概要
Amazon Web Services (AWS) を使用している組織がオープンソースのエンタープライズ Linux® ディストリビューションを実行すると、さまざまな種類のインフラストラクチャに対応できるため、開発チームと運用チームがあらゆる環境で共にイノベーションを生み出せるようになります。
Linux と AWS を組み合わせて実行すると、組織はクラウド環境に移行し、ハイブリッドクラウド管理を単純化する自由と柔軟性を獲得できます。また、アプリケーションを短時間で大規模に構築、デプロイ、配信するためのツールも得ることができます。
Linux と AWS の機能
Linux と AWS がなぜ極めて有用な組み合わせなのかに注目する前に、それぞれのテクノロジーとそのメリットについて理解することが重要です。
Linux
Linux はオープンソースのオペレーティングシステム (OS) であり、世界最大のオープンソースソフトウェア・プロジェクトの 1 つになっています。Linux はオープンソースであり、GNU General Public License (GPL) の下でリリースされているため、誰でもソースコードの実行、調査、変更、再配布ができ、変更したコードのコピーを販売することも可能です。クラウド・コンピューティングが誕生し普及して以来、Linux は企業の間でクラウド・コンピューティングおよびクラウドサービス用の OS として人気を保ち続けています。
AWS
AWS は初のグローバルクラウドプロバイダーであり、現在でも市場最大手です。1 世界中に分散したデータセンター・ネットワークを通じて、ワークロードとアプリケーションのスケーリングに必要なコンピューティング能力をセキュリティの高い方法で仮想的にオンデマンドで利用できるようにしています。これにより、現在の市場の課題に機敏に対応できます。
AWS は Linux OS も提供しています。最新バージョンは Amazon Linux 2023 (AL2023) です。AWS クラウドでのアプリケーション実行に AL2023 を使用する場合、AWS Free Tier を通じて一定期間無料で利用できる可能性があります。
AL2023 はさまざまな AWS サービスと連携し、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) Graviton ベースのインスタンス向けに最適化されたパフォーマンスを提供します。
Red Hat のリソース
AWS でエンタープライズ Linux ディストリビューションを実行するメリット
AWS でエンタープライズ Linux を使用すると、オンプレミスで使用する場合と同じメリットを享受でき、クラウドシステムとオンプレミスシステムをより簡単に統合できます。エンタープライズ Linux ディストリビューションは AWS ユーザーに以下のものを提供します。
- オンプレミスとクラウドの両方で、元のプロセス、ビジネスプラクティス、スキルを引き続き活用しながら、新しいプロセス、ビジネスプラクティス、スキルを導入できる柔軟性
- オープンソース・コミュニティからのイノベーション
- インフラストラクチャ全体の一貫性 (これによってクラウドへの移行の複雑さを軽減できる)
- 1 つの OS で標準化することによる市場投入時間の短縮とコスト削減
- コンテナの可搬性
- オンデマンドのスケーラビリティ
- セキュリティ向上のための継続的なパッチ適用とアップデート
先進的な IT 環境で AWS のメリットを最大限に活用するには、適切な Linux ディストリビューションを選択する必要があります。ディストリビューションが異なれば、サブスクリプションモデル、コスト構造、サポートモデル、既存のインフラストラクチャやサードパーティ製テクノロジーとの統合も異なります。
AWS で Red Hat Enterprise Linux を実行する理由
クラウド・コンピューティングを導入すると、効率的に拡張し、イノベーションを生み出して、競合他社、顧客のニーズ、急速な市場の変化に対応することができます。しかし、クラウドへの移行にあたっては多くのことを考慮しなければなりません。柔軟性と拡張性を得ると同時に、セキュリティ、管理性、信頼性の問題にも対処する必要があります。どの Linux ディストリビューションを選択するかによって、コスト、管理、セキュリティに大きな違いが生じる可能性があります。
Red Hat は 25 年以上にわたる経験に基づく Linux の専門知識を持っています。Red Hat® Enterprise Linux は当社の基盤プラットフォームであり、当社のツール、製品、パートナー・ソリューションの幅広いポートフォリオとの統合および連携が可能です。Red Hat Enterprise Linux は、AWS を含む数百のクラウドと数千のハードウェアベンダーおよびソフトウェアベンダーで認定されています。
AWS 上で Red Hat Enterprise Linux を使用するか、オンプレミスで使用するか、あるいその両方で使用するかに関係なく、Red Hat Enterprise Linux によってすべてのエンタープライズ・アプリケーションとワークロードを管理できます。高性能コンピューティングやハイブリッドクラウドのユースケースに対応する安定した選択肢であり、AWS や Microsoft Azure など、多くの業界パートナーとの互換性があります。
