大船渡山火事 自宅迫る煙恐怖 避難「いつ終わるのか…」
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

大船渡市赤崎町で26日に発生した山林火災で、市は27日、避難指示の対象を約3300人に拡大した。延焼は続いており、民家などの被害は80棟以上に上る見込みだ。現場では懸命な消火活動が続いている。
■受験控え不安
避難指示の拡大で避難者も増えた。大船渡市によると、27日午前7時現在で小学校などに計540人が避難していたが、同日午後8時現在で851人に上った。
市立
綾里地区の会社員、山下聖人さん(36)は、避難所に布団が足りなかったため、知り合いから集めて避難所に提供し、自分は車中泊。「いつ終わるんだろう」と不安そうに話した。
三陸公民館では暖房やパンなど食料も十分用意されているという。
綾里地区の畠山カツ子さん(84)は「家の前まで煙が迫り恐怖を感じた。東日本大震災では家の目の前まで津波がきたが、まさか山火事で逃げることになるとは思わなかった」と語った。
市立東朋中学校3年の女子生徒は26日夕に学校に迎えに来た祖父の運転で同公民館に避難。「自宅にあった勉強道具は燃えてしまったと思う」と肩を落とす。手元に残る教材で勉強を続けるが、「来週に高校受験を控えているので不安だ」とこぼしていた。
■避難指示を拡大
「残念ながら犠牲者が出た。人命第一で活動し、避難誘導にも意識を高めていきたい」。大船渡市は27日夜に記者会見を開き、犠牲者とみられる一人の遺体が見つかったことを受けて、渕上清市長は沈痛な面持ちで語った。
市は同日午後、避難指示を拡大。新たに赤崎町の大立、永浜、清水、蛸ノ浦、長崎、外口の計467世帯1192人を対象とした。すでに対象となっている綾里地区全域と合足を合わせて、市内計1340世帯3306人となった。
県は市とともに、被災者を受け入れる住宅の準備を始めた。既に80棟以上の住宅などが焼損している恐れがあるためで、まず100戸を確保するという。
生活への影響も出ている。停電は大船渡市三陸町綾里の約490軒、同市赤崎町の約20軒。三陸鉄道リアス線は盛―三陸駅間で27日始発から終日運転を見合わせた。
同市教育委員会によると、市立綾里小が27日から3月7日まで、市立東朋中は28日まで臨時休校。市立赤崎小も28日を休校と決めたという。
夜通し消火「家族生きてるだけで」
消防団班長・志田さん
「ここで生まれ育って住み慣れた場所。疲れていてもギリギリまで頑張って活動していた」。大船渡市消防団第10分団第4部の班長を務める同市三陸町綾里、会社員志田穣さん(39)は、緊迫した現場での消火活動を振り返った。
19日に発生した山林火災を皮切りに、連日現場に出動していた。26日に2件目の火災が鎮圧されたところで休息を取っていたのもつかの間、けたたましくなる再びのサイレンに目が覚めた。
現場に向かい、活動を始めようと思った矢先、目の前に火の手が見えた。その瞬間、風にあおられ一気に炎上。危険を感じ、近隣住民を避難させながら離れた。「黒煙に包まれ、自分がどこに立っているかもわからなくなる」と話した。
夜通し消火や警戒にあたり、各地から応援部隊が来たことで消防団の活動は一区切りとなり、27日午後に避難所で家族と再会した。
自宅周辺には火が迫っているといい、家が残っているかはわからない。「家はもう諦めています。でも、みんな生きているだけでいいっすよ」。志田さんは煙の見える山林を見つめていた。