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アトリ (リシ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アトリサンスクリット: अत्रि Atri)は、古代インド神話リシのひとり。リグ・ヴェーダ巻5の賛歌はアトリの家系によって書かれた。アトリはサプタルシ(七聖仙)のひとりとされ、またアートレーヤゴートラの始祖とされる。

ヴェーダ

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『リグ・ヴェーダ』最古の部分である巻2から巻7までは各巻が家系ごとに分かれているが、巻5の賛歌は主にアトリとその氏族(アートレーヤ)によって書かれたとされる。ただしアトリ本人によるとされるものは14賛歌にすぎない[1]:659。その一方で賛歌の中にしばしばアトリが歌われる。5.40の賛歌ではアスラのスヴァルヴァーヌ (Svarbhānuによって世界が暗闇に包まれたとき、アトリが祭儀によって太陽を助けたと言っており[1]:704-705、すでに神話的人物になっている。

アトリの父称はバウマ(Bhauma)、すなわちブーミ(大地)の子とされている。

叙事詩とプラーナ

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ラーマーヤナ』にアトリはあまり登場しないが、巻2ではラーマシーターがアトリの庵を訪れ、アトリの妻アナスーヤー英語版の祝福を受けている[2]

マハーバーラタ』巻1によると、アトリはブラフマーの心から生まれた6人(巻12では7人)のリシのひとりとされる[3][4]

『マハーバーラタ』ではまた『リグ・ヴェーダ』にすでに記されているアトリが太陽を助けた話も敷衍されている。巻13によれば神々とアスラダーナヴァが戦っていたときにラーフが太陽と月に矢を射かけたために世界が闇で覆われ、神々は敗北しそうになった。アトリは自ら太陽と月に変身して闇を払いのけ、神々を助けてアスラたちを焼き殺した[5]

子孫

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『ヴィシュヌ・プラーナ』4.6によるとブラフマーの子がアトリであり、アトリの子が月神ソーマであった。ソーマはブリハスパティの妻のターラーを略奪し、彼女は水星神のブダを生んだ。ブダとイラーからプルーラヴァスが生まれ、彼は月種の祖となった[6]

アトリはまたアナスーヤーを妻としてダッタ(ダッタートレーヤ英語版)とドゥルヴァーサスを生んだ。『ブラーフマンダ・プラーナ』によると、アトリは10人の子を持ったが、その中でも長男でヴィシュヌの生まれかわりであるダッタートレーヤとドゥルヴァーサスの2人が特に名高かった[7]。『バーガヴァタ・プラーナ』3章ではヴィシュヌの6番目のアヴァターラとしてアナスーヤーの子をあげる[8]ハイハヤ族カールタヴィーリヤ・アルジュナはダッタートレーヤの祝福のために無敵になっていたが、後にパラシュラーマに殺された[9]。後にダッタートレーヤはブラフマーヴィシュヌシヴァの3神(トリムールティ)が1人に現れたものとされ、ヒンドゥー教で信仰される。いっぽうドゥルヴァーサスは祝福や呪いによってさまざまな話で言及され、カーリダーサシャクンタラー』でドゥフシャンタ王がシャクンタラーを忘れたのもドゥルヴァーサスの呪いが原因である。

脚注

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  1. ^ a b The Rigveda: The Earliest Religious Poetry of India. translated by Stephanie W. Jamison and Joel P. Brereton. Oxford University Press. (2017) [2014]. ISBN 9780190685003 
  2. ^ Ramayana of Valmiki: Book 2 - Ayodhya-kanda, Chapter 117 - Shri Rama comes to the Ashrama of the Sage Atri, https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/the-ramayana-of-valmiki/d/doc424094.html 
  3. ^ The Mahabharata: Book 1: Adi Parva, Section LXV, https://www.sacred-texts.com/hin/m01/m01066.htm 
  4. ^ The Mahabharata: Book 12: Santi Parva, Section CCVIII, https://www.sacred-texts.com/hin/m12/m12b035.htm 
  5. ^ The Mahabharata: Book 13: Anusasana Parva, Section CLVI, https://www.sacred-texts.com/hin/m13/m13b121.htm 
  6. ^ The Vishnu Purana, translated by Horace Hayman Wilson, (1840), pp. 392-394, https://www.sacred-texts.com/hin/vp/vp098.htm 
  7. ^ The Brahmanda Purana: Section 3 - Upodghāta-pāda, Chapter 8 - The race of the sages: Atri and Vasiṣṭha, https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/the-brahmanda-purana/d/doc362865.html 
  8. ^ Prose English Translation of Srimadbhagavatam. Calcutta. (1895). p. 8. https://archive.org/details/proseenglishtran12dutt/page/n19/mode/2up 
  9. ^ The Vishnu Purana, translated by Horace Hayman Wilson, (1840), p. 417, https://www.sacred-texts.com/hin/vp/vp104.htm 








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