朱葉の受験から卒業までをフルスロットルで駆け抜けた完結巻。オタクのオタクによるオタクのためのラブコメが、教師と生徒という関係性をスパイスに提供される、大変良いものでした。
この作品、キャラはかなりデフォルメされていますが、芯の部分にずっと生っぽさがあるというか、中身がある感じがします。だから、外側に色々な設定を被っていても、踏み込んだって感じる瞬間があるというか。それが特に多めの最終巻なので、ラブでコメだと思っているとおっとこれはというところがあって、そのバランスがとても良かったです。
朱葉と桐生はそんな生っぽさの上に、生徒と教師、神絵師と信者、オタク友達、そして恋愛関係の4つくらいのレイヤーが被さっています。それが時と場合によって互いに変わっていたり、重きを置くところが移ろっていったりで、一筋縄では行かない関係は相変わらず面白く、正しい正しくないかは別にして、二人にしか進めない道を片道切符で選んでいっている感じが良かったです。
そしてやっぱり本当にオタクというものをよく分かっている感じが凄いなと。BL好きの二人の話ですが、根っこはオタクの色々な好きを、推しから恋愛から含めて描いていった話なのかなと思います。それを良し悪しも含めて描いて、全肯定はしないけれど、どうしたって否定はできないっていう話。だからこそ、その好きが分からない都築が出てきて、そして恋のライバルではなく、ああいうところに落ち着いたんだろうとも思いますし。なので、広くオタクは読んでほしいなと思いました。あれやこれや、色々と身に覚えがあるものが出てくると思います。分かる、すごい分かる、分かるけどさあみたいなのもあるし、うぐってなるものもあると思う。
終盤でとても印象的だったのが、出てくる箇所は飛びますが、この流れ。
「あいつは好きなことで人生を楽しんで、好きなことに救われたから、そういう宗教なだけだ」
「先生の好きは、ちょっと暴力だと思う」
「それでも、俺は信じているから。なにかを好きになる気持ちが、人生を豊かにするって」
これは、そういう宗教に生きている、私たちのための物語なんだと思います。
あと、桐生は、先生だからというのがなくて出会ったとしても、きっと同じように朱葉に接していたと思うので、卒業しても、こう、色々先は長いぞっていう気が。