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「国会での証人喚問は『犯罪捜査のため』という暴論」(郷原信郎) - kojitakenの日記

kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「国会での証人喚問は『犯罪捜査のため』という暴論」(郷原信郎)

朝日新聞から産経新聞まであらゆるメディアが安倍昭恵の国会招致(実質的には証人喚問)を求めている、これはメディアスクラムだ、首相婦人に「権力の私物化」などとレッテル貼りをし、全マスコミが一糸乱れず「昭恵氏を国会招致せよ」と主張するのは「健全な民主主義」とは対極にあるおぞましい状況だ、という意見があるけれど、明らかにおかしいよね。まるっきり間違っている。ダメダメだ。

実際には全国紙と首都圏で買えるブロック紙である東京新聞を合わせた6紙(読売、朝日、毎日、日経、産経、東京)のうち安倍昭恵の証人喚問を明確に求めた新聞は東京新聞だけで(たとえばもっとも前向きな部類に属する朝日でも「証人喚問」の4文字は使っていない)、その東京新聞ですら社説の最後の最後にやっとこさ「証人喚問」の4文字が出てくる腰の引けぶりだ。もう引退した国会議員である山崎拓が明確に安倍昭恵の証人喚問が必要だとコメントしたこととは対照的に、程度の差はあれどのメディアも腰が引けていると私は思う。

そもそも安倍昭恵の証人喚問が求められる事態になったのは、野党でさえ求めていなかった籠池泰典の証人喚問を安倍晋三が強硬に言い出し、もちろん野党にとってそれは「渡りに舟」だったから実現したことによる。意見の食い違う一方の当事者である籠池泰典が説明責任を果たした以上、籠池と言っていることが違う安倍昭恵も籠池と同じ条件で国会での証言が必要だ、と考えるのは、それこそ「健全な民主主義」の思考そのものだろう。産経の「主張」(他紙の「社説」にあたる)を書いた論説委員にもその程度の常識が残っていたからこそ、

100万円の寄付は、籠池氏が冒頭発言で強調した点でもある。言い分が180度対立している以上、予算委員会として夫人に直接、事実関係を確認する作業も必要となろう。

と書いたのだ。当たり前ではないか。

もちろん、安倍晋三を批判する側にも注文したいことはある。たとえば安倍昭恵の携帯電話が水没したのは、昭恵と籠池諄子のメールのやり取りを見れば事実だとわかる。昭恵の携帯の水没*1を、小渕優子が証拠隠滅を図ったものとしか考えられないドリルによるハードディスク破壊と同一視するのは誤りだ。また、谷査恵子氏が海外に飛ばされたという風説に至っては全く裏が取れない。そのような報復人事を国会の証人喚問から間髪を入れず経産省が行うことはあり得ないことなど、冷静に考えれば誰にでもわかりそうなものだが、それさえできない安倍批判側の人たちにも困ったものだなあとは思う。

しかしより重症だと思うのは、安倍夫妻の独裁に馴れ切ってしまっておかしいことをおかしいとも思えなくなった、およそ国民の半分(=世論調査安倍内閣を支持すると答える人の割合)の人たちだろう。

以上は前振り。今朝選んだ一本は郷原信郎氏が昨日公開した下記記事。以下に引用する。

国会での証人喚問は「犯罪捜査のため」という暴論 | 郷原信郎が斬る

国会での証人喚問は「犯罪捜査のため」という暴論
投稿日: 2017年3月27日

3月23日に衆参両院の予算委員会で籠池氏の証人喚問が行われ、安倍昭恵夫人から100万円の寄付を受領した旨証言したことを受け、野党側は、安倍昭恵夫人の証人喚問を求めているが、与党側はそれを拒否し、安倍首相自らが、昭恵夫人の証人喚問が不要であることの理由として、

なぜ籠池さんが証人として呼ばれたのかと言えば、…(中略)…補助金等の不正な刑事罰に関わることをやっているかどうかであり、私や妻はそうではないわけであるから、それなのに証人喚問に出ろというのはおかしな話

と堂々と述べている。

国会での証人喚問は、憲法62条の「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と明文で認められている国会の「国政調査権」の手段の一つである。

その「調査権」にも限界があり、喚問した証人自身に対して「刑事事件」に関することを証言させることは、憲法38条1項の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」との規定で保障される「供述拒否権」を侵害する恐れがあるので、議院証言法4条で「証人又はその親族等が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときには証言等を拒むことができる」として、憲法上当然の権利が、証人喚問においても認められている。

籠池氏が証人喚問で、「刑事訴追のおそれがあるので答弁を控えます」と述べて証言を拒否したのも、この権利に基づくものだ。

国政調査権が与えられていることは、国会の機能にとって極めて重要なことだが、「証人の犯罪に関すること」には調査が及ばないのは、あまりにも当然のことであり、常識以前の問題である。したがって、籠池氏に補助金に関する犯罪の疑いがあるのであれば、それは証人喚問の「障害」にはなりえても、証人喚問の理由になるなどということはあり得ない。

犯罪に当たる可能性のあるものだけを証人喚問するということであれば、証人喚問は「犯罪捜査のためのもの」ということになり、「刑事訴追の恐れがある」との証言拒否で終わってしまう。

ところが、その国政調査権に関する当然の常識に反して、安倍首相が、「犯罪の疑いがなければ、証人喚問は行わない」と国会で公言し、それに呼応して、政府首脳や自民党幹部までが、同趣旨のことを言い出している。まさに憲法も法律も無視した暴論が平然とまかり通るというのは、一体どういうことなのであろうか。