Red Hat Enterprise Linux と AWS を組み合わせることで、次のような両方の製品のメリットを享受できます。
管理の単純化による複雑さの軽減:Red Hat Enterprise Linux により、アプリケーションのクラウドへの移行に伴う複雑さと管理を最小限に抑えることができます。これは、サードパーティのハードウェア、ソフトウェア、およびツールプロバイダー全体の広範な統合によって可能になるオープン性と一貫性を通じて実現されます。
Red Hat と AWS の高度なツールは、プロビジョニング、スケーリング、ポリシーの適用、廃止まで、アプリケーションの管理を自動化し設定します。Red Hat Enterprise Linux Web コンソールは、Linux 初心者でも使いやすいユーザー・インタフェースを備えており、時間を節約し、日々のシステム管理を単純化します。自動化されたシステムロールにより、セキュリティグループおよびワークフローの最適化と、最小限のリソースによる長期間の維持が容易になります。RPM Package Manager (RPM) は、ユーザーが Linux システムの特定のリポジトリでソフトウェアパッケージとアクセス許可をインストール、更新、削除、追跡するのに役立ちます。
システムを脆弱性から保護するセキュリティ機能:Red Hat Enterprise Linux と AWS は、継続的なセキュリティに対する 2 つのプロセスアプローチを通じてシステム全体の一貫性を検証します。
- OS が AWS Marketplace に記載されるためには、検証プロセスに合格する必要があります。
- 人工知能ツールである Red Hat Insights (Red Hat Enterprise Linux に含まれる) と AWS Inspector がエンタープライズ環境を常に監視します。
Red Hat は、Linux インスタンスを中断することなく脆弱性に対応するための Linux カーネルライブパッチ機能を提供します。また、Red Hat Enterprise Linux のセキュリティアップデートは利用可能になり次第適用します。これらのアップデートにより、OS の信頼性を確保し、ユーザーデータを保護し、セキュリティの脆弱性が発見された場合にはそれを修正できます。
便利な支払いオプション:Red Hat は AWS と緊密に連携しており、便利な購入方法と価格設定を提供しています。お客様は、AWS での確約利用料を Red Hat Enterprise Linux の購入に充てることができます。これにより、AWS Marketplace での購入時に、AWS との確約利用契約に記載されている割引 (Enterprise Discount Program と呼ばれる) を利用できます。
あるいは、Red Hat はお客様と協力して、お客様のニーズに合わせた支払いプランを作成することもできます。また、従量課金制のクラウドオプションも利用できます。
ハイブリッド IT 環境をサポートする柔軟性: Red Hat Enterprise Linux は、クラウド、オンプレミス、エッジなどの場所を問わず、一貫したパフォーマンスとセキュリティを提供することで、現在のハイブリッド IT 環境に対応します。さらに、Red Hat Enterprise Linux は、AWS で最適なパフォーマンスを発揮するように設計されていますが、大きなパートナーエコシステムの一部でもあります。たとえば、SAP 環境は Red Hat Enterprise Linux での実行が認定されていますが、Red Hat Enterprise Linux はその認定を受けているわずか 2 つの Linux ディストリビューションの 1 つです。この広範なエコシステムによりベンダーロックインから解放されるので、さらなる柔軟性が実現します。
AWS で稼働する Red Hat ソリューションは、パフォーマンスが最適化されるように共同開発されています。また、Red Hat Enterprise Linux は、Red Hat ユーザーが従来のオンプレミス・デプロイメントに期待するのと同じレベルのセキュリティ、スケーラビリティ、管理性、信頼性を AWS ユーザーに提供します。
CentOS Linux 7 からの移行をお考えですか?Red Hat と AWS は CentOS Linux 7 ユーザー向けにカスタマイズされたコスト効率の高いサービスを提供し、この移行を容易にします。
Red Hat Enterprise Linux Server を 60 日間無料で試用できます。マニュアル、役に立つ動画、ディスカッションなどを参照できる、Red Hat のカスタマーポータルへのアクセスも提供されます。
AWS 向け Red Hat Enterprise Linux を使ってみる
1.Vailshery, Lionel、 「Worldwide infrastructure as a service (IaaS) and platform as a service (PaaS) hyperscaler market share from 2020 to 2023, by vendor」、 Statista、2024 年 2 月 22 日。
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