効率よりも安全を優先? 都会のニホンアナグマ
タヌキとともに日本人に親しまれてきたアナグマ。その採食行動から、都市化への適応力の高さが見えてきた。
都市化は野生動物の生活に影響を与えるが、その程度は種によって異なる。東京農工大学を中心とした国際共同研究チームは、研究例の少ない都市に暮らす哺乳類への影響を探ろうと、昔から里山にすむ動物として知られるニホンアナグマとホンドタヌキの採食行動を調査した。
研究チームは、東京都三鷹市にある人間活動が活発な都市の森林と、同じく八王子市の人里離れた山間部の森林で、初夏のヤマザクラの結実時期に、自動撮影カメラによる比較観察を行った。すると、都市の森林に生息するアナグマとタヌキは、夜間に現れる頻度が高く、実が落ちている木の下での滞在時間は、山間部の半分以下であることがわかった。また、イチョウとムクノキが結実する秋には、都市の森林に現れた両種が、ともに実の多い木ではなく、やぶなどによって根元が周囲から見えにくくなっている木を選んでいる様子が観察された。
効率よく食べるよりも人間を避けることを優先している可能性が示唆される結果だが、それを裏づけるように、外出が自粛されたコロナ禍で行われた都市の森林での追加調査では、昼間の採食が顕著に増え、時間も長くなり、実りの良い木を選ぶ傾向が見られたという。人間の行動変化に敏感に反応し、適応する力をもったアナグマとタヌキ。さらに繁殖や子育てなどの行動についても明らかになることが期待される。―― 熊倉 浩子(ナショナル ジオグラフィック日本版)
二ホンアナグマ
学名:Meles anakuma
種目:食肉目イタチ科
食性:雑食性
サイズ:頭胴長 60~80センチ程度(雌より雄の方が大きい)
生息地:北海道と沖縄を除く全土
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