籠池氏の証人喚問の4時間余り後に、昭恵夫人フェイスブックでコメントが出たことについて、形式・内容から見て、昭恵夫人自身が投稿したものではなく、首相官邸側の反論を、昭恵夫人フェイスブックを使って公表した可能性が高いこと、昭恵夫人の行動は「私人」としてのものだと説明しながら、官邸側の対応と昭恵夫人の対応とを「一体化」させるようなやり方は不適切で、かえって、昭恵夫人を今後一層窮地に追い込むことになりかねないことを、一昨日のブログ記事【昭恵夫人Facebookコメントも“危機対応の誤り”か】で指摘した。しかし、与党自民党サイドは、依然、フェイスブックでコメントを出していることも、昭恵夫人の証人喚問が不要であることの理由にしている。

今回の問題についての自民党や官邸側の危機対応の誤りについては、【籠池氏証人喚問は、自民党にとって「危険な賭け」】【籠池氏問題に見る”あまりに拙劣な危機対応”】などで指摘してきたが、安倍首相側、官邸、自民党の対応は、これまでの対応を反省するどころか、ますます開き直り、憲法に反すること、法律に反することを、平然と公言し、行っているというのが現状である。

私は、これまで、長期化している安倍政権と日本政府について、「権力の一極集中」に漠然とした危惧感を持ちながらも、国政を遂行する能力、様々な事態に対応する能力という面では、それ相応に高いものと考えていた。少なくとも、その前の民主党政権よりははるかにましだと思ってきた。

しかし、この森友学園問題という、外交・防衛等の国政の重要課題とはレベルの違う、些細な問題での対応に失敗し続け、最後には、法治国家ではあり得ないような対応を、組織を挙げて行っている安倍政権の現状を見ると、やっていることのレベルは、混乱が続いている近隣諸国と変わらない。

日本人であることが不安になってきたというのが偽らざる思いである。

(『郷原信郎が斬る』より)


間然するところのない正論だと思う。「犯罪の疑いがなければ、証人喚問は行わない」なんて初耳だったし、それを安倍晋三の口から聞いた時には、安倍は中曽根康弘が1976年に国会で証人喚問を受けたことを知らないのだろうかと驚いたが、もっと驚いたのは与党の議員たちが口を揃えて安倍晋三と同じことを言うのを聞いた時だ。なんて国になったんだ、この日本という国は、と、ほとほと呆れた。

私が意外だったのはむしろ郷原氏が安倍政権について「国政を遂行する能力、様々な事態に対応する能力という面では、それ相応に高いものと考えていた。少なくとも、その前の民主党政権よりははるかにましだと思ってきた」と書いたことだ。私はこの政権にそのような幻想を持ったことは一度もない。いつだったか安倍晋三が国会で「私は総理大臣なんですよ、だから正しいんです」などとわけのわからないことを喚いた映像をテレビのニュースで見た時猛烈に腹が立ったが、その後冷静になって考えたりその件に関する論考を読んだりして、「この政権には『法の支配』はなく、政権の統治原理は『人治主義』なんだな」と思った*2。ただ、御輿を担ぐ側が民主党政権時代と比較すると格段に頭が良い(というより狡猾だ)とは思う。しかしいくら担ぐ側の頭が切れても、担がれる御輿がここまで「軽くてパー」であってはどうしようもない。安倍晋三も自らの独裁権力がどんどん強まっていって、あまりにも何事も自分の思い通りになるので、ついつい暴走の度が過ぎるようになったのだろうか。森友学園事件に関する国会での質疑で、聞かれてもいないことに関してキレたりして自ら問題を拡大した上、籠池泰典の証人喚問を自分から言い出した。安倍昭恵の証人喚問の必要性など、安倍晋三籠池泰典の証人喚問を言い出さなければ少なくとも昭恵の喚問の必要性が「誰もが認める公論」(某氏のいうところの「メディアスクラム」)になることはなかった。

担がれる御輿の上で「軽くてパー」な独裁者がわけのわからない暴走をしたことの必然的帰結が、「安倍昭恵の証人喚問が必要」になった現在の状況なのだ。つまり安倍昭恵を窮地に追い込んだ最大の責任者は安倍晋三である。

フィナンシャルタイムズが "Abexit" なる造語で森友学園事件を論評したらしいが、普通ならこんな政権はもう持たない。しかし長年の安倍晋三の独裁政治の毒が日本国民の多くに回ってしまっているらしく、ここまでネガティブな材料が出続けても内閣支持率はいっこうに下がらない。

この「崩壊の時代」は行き着くところまで行くしかないかもしれないな、と思う今日この頃なのだ。

*1:むしろ不思議なのは、籠池諄子の携帯メールにも昭恵とのやりとりのログが残っているのではないかと思われるのに、それがいっこうに出てこないことだ。考えられる理由として、メールボックスの容量がいっぱいになって残っていないことや、メールの内容が籠池夫妻にとっても都合の悪いことなどが考えられるが、もし出し惜しみしているのであれば早く出した方が良い。世論調査の結果から明らかなように、世論の食いつきが予想以上に悪いので、このままでは事件の幕引きを許しかねない状況になっているからだ。

*2:なお、同じ思考様式は安倍政権や自民党を批判する勢力にも濃厚にある。その典型的な例が「小沢信者」たちであって、彼らの思考・行動原理の基本は「小沢一郎ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」である。「忖度」という言葉から私が直ちに連想するのは、小沢一郎の側近や「小沢信者」のことだ。









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