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下記、私の場合です。
廃墟となってしまったロンドンにて、漆黒の夜空の下、燃え残る火災の焔にうっすらと照らしだされ赤く光る火星人の屍肉を野犬が喰い漁さる(H.G.ウェルズ、宇宙戦争)
私は、上記光景に、著者の「大いなる虚無感」のようなものを感じます。そしてまた、「これまでのいかなる兵器においてもこのような(絶対的な)破壊があっただろうか」という記述に、原子爆弾を知らなかった時代の人間のイノセンスさ、ある意味でいうところの無邪気さ、を感じ、現実における破壊がかつての小説家の想像力の範疇を超えてしまったことに愕然とします。
カメレオンの呪文 (ハヤカワ文庫 FT 31 魔法の国ザンス 1)
誠実で、公平で、勇気のある主人公が、二十五歳という若さで人生のどん底に陥っており、宛てもなく歩いているとき、黎明(れいめい)の光が差しはじめていることに気付き、じんとするシーンです。
私は黎明という漢字が読めず、辞書を引いてみましたら、とても美しい言葉だったので、更に感動いたしました。
ちなみに主人公は、最後には幸せになりますので、ご心配なく。(^-^)
bk1には、ISBNコードそのものの記載がないので、URLで失礼。
A.C.クラークの『都市と星』のラストシーン。
アルヴィンが、発見された古代の宇宙船を駆って、月・地球・太陽が会合する様子を見られる宇宙空間に飛んで、友人にそのシーンを見せる部分。
これをきわめて荘厳に映像化したものが、キューブリックの「2001年宇宙の旅」ですが、1956年という発表年に、すでにこうしたイメージを自分のものにしていたクラークはさすがです。
科学に基づいた予測はいずれ実際に証明されると感じました。
ありがとうございます。
ちょっと眠いせいか、意味が分かるまで10分ぐらい考え込んでしまいましたが、!ですね。1956年ってアポロ計画が計画される以前ですしね。
「失われた?」にも、アポロとの興味深いエピソードがありましたね。クラークは、「2067年」のあるシーンでの海底二万哩を彷彿とさせる描写がすごく気にいってます。(3001年は、怖くて未読です)
都市と星も未読ですが、面白そうです。
shampoohatさん、いい質問ですね!!
いろいろあるのですが、オラフ・ステープルドンの『スターメイカー』のラストシーン。
幻視から覚めた主人公が「わたしたちの惑星の石粒の」ヒースの丘に腰を下ろして、地平線の彼方のロンドンおよびヨーロッパの国々に思いを馳せるところ。
「迫りくる嵐に、すべての愛すべき存在(もの)たちが破壊されるに違いないと思われた。すべての私的な幸福、芸術と科学と哲学のあらゆる愛すべき創造的作品、すべての知的探求に思弁的想像力、そしてすべての創造的な社会建設、ようするに人間生活の営為のことごとくが、全社会的な災禍を前にしては愚行であり徒労であり、自己陶酔でしかないように思われたのだ。しかし、こうした営為の維持に失敗してしまったら、復興の見込みはあるのだろうか」。
1935年、ナチスの台頭に「理性を憎む、執念深い種族的な情熱をその目的のために煽り立てる個人的支配への狡猾な意志のあらわれ」を感じ取っていた作者の不安が吐露されていると思います。
歴史はくりかえし、今また闘争のただなかに巻き込まれつつある我々人類は、危機を乗り越えて、人類史の次のサイクルへ旅立つことができるのでしょうか。
『スターメイカー』ほど詩的な描写には乏しいけれど、もちろん『最後にして最初の人類』の圧倒的な想像力にも感銘します。
こちらこそ、いつも質問読ませて頂きお世話になっています。
早速の回答ありがとうございます!
