが1つ少なく、4コアGPUになっている。しかし通常の使用であれば、ゲームのプレイも、動画の編集や保存、Apple Intelligenceの使用も問題ない。CPUのベンチマークテストでは、iPhone 16eはiPhone 16、iPhone 15、iPhone SEよりも高いスコアを記録した。
グラフィック性能のベンチマークテストでは、GPUコアが1つ多いiPhone 16の方がスコアは顕著に高かった。グラフィック性能に関しては、iPhone 15がiPhone 16eを上回ったことも注目に値する。
iPhone 16eは、Appleのソフトウェアとサービスへの入り口だ。iOS 18も快適に動作する。ホーム画面やコントロールセンターを自分好みにカスタマイズできるのも楽しい。Appleの緊急通報機能もすべて使える。携帯電話の電波が届かない場所でも、衛星通信を使って緊急通報サービスに連絡することが可能だ。
iPhone16eは、Appleが展開しているすべての機能を使えるわけではないが、選りすぐりの機能がつめこまれているという印象だ。
600ドルは、少なくとも筆者にとっては大金だが、iPhone 16eにはその価値があると感じる。数年をかけて分割払いで買う場合は別として、価格を少しでも抑えるためにキャリアのキャンペーンや割引、下取り制度などを調べることを勧める。もしAppleがiPhone 16eの価格を500ドル前後に抑えていたとしたら、もっと多くの機能を省くか、さらに大きな妥協をせざるを得なかっただろう。
iPhone 16eを1週間近く使ってみて、筆者はこれが良いスマートフォンであり、旧モデルからのアップグレードとして申し分ないと明言できる。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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