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八ッ場ダムと同規模の戸倉ダムが6年前に消えたのはなぜ? - 保坂展人のどこどこ日記
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八ッ場ダム問題の奥は深い。『週刊朝日』に掲載された「八ッ場ダム、隠された真実」との私のルポに対して、いくつかの反響があった。私もうっすらと記憶していたが、2003年(平成15年)に建設中止となった戸倉ダムに注目せよというメール投書があった。八ッ場ダムと同規模の巨大ダムで、尾瀬の入口にあり沼田で利根川に注ぐ片品川に建設されようとしていたダムで八ッ場ダムとの比較が面白い。ご本人の承諾を得て、ここに掲載させていただく。

[引用開始]

本日週刊朝日の「八ッ場ダムの隠された真実」拝見しました。
地元に居ながら知らないことも多々あり、以前からの建設反対派の私には心強い記事でした。

処で、先日埼玉県知事がこの件で古巣の民主党を激しく攻撃してました。これは全く筋違いで、それどころか知事は埼玉県民に謝罪をし責任を取るべきです。これは都知事も同じです。

今はもう誰も語る人は居ませんが、地元の政治家、国交省の官僚たちが大きな過ちを犯した戸倉ダムのことです。

戸倉ダムは昭和47年ごろから計画が始まったもので、八ッ場ダムとはほぼ同時進行で推移してきたものです。

日本広しといどもこれほど条件が揃ったダムは他にはありません。
総貯水量9400万トン(八ッ場ダム10、700万トン)と9割ほど。湛水面積200ha(八ッ場310ha)と面積は3分の2で済みますし(その分深い)遜色ない規模です。

何よりもすばらしいのは、水没人家なし。土地の9割が東京電力所有地、群馬県片品村の住民こぞって完成を願ってました。勿論反対住民はほとんどなかったというものです。(当時私は片品村の住民でした)只、猛禽類の生息地域でその事は心配の種でしたが。

驚くべきはその費用です。戸倉ダム1230億円 これは取り付け道路数キロ一本と150mほどの橋梁一本のみで済み、ほとんどがダム本体の工事費で八ッ場と比較する上で多めに見積もったと言われてます。従って下流域の負担金は例えば埼玉の場合190億円、方や八ッ場ダム574億円と戸倉の場合3倍です。

同時進行の両ダムをしっかりと比較検討、精査したなら戸倉を採用せざるを得ない筈にも拘らず、八ッ場を選んだのは各都府県が如何に杜撰であったか、そうでなければ地元自民党政治家の犯罪の臭いすら感じさせるこのような一連の動きに加担したことになります。

当初は戸倉ダムのせいぜい2,5倍ほどの金額でしたが(結果は5倍6倍になるそうですね。)いずれにしても地元関係政治家は、金額が大きい事にしか眼が向かず「八ッ場採用」ということですね。

結果莫大な損害を都民・県民に背負わせたことになりました。結局、戸倉には拠出金を出せないと言うことで中止に追い込まれました。片品村には何とか整備費とかいって、22億円の謂わば違約金のようなものが支払われ、戸倉ダムはなかったこととなりました。皮肉なことにお陰で片品村は子孫に美林を残すことが出来ました。

今、八ッ場を中止したときの費用が、ダムを完成させたより高くつくと盛んに喧伝されてますが、今回の記事を見て納得いたしました。例え如何に費用が掛かろうが、ダム本体工事をやめて後世に美しい吾妻渓谷残せればこれほど良いことはないのではと思います。

今が最後のチャンスです。前原さんには是非とも頑張ってもらわなくてはなりません。その上で保坂先生のこの記事は大きな追い風になったと思います。お忙しい中にこんなメールお送りして迷惑とは存知ますが、この記事に感銘を受けましたので一言申し述べました。

[引用終わり]

ネットで少し調べてみると、戸倉ダム中止の理由は「水需要の減少」を埼玉県や東京都が言い出して、撤退を決めたことにあった。昨今の埼玉県上田知事や、東京都の石原知事の言動を思い出すと、どのような整合性があるのか首を傾げたくなる。読売新聞の地元版が3回連続のシリーズで伝えていた。一部を引用する。

[引用開始]

ダムは1982年に計画が浮上。水没地区に居住者はなかったが、地権者には先祖の土地を手放すことに抵抗もあった。だが、約45億円に上る地元支援事業が示されたこともあって打開に向かい、住民からの用地買収はほぼ終了。94年度に国道付け替えなど周辺工事が着工していた。村民も、ダム建設と支援事業を前提とした村づくりにかじを切った。

 だが、5年間の工事中断を挟み、2003年12月、大口の事業費を負担する埼玉県が「水需要の縮小」を理由に撤退を表明。東京都なども追随し、同月中には最終的な中止が決まった。

 地元支援事業は曲折もあったが、計約35億円分は実施が決定。間違えて掘った穴を埋め戻すかのような、「村の復旧」が始まった。

 運動公園の一部もその一環。支援事業に基づく地域振興策は、尾瀬の観光情報発信拠点となる「尾瀬自然文化博遊館」(仮称)や森林公園、散策道の建設など観光が柱となり、尾瀬の玄関口へ追い風としたい考えだ。[読売新聞・群馬版]



「違約金」か「補償事業」かの金額の違いはあるが、八ッ場ダムが論じられる時に群馬県の利根川水系で建設中止となった戸倉ダムとの比較は、ひとつの論点になる。地元では「戸倉ダム再建設」への期待が強いと新聞記事にはあるが、私はその立場をとるものではない。しかし、八ッ場ダムだけを狭い視野で見て論じるのは間違いで、国土交通省と流域都県の自治体にはこの半世紀の河川行政の見直しを客観的事実をもとに行ってもらいたい。

八ッ場ダム問題の奥はますます深い。

<お知らせ>
10月13日(火) 19時~ 阿佐ヶ谷ロフトA『保坂展人 再起動』
の場で、『八ッ場ダム 隠された真実』のライブレポートをすることになった。ゲストスピーカーに市民運動の立場からこの問題に取り組んできた「八ッ場あしたの会」事務局長の渡辺洋子さんに来ていただくことにした。充実した会にしたいので、都合がつく方はどうぞ。



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