両方ともですけど、スケール大きいですねー。そして、ディテールも相当に面白そうです。何で自分両方とも知らなかったんだ、と自分のモグリっぷりに恥じ入っております。
推測で書く形になりますが、これは、現実の歴史とのオーバーラップの感覚が醍醐味っぽさそうですね。良書までご紹介頂きありがとうございます。
「太陽系最後の日」:アーサー・C・クラークの超有名な短編の、最後のシーンです。太陽が爆発して滅ぶ状況で、異星人が助けるべき生命体がいるか探すという内容ですが、廃墟に設置されたレーダーの向けられた方角に、非常に低速であるが編隊を組んだ人類の宇宙船が発見されたシーンが印象に残っています。あれでクラークにはまりました。自分たちに可能な限り努力をして運命に逆らおうとするという行為が好きです。
「タイムシップ」:タイムマシンの遺族公認続編。5000万年前に人間達を置いて19世紀に戻ってきた主人公が見た「星のない夜空」が印象的でした。未来に行ったとき太陽を包むダイソンスフィアに驚いていた主人公が、5000万年という長さは、夜空にあるすべての星にダイソンスフィアを作ることができるほど長いと愕然とするシーンが印象的です。単純計算で確かにそうなるとわかるのが非常にSF的だと思いました。
クラークの短編っていいですねー。
可能な限りの努力というのも、基本型は、油壷に落ちた二匹の蛙の偶話なんですよね。あと瀬名秀明がアンソロジーを編纂しているのは知りませんでした。こちらも面白そうですね。
タイムシップ、やっぱり違和感が強かったですが、別物と考えれば楽しめますね。近年のSFで見られる超巨大構築物ですが、構築方法として長大な時間の流れに任せる、という描写、確かになかなか印象的です。
回答ありがとうございます。
本当は、『スラン』を挙げたかったのですが、品切れだし、私の持っているハヤカワ文庫版にはISBNが無いので、上を挙げておきます。
ご存じの通り、共感能力を持ったスラン(新人類)が迫害されている世界が舞台。迫害を指導している独裁者に迫るシーンで、他人の苦痛を共感できない(想像力の欠如した)人間の内面を覗き込んだ主人公の驚愕と絶望に驚きました。今になれば、共感できるのが当たり前と思っていた中学の自分にも驚きますが。
回答ありがとうございます。
当該作品は未読なのですが、「他人の内面を覗き込んで愕然」は、テレパスものの醍醐味ですね。
bk1で表示できなかった場合、urlでも全然Okです。
# あと、ちょっと関係ないですが、人力検索で全角のマイナス記号が化ける見たいですね。2番目の回答コメントで「失われた宇宙の旅:2001」を略してハイフンがわりに全角マイナスを使ったんですが……。£(ポンド)、〜(波線)もきになります。
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/shortshort/oubo.php
AMW鐔�URL紊���眼�勉����ャ�����
タイム・リープ―あしたはきのう (上) (電撃文庫 (0146))
タイム・リープ―あしたはきのう (下) (電撃文庫 (0147))
SFに入るのか微妙ですが、電撃文庫の『タイムリープ』には美しさを感じました。
従来のタイムトラベル物とは一線を画して、ヒロインである鹿島翔香の体感時間が時系列から外れて、普通に流れる周囲の時間を翔香は過去や未来に行き来しながらバラバラに体験するタイムリープ現象。一人称で語られる翔香の混乱と、その原因を中心に体感時間と現実時間がパズルのように組み合わさっていく様子は読んでいて美しさすら覚えました。
回答ありがとうございます。
概要を聞く限りでは立派にSFですよね。
電撃文庫って書店で見たことないですが、もし当該の本を見たら買います。
感覚と光景って印象に残るとしたら近いものがあるかもしれないですね。
さて、回答者の皆さま、印象に残った光景ということで、よろしくお願いします。まだまだお待ちしています。
「光の塔」で、地球を攻撃する未知の敵が、捕虜になった主人公に攻撃の目的を語ったシーンと
その続編である「我が月は緑」のラストシーンがペアで感慨深いです。
ネタバレ回避をしようとするとあまり詳しくは書けないのですが、「光の塔」の該当シーンでは、その敵の言葉に、度重なる核戦争の為に地上が荒廃し、住居を地下に求めるしか無くなった未来の人類の姿を読者は否応なく想像させられます。
