ツイッターやブログでも、そして飲み会でも、私は周りの人にたくさんの「質問」をします。
質問のトピックは、社会制度や起こったばかりの事件、もしくは、飲んでいる相手が手掛けているビジネスについてまで様々ですが、私がそれらについて質問をする理由は、「そのトピックに関心があるから」です。
なぜそんな当たり前のことを(わざわざ)言うのかと、不思議に思われるかもしれません。
でも「そんな当たり前のこと」がわかってもらえないことも、よくあるんです。
★★★
図を見てください。青色の人(この場合は私)が、あるトピックに関心をもち、それについて質問をしています。
その質問を受けた人(白色の人)の多くは、下図のように「ちきりんに回答」してきます。
これ、当たり前だと思いますか?
全員が、こう反応するはずだと思いますか?
実は、まったく異なる反応を示す人もいるんです。
それは下記のような人です。
第二図と第三図の白色の人の違いが何か、わかるでしょうか?
第二図での白色の人は「ちきりんの質問に答えたい!」と思っています。「答を出したい」と思っているんです。
でも、第三図の白色の人は、「このトピックについて、自分ももっと考えたい!」と思っています。
つまり第三図の人は、答を探すことより、思考することに関心があるんです。
★★★
第二図のように返事をしてくる人は、私の関心が、質問トピックではなく、
自分に向いていると考えているのかもしれません。
だから「問うているちきりんに対して、早く自分の意見を言わねば!」とプレッシャーを感じているのかもしれない。
時には自分が「試されている」、自分の「知識の有無を問われている」と考える場合もあるでしょう。
つまりこの人は、私がその質問をした理由が「そのトピックについて関心があるから」だとは理解していないってことなんです。
「トピックに関心があり、より深く考えたいんだな」とは思わず、「答が言えるかどうか、自分が試されている」と考えるから、「とにかく回答せねば!」と思っているのかもしれません。
いずれにせよ、冒頭に書いたように「そんな当たり前のこと」=「私が質問するのは、そのトピックに興味があるから」というごく当たり前に思えることが、正確に伝わっていないこともよくあるってことなんです。
★★★
どちらがいいかって?
それは場合によるのでなんとも言えないのですが、一度、反対の立場で考えてみてください。
今度は、あなたが「青色の人」だとします。
あなたは成功した起業家か有名な投資家で、起業家志望の若者がワンサと集まってくるとします。
そこであなたは、彼らの手掛けているビジネスについて質問をします。
下図のように、大半の若い起業家が「一生懸命、あなたに回答」している中、ひとりだけ「そのビジネスに関する自分の意見」を一生懸命、述べていたら?
あなたは、どちらの若者に投資したいですか?
どの若者と議論したいですか?
企業の面接時のグループディスカッションでも同じですよね。
お題として出されたトピックに興味を示す人と、面接担当の社員に回答しようとする学生がいたら、どっちを採用したい?
★★★
私はツイッターでもブログでも、そしてリアルな飲み会でも、いろんな質問をします。私がそれらについて質問をする理由は、「そのトピックに関心があるから」です。
こんな「あたりまえのこと」をわざわざ書いているのは、そのトピックについて深掘りして考えるより、「私に返答してくる人」のほうが、圧倒的に多いからです。
なぜ、人は問われたトピックについて「自分のアタマで考えよう」とせず、質問者に回答しようとするのでしょう?
理由のひとつは、
・そのトピックに関するより深い洞察や、より斬新で革新的なアイデアより、
・憧れの質問者からのポジティブな評価を
「より得たいモノ」「より大事なもの」だと考えているからじゃないでしょうか?
質問者が、自分の尊敬する人であったり、偉大な人、有名な人であればあるほど、そう考える回答者が増えます。
「大好きなあの人の質問に答えたい!」「あの人に評価されたい!」と考えるわけです。
相手が社長だったり、重要な投資先のキーパーソンであれば、特にそうなる人が増えるでしょう。
「大事な人に、アホだと思われてはならない!」ということが「第一目的」になってしまうんです。
でもね。先ほど示した、ビジネスプランを説明する駆け出し起業家と、有力投資家の例を思い出してください。
あなたなら
「質問者に評価されること」を、自分がやっているビジネストピックに関する議論を深めることより「大事だ」と考える人に、投資したいですか?
自分が尊敬する企業家や投資家、もしくは、自分を評価する立場の人の前にでれば、誰だって緊張します。「何か聞かれたら、すぐに気の利いた答えを返したい!」と思うでしょう。
でもそれって(ちょっと厳しい言い方ですが)、「僕はあなたに評価されることが、スゴク嬉しいんです! 僕のビジネスプランについて考えを深めることよりずっと!」って言ってるようなものです。
そこにゴールがある人って・・・どうなの?
もう一度、ふたつの図を見比べてください。
これは、「質問者に正しい答を言って、評価されること」を目的(ゴール)にしている人の回答です。
そしてこちらは「とにかく考えるコトが大好き!」な人が集まった時の議論です。
いつかあなたも、自分が尊敬する人に会う機会を得、その人があなたの手掛けているビジネスについて質問してくれるという幸運に恵まれるかもしれません。
その前に、この二つ概念の違いだけは理解しておきましょう。
「質問にスグに、反射的に、素早く返事する」ことと、「とにかく考える」ことはぜんぜん違うことだと。