ケインズをひっぱたきたい 希望は内戦
「貧しいのがイヤなら、働けばいいぢゃない」 尊敬する作家はツヴァイク。シートンです。
このエントリーは 名誉白人 in UK
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20110816/1313499796
の続きです。
なんか、名誉白人に噛みついている人がいますねぇ。元々、名誉白人ってのは、「支配層にお追従する輩」の意味で使ってますから、「差別だ!」とか騒がれても、「バカじゃないの?」で済む話なのですが、イヤなら、虎の威をかるキツネでも、バナナ*1でも、カンダタでも、ニクブタpremium*2、スネ夫、でも好きな呼び方がありですよ。どれにします?
さて、
赤木智弘、左舷、弾幕薄いよ!なにやってんの!今こそ、イギリスで本を出すべきじゃん。一枚4000円のTシャツの話なんて城繁幸としている場合じゃないよ。
それにしてもねぇ、赤木氏の「丸山真男をひっぱたきたい 希望は戦争」が出たとき、ネットでの反応は肯定的だったのに。
フリーターである自分が、なぜ戦争に希望を見いだすにいたったのか。
それは、俗流若者論を通して、社会全体がすべてを「若者がおかしいから悪いのだ」というイメージで了解していること。
バブル崩壊後に何の責任もとらず、正社員として安定した生活を送ってきた「おとな」たち。彼らが、一部の世代を見殺しにしている現状から、必死に目を背け続けていること。見殺しにされている団塊ジュニア世代の自分が、人間としての尊厳を得るためには、まず国民全体に「見殺しの罪」を直視させなければならない。
赤木は、若者を見殺しにするこの国の現状を、右派も左派も含めたかたちで、徹底的に批判する。そして、彼に説教をする知識人に対して、こう訴える。説教するなら、職をくれ!
(若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か の紹介より引用)
イギリスでも同じ、というか階級差別と人種差別*3のあるイギリスではもっと状況は酷いかもしれない。なのに、日本においては赤木の話に「うん、そのとおり。まったくだ」と言いながら、イギリスの若者に対して“あいつらは違う”って突き放しちゃえるってどういう事よ。
いいかい?あの増田氏の論調は、「今時の若者の体たらくを嘆いてみせるオヤジ*4」以外の何者でもないじゃん。
イギリスの若者たちをたやすく、アイツ等は違う、と切断処理してみせるなら、自分たちも、「アイツ等は怠け者で、正規職につこうともせず、アニメやエロゲにうつつを抜かして、結婚もしないで子供を産み育てるという社会的責任も果たさない、税金もろくに納めず、消費活動にも消極的で、ダメなゆとり世代連中だ*5」と扱われて切り捨てられる事を覚悟した方が良いよ。
参考:ネットカフェ難民
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071210/1197275919
若者が教育・就労・医療の充分なサポートも受けられず「貧困の再生産」が続いてきたイギリスは日本の状況の先行例じゃん*6。そこで、声高に「福祉を削れ」って声が上がるとすれば、そしてそれにシンパシーを寄せてしまうなら、日本でも同じになるだけなのに。日本の二大政党とやらが、どこを手本にしているか知らない訳じゃあるまい?実際、自民党は子供手当を廃止に追い込んだ。高校無償化も時間の問題だろう。
リソースがなんちゃらかんちゃら言っているヤツもいるが、紹介したポリー・トインビーの「中流社会を捨てた国」を読んでみればいい。
1997年に労働党が政権についてから、上位10%のもつ個人資産が全体に占める割合は、47%から54%に増えた。
イギリスとアメリカでは、親が裕福だと子どもも裕福になる傾向にある。
1979年、サッチャー政権は誕生すると同時に、所得税の最高税率を83%から60%へ引き下げた。1988年にはさらに40%へ下げられた。
イギリスの億万長者54人の資産合計は18兆9000億円であるのにもかかわらず、所得税として納めたのは、わずか22億円ほどでしかない。うち32人は所得税をまったく納めていない。高額所得者たちには、自分たちより質素な生活を送っている人々を思いやる姿勢、共感する姿勢が欠けている。資産を持つ喜び、我が子がすくすくと成長を遂げていく喜び、これらを高額所得者のみが独占していいはずがない。
会社の取締役たちは、マリー・アントワネットも赤面するような巨額な報酬を受け取っている。
2007年の会社トップの平均報酬額は1億1055万円。これに、ボーナス・年金・ストックオプションが加わる。だからトータルでは平均4億8000万円になる。
2003年に13%の上昇、2004年に16%増、2005年に28%アップした。2000年から2007年にかけて、実に150%増となった。
トップに高額報酬が支払われると、企業の効率性が上がるというのは事実に反する。かえって、それが知れ渡ることにより、不満が社内に充満する。
報酬引き上げの背後には、自らも莫大な利益にあずかるコンサルタント企業の活躍がある。このような過大な報酬は、1980年代にはじまった。
イングランドでは400万人が低所得者用賃貸住宅に住んでおり、その多くを占める団地では貧しい年金生活者と子どもの割合が飛びぬけて高い。賃貸住宅に住む人の3分の2以上は、行政から何らかの援助を受けている。イギリスの人口の5分の1にあたる1300万人近くが、政府のいう貧困線を下回る世帯所得で暮らしている。子どもの貧困の第一原因は、親が結婚していないことではなく、親が受け取る給料が低いことにある。
(強調はシートン)
福岡弁護士会の読書 「中流社会を捨てた国」 より引用
http://www.fben.jp/bookcolumn/2009/12/post_2376.html
その一方で、高額所得層の強欲ゆえに金融機関が破綻すると気前よく政府は補填してやった。その補填のツケを財政に廻して緊縮財政にする。
社会的責任を果たすべきものが果たさず、再分配をケチる。そのツケを下に押し付け、不満は貧困層に向けさせる。それが、現在起きている事の構図。決してイギリスの固有の問題などじゃない。アメリカでも日本でも起きている事だろ?
