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<米中対立の狭間にあるシンガポール>ASEANで高まる不安の中で続けられる“巧妙な外交”  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)

2025年2月28日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年2月17日

 2024年5月、シンガポールの新首相となったローレンス・ウォンは、その就任演説の中で、冷戦後のアジア太平洋では平和と安定が継続していたが、「このような時代はもはや終焉して戻らない」と明言した。大国間の国際秩序をめぐる争いが起こり、保護主義やナショナリズムが蔓延する可能性を指摘しつつ、多国間主義の崩壊による混乱や暴力に備えなければならないと警告し、国民にも相応の覚悟を求めた。

シンガポールはどのような米中への意識を持ち、外交を展開しているのか(Weerasaksaeku/gettyimages)

 特にウォン首相やシンガポールが懸念するのは、地域を覆う米中対立の影響である。小都市国家のシンガポールは、機動的修正を伴ったバランス外交を原則とする。この中で1970年代後半から現在まで、米国が提供する地域的な安全保障体制に依拠することで、周辺国を牽制しつつ、自国の存立を担保してきた。一方で、冷戦後には、いち早く中国市場に関与して巨額投資を行い、その経済成長による域内経済の発展から、大きな実利を享受してきた。

 だが、このシンガポールの安全保障と経済成長の両輪モデルは、過去10年ほどの構造変化の中で困難に直面しつつある。中国の地域内における拡張主義は、経済面にとどまらず、安全保障面にも向けられている。一方で、米国は、米中対立が深刻化・構造化しているにもかかわらず、アジア太平洋への関与、特に東南アジア政策には揺らぎや軽視を顕著にしている。

 日本では、シンガポールは華人主体の国であるため「親中的」という暴論も見受けられるが、現実は単純ではない。人口の7割以上は華人系だが、その多くは国民教育や徴兵などを経て、「シンガポーリアン」としての確固としたアイデンティティや矜持を持ち、現代では必ずしも中国に親近感を抱いているわけではない。だが、否が応でも進む地域の不安定化の中で、シンガポールは、「生き残り」に向けた巧妙な外交戦略を展開している。


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