土って何だろう? インターネットで調べると、「土壌 地表を覆う物質層(つち)」と出てくる。地球上の陸地に分布する土壌を全て集めて平均すると地表わずか18センチに過ぎない。土壌の生成速度は日本の気候では1年で2ミリ程度。ほんのわずかな地表の土を上手に利用しないと、あっという間に良くない土になってしまう。

 日本土壌協会の参考書「土づくりと作物生産」によると、土の役割は①作物体を倒れないように支える②作物が必要とする水と酸素を根から供給する③窒素、リン酸、加里などの養分を根から供給する④養水分や土壌微生物相の変化などを和らげ、長く維持しようとする緩衝能を持つ―である。

 その土を上手に使うためには大事なポイントが三つある。物理性と化学性、生物性だ。今回は物理性について紹介したい。

 物理性が大事とはどういうことなのか。平たく言うと「植物が健全に育つような土台を作ること」である。ストレスを感じることなく根が張れるように土が硬くないことと、程よく空気と水が保持されるように人が少しだけ手を加えてバランスを整えることだ。

 地域によっても土の性質が違う。群馬は関東ローム層の上に黒ボク土(植物が枯れ、土に還った腐食物質を含む黒い色をした土)が堆積しているところが多い。

 この黒ボク土はクセがあるが、膨軟で作物を作りやすい。太田市の藪塚では当社で使用する多くの大根が栽培されている。日本各地を回って大根を見てきたが、ここに勝る大根はないと思っている。

 板倉町には広大な湿地帯、ヨシ原が特徴の渡良瀬遊水地がある。ここは水位が高く灰色低地土、グライ土などが多い。日本土壌協会の参考書には「灰色低地土、グライ土などは低地にあることから、地下水位が高く水稲が多く栽培されている」と書いてある。確かに周りは田んぼが多く、夏にはカエルの合唱が毎日聞こえてくる。

 このように場所によって土の種類が違う。さらに言うと、砂が多いのか粘土質なのか、色も黒、黄、赤とさまざま。土は「十人十色」、いや「十カ所十色」なのだ。

 その土地の特徴を知ることが大事な一歩だ。自分で畑に穴を掘り、どんな有機物が堆積しているのか断面を見る。表層からどの深さまで軟らかい土なのか、どこから硬くなるのか触ってみる。硬い層が表層に近いと排水性が悪く植物に病気がまん延しやすくなり、根の量も増えにくい。

 このような状態を見極めて、硬い層を崩したり、堆肥を入れて腐植を補ったりと植物が育ちやすいように少しだけ手を加える。一生懸命になってトラクターで何度も耕し過ぎると土の粒子が細かくなり過ぎて空気や水の通り道がなくなり、圧密状態になり根が伸びにくくなる。耕し過ぎは要注意。人生と一緒で頑張り過ぎず、ほどほどがちょうど良い。

 【略歴】漬物製造の新進社員。2023年に当時全国で300人弱の民間資格「土壌医」に合格した。首都圏土壌医の会理事。館林商工高―太田情報商科専門学校卒。