堅物と遊び人の恋愛物には永遠の人気があるため漫画だって何百と読んだ気がする。取り合わせの妙が吉と出る話になる。本作は、そのタイプのロマンスの見事な手本のよう。二人それぞれの持つ背景、キャラの違和感無い振る舞い、中身充実の構成力、無駄のない展
開。申し分のないHQを楽しんだ。
冒険を楽しむヒロイン、アンナを通して衝動に身を通じてから彼を信頼していく過程を味わった。
「いつも先のことを/慎重に考えていたら/何もできなくなる」「時には何も考えず/衝動に/身をまかせることが/人生のスパイスになるさ」。そうなんだけども、なかなか。お話で追体験。「わかってる/もう手遅れ」、読んでいて、私のほうまで胸が「!」と踊る、作者の魅せ上手。
孤独な少年期を送った彼レオ、「そんな激しい恋情など僕は知らない」と言っていたのに、慈しんで見守ってきた妹からの気づかせ方がまた良い(彼の顔は好みではないが)。
理解のない親との決別シーンも良かった。アンナの反撃はスカッとした。和解出来る関係ならそれは綺麗だろうが、出来ない関係もある。綺麗事ではない部分が話を引き締めた。貴族の出でも、「叩き上げ」の富豪、親にびた一文要りません、との、啖呵がすごくいい。またこれは、貴族ひしめくHQ世界、ひいては、貴族の称号と地位、名誉や財産などへの闇雲な憧れへのアンチテーゼ。それがカッコいい。
邦題に「海賊」の文字があるのは、クルーズで派手に暮らしている感じ、親にさえ彼の資金源不明、という辺りからかなと読後思ったら、再読で、二人の出会い場面でのアンナが見る彼の第一印象であることの失念だった。
漫画家の方々は、最初に人物のセリフ(ネームというのか?)を考えるというが、それだけで見事な骨格、ここに島、リゾート、クルーズ、海、本土など、これだけ更に描かれて素晴らしい。
ヒロインの職業と外見のギャップは話のネタにもされていたのだが、馴染めなかった。アンナのご両親も、対読者の欺き方はドラマ上のテクニックではあっても、対アンナにもというのは、話中の親子関係のリアリティが減った気がした。
妹がモデルさんに見えにくい。「素」だからと自分を納得させた。
彼の持って行き方、セリフ、ヒロインの各エピソードでの言動の打ち出し方、リアクション、いちいちわざとらしさがなく、話の細工感を気取らせず、恋愛物の良さが全面に出ていて堪能した。
さすがだ。
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