あれ(暴動)は、バカなイギリスのクソ貧乏人の仕業、なんて突き放して考えないで、自分たちにも起こりうる事だ、と捉えた方が良い。彼らを見捨てて動物扱いして済まそうとするなよ。
でね、ついでにいっておくと、「サン」紙が
英国暴動、背景は不良グループ文化? 逮捕者の年齢層は10〜40代
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2819416/7623521
【8月11日 AFP】英国で拡大している暴動の背景には、何があるのか。11日発表された世論調査で、英政府の緊縮財政政策に原因があると考えている英国民はわずか8%に過ぎないことが明らかになった。
警官による男性射殺事件をきっかけにロンドン(London)で発生した暴動は各地に飛び火し、英国史上例を見ない大規模な暴動に発展している。原因の特定が急がれる中、英大衆紙サン(Sun)と世論調査会社YouGovが8〜9日に2534人を対象に実施した世論調査で、多くの国民は国内の不良グループ文化が一連の暴動の背景にあると見ていることが分かった。
デービッド・キャメロン(David Cameron)首相率いる保守・自民の連立政権は財政赤字削減のため、大規模な支出削減へと舵を切った。だが、この政策転換が暴動の直接的な原因だと考えている人は回答者の8%にとどまり、失業問題が主な原因との回答は5%だった。また、人種間の対立が背景にあるとの回答も5%程度にとどまった。
一方、42%が犯罪行為の蔓延、26%が不良グループの台頭を理由にあげた。
なんて云ってますけど、「サン」は、あの、ルパート・マードックのプロパガンダ紙だから。
マードック氏:「私がサンの政治ラインを決める」
http://ukmedia.exblog.jp/7530074/
ニューズ社の会長ルパート・マードック氏が、英上院の通信委員会から質問を受け、自社が所有する新聞の中で、大衆紙サンと日曜大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの政治ラインは自分が決めるが、高級紙タイムズとサンデー・タイムズに関しては、自分では決めない、と答えた。BBCサイトに出ていた。
英国電話盗聴事件の黒幕マードックはいかにしてブッシュとブレアを懐
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20110722
本日午後3時からのTBSラジオ「キラキラ」で、英国の電話盗聴事件で追及されているメディア王ルパート・マードックとは何者なのか、について解説します。
ポッドキャスト→http://podcast.tbsradio.jp/kirakira/files/20110722_machiyama_pate.mp3
欧米はもとより、アジア、東欧、ロシア、中東にも勢力を伸ばし、テレビ朝日をも買収しようとした世界のメディア王マードックの恐ろしい点は、メディアだけでなく、政治をも支配している点です。
実際に英国のブレア首相とブッシュ大統領は完全にマードックに頭が上がらなかったという事実があります。
キラキラで話したのは、マードックがいかにして、ブレア首相とブッシュ大統領を自分の掌中に収め、イラク戦争を煽動したか、という内容です。
で、そのルパート・マードックのアメリカにおけるプロパガンダ手段の一つがFOX。イラク戦争を誘導し、アメリカの茶会運動(tea party)を煽った、というか黒幕の一つ*7。ティーパーティの主張が、「貧困層に対する福祉はムダ」ってことくらいは承知しておいてもいいと思う。何のことはない、増田の主張はイングリッシュ・ティーパーティ(英風茶会)に過ぎない。
オバマ政策への反撃の鍵? FOX Newsが旗を振る現代版(ボストン)茶会運動[増補版]
http://mondoselect.seesaa.net/article/117544120.html
かつて英国に反旗を翻す切っ掛けとなったボストン茶会事件、その精神を復活して不当な支配に抵抗しようという抗議運動が茶会運動で、複数の政治家がこれを自己の政治運動スローガンとした。だがそれは今や、オバマ政策への反対の武器として共和党が利用し、FOX Newsがそれを煽る形に転化したようだ。「草の根運動」と言っているがさて。。。
いい加減、他人を「動物だ」と突き放せば、それは必ず自分に返ってくる、と知った方がいいよ。
では。
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