核の炎を浴びて墨色の廃墟となった地表、放射能の為に人類自体が蠢く土蜘蛛のような身体に変形した世界。
対して、「我が月は緑」のシーンでは、地球から月を見上げる主人公が、小説のタイトルそのままに「わが月は緑、花も咲け、雨も降れ」と歌います。
人類の手の入っていない過酷な宇宙そのものである月面を旅し、様々な冒険をかいくぐってきた主人公が地球に帰り、自分の故郷から宙に月を振り仰いで、いつかは月の地表が緑の草で覆われることを歌う言葉には、地球の青空に緑色の月が浮かぶ情景が呼び起こされてきます。
それは現実離れした夢ではなく、月面での冒険を経てきた主人公はそれを実現する「一天体の生物大気の造成」研究がもうすぐ完成することを確信しているとても力強い夢です。同時に、今の科学では不可能とされているもう一つ別のSF的な夢も実現が近いことも同じシーンに込められているのですが、それはネタバレ回避しておきます。
が、そこで読者は前編の「光の塔」で語られた廃墟のシーンとは違う方向に「我が月は緑」が進んだのかも知れない、と希望を持ち得ます。
前編の荒廃の地球が、続編の緑の月によって静かに侵食されているような感覚があるのです。
それまで私が読んできた未来を物語るSF小説では、ハイテクノロジーに支えられたメタリックなビル群の都市や、核兵器に限らず莫大な火力で灰燼しか残らない地表のようなイメージが強かったのですが、植物が豊かに萌え出る自然のシーンを未来の象徴として描くこのラストシーンに、ほんとうに人類を幸福にするテクノロジーのことを考えさせられました。
素晴らしい回答ありがとうございます。
藤子不二雄が短編で、廃墟になった新宿が植物に覆われた光景を描いてたのを、思い出しました。
今日泊 亜蘭、名前しか知らなかった人物ですが、俄然、興味が湧いてきました。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand/1068/b/mybestsf.html
マイベストSF (そいとごえす)
フレドリック・ブラウンの短編「緑の地球」”Something Green”。
本来は「わが手の宇宙」(早川文庫)に収録されていたのですが、これは絶版で、「宇宙の孤独」というポプラ社のアンソロジーに再録されているようですが、全訳で収載されているかどうかは、実際に見ていないので、ちょっと不安です。
任務中に巨大惑星に不時着した宇宙飛行士の物語で、その世界は中心恒星のスペクトルの関係で、すべてがオレンジ色です。植物も動物も、海も空も。
ただ、主人公が持っている太陽光線のエネルギーを吸収して使える光線銃を発射したときに、オレンジ色の補色の緑色が一時的に見えます。
そうした世界に一人、救助を待ちながら放浪する主人公は、「緑の地球」に強烈なあこがれを感じています。
ある日、ついに宇宙パトロールの青年に発見されて、「緑の地球」に帰ることになった彼ですが・・・・。
ラストのどんでんがえしは人間の精神の深淵をかいま見させます。
オレンジ一色の世界、そこの中で光線銃を撃つたびに見えるつかの間の緑、主人公の「地球の緑」への憧憬ーそのイメージにとらわれてしまうと、ラストの主人公の選択に納得させられてしまうのは、稀代のストーリーテラーであるブラウンのテクニックの故でしょう。
回答ありがとうございます。
色彩的な飢餓感の描写がすごそうですね。フレドリック・ブラウンの多才さを感じます。
入手しやすい版まで調べて頂いてありがとうございます。
いろいろありそうなのですが悲しいかな思い出せない。その中で記憶に残っているのはこの「武装島田倉庫」の中の最後の話、「開帆島田倉庫」の中で、「北」政府の破壊兵器〜ものすごい重油?廃油?の雨を降らせて地上を軒並み油の洪水にする〜の「脂雲」がぐんぐん広がってくる中を主人公たちがあわてて帰るシーンです。椎名さんはアウトドアな人なので、夕立や急にくる嵐などの黒い雲をイメージされたのかもしれませんがその不気味な綺麗さが妙に心に残りました。
回答ありがとうございます。
旧陸軍の「フ1号」をなぜか連想しました。風船爆弾。珍妙な兵器、なにか哀しいものがありますね。重苦しい脂雲が空にうす黒く拡がって、地上の人間はそそくさと。
印象的なシーンですね。
短編集収録の、「万華鏡」という作品です。
宇宙船の事故によって、乗組員達がそれぞれ広い宇宙を四方八方へ死に向かって飛ばされながら、最後に交信しあいます。
その、宇宙空間をどこまでもどこまでもひとりで落ちてゆく、という圧倒的な絶望、孤独感が印象的で、なんだか「怖いけれど美しい」と思いました。
それにしても、絶版って悲しい。
回答ありがとうございます。
状況であり、光景である場面ですね。交信してどうにかなるわけでもないというのに。乗務員達がしずかに宇宙空間へ散らばって行く。確かにこれは、圧倒的なものがあります。
余談ですが、絶版問題は難しいですね。文庫は印刷の量産で安くなっている側面もあり、しかし、量産では少数読者の需要に答えられない。在庫問題があるので、余剰生産も難しい。プリントアウトで個別生産すると一気にコストがはねあがる。この問題、うまく解決できる技術、どなたか作りませんかね。
あと「重複回答ですね」とコメントを入れてしまっている部分ですが、こちら側の表示かシステムのいずれかに問題があり、全く同じ回答が重複して回答されたかのように表示され、このようなコメントを入れてしまいました。質問様、大変失礼しました。
(自分が書いたコメントまで消えていてへこみます…_| ̄|○)
アイザック・アシモフの「夜来たる」です。
遅くに読んだこともあり、何となく話の筋だけは聞いていたのですが、その圧倒的な描写の前には、読む前に浮かんでいた数々の疑問や突っ込みは吹き飛びました。数々のアンソロジーへの収録もむべなるかな。これぞSFという描写の美しさ、壮大さ、荘厳さがあります。ネタバレが怖くてあまり詳細は書けません。察してください。質問者は察せると思いますが...。
もう1冊はウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」。20年も前の作品ですが、冒頭、千葉の描写を見るだけでで、そこにある、後にサイバーパンクと呼ばれる新しいスタイルの胎動を明確に感じられると思います。訳者黒丸尚の演出もあるため、引用はしませんが、是非自分でページを開いてみてください。
脱線しますが語りの美しさでは「2001年宇宙の旅」、そして「2010年宇宙の旅」それぞれの最終章が好きです。一見抑えた文体で淡々とつづられますが、そこには希望やワクワク感が満ち溢れていて、クラークらしいポジティブな未来を見ます。
そろそろ締め頃かと思っていたんですが、回答ありがとうございます!
ニューロマンサー、公衆電話が並ぶ前を歩くキイスに呼び掛けるような、意味ありげに電話のベルが一度ずつ順番になって、そして切れる場面が大好きです。
2010年では、「最後の方のモノリスの場面」が圧倒的でした。
ネタバレ問題、確かに難しいですね(笑)。小説中で最も印象に残る、圧倒的に美しい光景は、大抵ラストに用意されていますね。
クリストファー・プリーストの「逆転世界」を紹介します。全長1500フィート、7層からなる移動都市<地球市>。このビジュアルイメージだけでもおなかいっぱいになりそうなんですが、それ以上に舞台となる回転双曲線様の世界が凄すぎます。都市から離れるにしたがって水平方向に遠心力がかかり、赤方偏移やローレンツ短縮が起こって、光景はシュールレアリスム絵画のように歪んでいく……。読んでるだけで目が回るというか、酔いそうになる光景です。
第3部ではこの無茶苦茶な世界がさらに反転されることになるのですが、ちょっと強引な感じがするのが玉に傷かも知れません。とはいえ「光景の異様さ」そのものがこの作品のテーマであったことに気付かされるラストの感動は、SF以外では味わえないものではないでしょうか。
回答ありがとうございます。
一見、江戸川乱歩、鏡地獄を連想しましたが、しかし、個人的狂気が作り上げた光景ではなく、構造体として存在する光景ですね。
さて、これにて閉じます。非常にたくさんの良回答をいただき、質問者は感激しています。回答を寄せてくださった皆さま、大変有難うございました!
Fetched URL: https://q.hatena.ne.jp/1109442884#a266627
Alternative Proxies:
回答ありがとうございます。
作中にて、夜明けに気付くシーンは美しいものが多いですね。
ところで、今回は、SF=サイエンス・フィクションでお願いします。回答中にもSF的な視点があると最高です!
あと、私はファンタジー小説は読まないのですが、ネタばらし系の最後の一文は未読の方に配慮して避けていただいた方がよろしいかと。